【詩】きみが好き

きみが好き
本当のことは何一つ言わずに、数多の言葉を尽くして自分の周囲を塗り固めるように嘘を吐くきみは、どこか遠くにあるかもしれない一片の星のよう。きみが口にする誰かに対する罵倒も、きみが口にするどんな愛の言葉も、ぜんぶがぜんぶ嘘だとわたしには分かっているから、わたしは心の底からきみに好きだと言うことができるし、だからこそわたしはきみのことしか愛せない。
嘘だけが、何も信じないことを肯定してくれるんだ、わたしが言うと、きみがよく分からないとまた嘘を吐く。そのときにまた、わたしにはきみしかいないのだと思った。
自分も他人も信じたくない、わたしたちがただ何かを信じ続けるために生まれてきたのなら、それは生まれつき誰かに与えられた呪いだ、信じ続けたまま死んでいくことから解放してくれるきみの嘘だけが、夜空のどこかに煌めていてほしい。
きみが好き
何かを信じる必要もなく、それだけははっきりと言える。何も信じることなく、わたしはただただきみのことを眺めている。


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