【詩】朗読者の詩

つまらない、僕の言うことがつまらないとか、そんなことを言うのなら、きみは、ずっと映画館にでも居座っていればいいんだ。きみは、きみが思っている以上に物語を求めている。冬の空気が、ほんの少し濁って、温くなる、僕の言葉が、それくらいの役割しか持っていないこと、特に意味も持たず、ただ空気中の粒子そのものみたいに、ちりぢりに分散してゆくだけのものであること、そしてそれはきみも大して変わらないこと。
原風景に深く思いを馳せているようで、気づかないうちに、どこかで見たことのある三文映画を、不鮮明に、頭のなかで再生している。
「きみもつまらないよ」
それでも僕の言葉を、きみの言葉を、意味のあるものにすること。他人に「つまらない」と言いながら、それすらも意味付けるように、そうしてどこかの誰かの耳朶を震わすように、きっと僕たち、ずっと叫び続けていたいのだ。

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