【詩】ユートピア
「この世界に比べたらどこだってユートピアだよ」
そんな風に言うきみが、誰にも裏切られなければいいなとぼくは思っていて、ぼくも、きみと同じように、死んだ後の世界くらいは幻想的であってほしいと思っている。まあただ、別に、きみのことが好きなわけではないけれど。きみ含めみんなみんな、ぼくは好きではないけれど。
だから、誰のことも認めなくてよくて、それぞれが許される世界が、ぼくにとってはどこまでも理想郷で、毎日そんな世界を夢見て、いつかそんな世界に行きたいと思い描いていた、思い描いていたのだけれども、ぼくはその世界がどうしようもなく分裂しているのだと知っている、独立しているのだと知っている、つまりはどこまでも世界は細切れで、だからぼくは、ユートピアはみじん切りみたいなものなんだと思って、包丁を握った、ぼくはきみたちのことを切り刻まなければならないから。
きみの言うことは正しかったよ。誰かを切り刻むために包丁を握らなければいけない世界なんてきっと、どこまでも理想郷から遠い場所にある、そう確信しながら包丁を振り下ろすことでしか、ぼくは幸せになんてなれないから、ぼくの目の前、血で染まるばかりだ。