【詩】砂嵐
苦しんでいるぼくだけをぼくは好きだったなんて、そんなことは言いたくないけれど、苦しんでいるとき、世界中の苦しみがぼくの心臓に一斉に集約していくような気がするから、どこが痛いのかも分からないくらい痛くて仕方なくても、ただ呼吸することすら苦しくて仕方なくても、ぼくはぼくの人生を確かに生きているんだってそう思えて、一生このまま痛覚が死ななければいいと思った、なんて砂埃はそんなこと知らないから、不意に砂塵は巻き起こって、ぼくの苦しみは知らないうちに消えていくのですね。苦しかったことすらいつしか忘れてしまうなんてそんなの怖いに決まっている、苦しかったことを忘れたときに浮かべる笑顔はきっと僕のじゃないみたいだ、そんなことを考えているうちにぼくは、ぼくの周りは、未来になるから、ぼくはぼくの脳味噌を愛せない、だって、そんなのは生きているあいだずっと麻酔を打ち続けているみたいで、ねえ、永遠の愛が美しいなら、永遠の苦痛だって同じように美しいはずでしょう?
世界一の不幸者なんだと思っているあいだぼくは生きていられて、忘れたくない思い出は苦しいものばかりで、だからもっとぼくはぼくを傷つけたくて、誰も見ていないのにひとりで叫び続けていた、いたけれど、あ、砂嵐と思った瞬間ぼくの叫び声は誰にも届かず消えていった。ああ、ずっとぼくの苦しみは、飛び散る砂の粒子みたいなものだったのだと、そう気づかないうちにぼくは死んでいたかった。