【詩】涙
あなたは涙しか愛せないのだと言った。どんな人でも涙は等しく透き通っているから。どんなに心が綺麗な人でも、逆に、どんなに心がくすんでいる人でも、涙だけは変わらず無色透明だから。きらきら光っているから。けれどもそんなあなたは目薬に殺されて、あなただけを見ていたわたしは、そのとき初めて乾き切った瞳から涙を流したのです。
あなたが「人間なんて蛋白質の塊だから。」と言ったとき、そんな弱さをわたしが愛せたらよかったのにね。そんなことを言っていないと立っていられないあなたの弱さも同じように愛せたらよかったのにね。でも今更そんなこと言ったってしょうがないね。いや、わたしは確かにあなたのことが好きだったよ。それだけは心から嘘じゃないって言える。けれども所詮、わたしの好きはただの偶像崇拝に過ぎなかったから。あなたは涙だけを愛していたけれど、涙はあなたを救ってくれなかった。代わりに価値のない涙が、ありもしないあなたを愛していたわたしの瞳から溢れ出した。
今でも思い出すよ、あなたのことを。そうやって思い出して涙ぐんだときの景色は綺麗です。すべてのものがぼやけて見えて、無色透明に浮かされて、ただの街灯でさえも綺麗に見えるの。きっと涙に包まれた景色がこの世で一番綺麗なんだね。だからわたしは泣き続けるしかないんだ。わたしが死ぬまで。わたしがあなたのことを思い出せなくなるまで。