【詩】祈跡
ぼくは出来るだけ誠実でいたかったから、きみが今まで辿ってきた道を知りたいと思った。きみが何を考えて、きみが何に苦しんでいるのか、きみが今何を思って、ぼくのことを見ているのか、そのすべてを余すことなく知りたいと思って、けれどもそれらすべてはアスファルトで舗装された道路みたいなものに過ぎないのだときみが言った。きみが見せてくるこれまでの軌跡を綺麗だとぼくが思っても、きみもそう思ってからぼくにそれを伝えるから、きみはそれがどうしようもなく嫌なのだと言って、本当なんて無いのに、ずっとそんなものを探し回って、当たり前のようにそれは見つからないから、きみはただ祈りを捧げる、ぼくも祈りを捧げている、一生ぼくたちはお互いを知ることなんてできないけれど、祈っているあいだだけぼくたちは人間でいられて、神様を神様として見ることができて、泥濘んだ道だろうが綺麗なアスファルトの道だろうが本当はどうでもいいから、ぼくは、今日から軌跡を祈跡と呼ぶことにした。道が消えても、ぼくたち、きっと祈り続けているから。