【詩】ペットボトルの中では死ねない
ひとりでは生きていけないと誰かが言ったとき、生きるためには誰かと手を繋いでいなければいけないんだと思った。ペットボトルの中でひとり、ぼくは沈んでゆきたかった、放置されたティーバッグの茶渋みたいな夢を見ながら。でもぼくは確かにひとりじゃなくて、どうしようもなく広く見える世界のぜんぶが本当は壁だったらよかったのにと思いながら、きみの手を握る、きみの手を握ると、きみもぼくの手を強く握り返してきて、それでぼくの骨が折れて、粉々になって、砂みたいになる。骨が砕けても手を繋ぎ合って、誰かと一緒にいなければいけないから、きみの言葉も仕草もなにもかもが暴力で、ぼくの言葉も仕草もすべてが暴力だった、ひとりで生きてゆきたいから、ぼくはきみのことを傷つけたくて、正論を吐く、正論を吐くのは銃を発砲するみたいで、血が出るから、やっぱり世界はどこまでも広いんだと思った、狭い世界で死んでゆきたい、でもその願いは誰にも許されないから、きっとぼくたち死ぬときまでずっと一緒だ、なんて思わないといけないからぼくはペットボトルの中では死ねない。