問題設定の技術~問題が正しければ答えもまた正しい~
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年を指して「2025年問題」と呼ばれています。
まもなくその2025年を迎えます。
今回の本題は「2025年問題」ではなく、「問題」について。問題とはそもそも何なのかを深堀して考えます。
介護現場のマネジャーの目の前には常に問題が存在し、僕たちは日々その解決に向けて頭を悩ませています。
なかには対策を講じているのにうまくいかない「問題」があります。解決しない原因に、「問題の設定を誤っている」というケースがあります。
言われてみれば当たり前なのですが、問題を間違えたら、そこから導き出される答えもまた誤りです。
問題解決の成否の50%は問題設定の質によって決まると言われるぐらい、問題設定は重要です。
この記事を参考に問題設定のスキルを身につけてください。
問題とは「理想と現実のギャップ」
いきなり結論です。今日覚えてほしいのはこれだけです。
問題=理想(目的・目標・あるべき姿)と現実のギャップ
車のナビを想像してください。
ナビは運転手に目的地までの経路を教えてくれます。
つまり運転手の問題を解決してくれる道具です。
ただし、ナビが運転手の問題を解決するためには、運転手自身が「目的地」を入力しなければなりません。
また、GPSによって車の「現在地」を特定しなければなりません。
ナビは「目的地」と「現在地」が指定されてはじめて、最適な経路を検索することができます。
「そんなの当たり前じゃないか」と思いますよね。ただ現実では目的地と現在地を明らかにしないままに、解決策を考えていることが少なくありません。
例を見ていきましょう。
理想と現実を設定する
分かりやすく「ダイエット」を例に考えてみましょう。
夏までに痩せたい。
この場合の問題は何でしょうか。
「夏までに痩せている」が理想で、現在のスタイルが「現実」です。
ところで理想の状態は「夏までに痩せている」とは、体重を65㎏にすることでしょうか。それとも腹筋が割れている状態になっていることでしょうか。
理想像の設定によって、食事制限なのか、筋力トレーニングなのか、解決策は大きく変わります。
理想と現実を数値化すると問題は明確になります。
6月末までに体重を65㎏にする。
現在(1月)の体重は71㎏。
したがって、この場合の問題は「6か月後の理想に対し現在は6kg重い」です。
問題だと思っているけど、問題になっていない問題
ややこしいタイトルです。
体重のように理想と現実を数値化しやすいものは、そう難しくはありません。
では「2025年問題」の”問題”は何なのか、一緒に考えてみましょう。
2025年問題
現実:団塊の世代(昭和22~24年生まれ)の約800万人が75歳以上の後期高齢者になる
理想:???
現実は明確ですが、理想が良くわかりません。
「2025年問題」と騒がれていますが、解決すべき問題(理想と現実のギャップ)が何なのかが明確になっていません。
理想がなければ、問題は存在しえません。
ここからは思考のトレーニングです。
年齢別人口に関しては「事実(現実)」を変えることはできません。
「理想」は様々な捉え方ができそうです。
理想の例
①後期高齢者が増加しても、医療介護の担い手が充足している
②後期高齢者になっても健康を維持する人が増えるので、医療や介護を必要とする人がそれほど増えない
③現役世代の負担が増えない医療介護制度がある
④高齢者が増え、働く世代の人口が減っても、国の経済力、国際競争力が維持されている
現実は同じでも理想が変われば、問題は変化します。
問題の例
①医療介護の担い手不足
②高齢者の増加に伴って、医療や介護を必要とする人が増える
③現役世代の医療保険料や介護保険料の負担が増える。
④働く人が減り国民総生産が減ることで、国の経済が弱くなり、国際競争力が低下する。
「2025年問題」と一言で表していますが、実は多くの問題が含まれています。
複数の問題を一括りにしたままでは有効な解決策を導きだすことは困難です。そのような場合は、問題(理想と現実)を一つずつ分解してから解決策を考え、最後にそれぞれの問題の相関を考えます。
とにかく理想と現実を明らかにする
介護事業所のマネジャーの多くが問題として挙げる「人材不足」。
この問題も、理想と現実を明確にすることから始めます。
その際、単純に人数の比較をするだけではなく、理想と現実のそれぞれの状態を描きます。
理想を考える問いの例
「介護職員があと何人いたら理想の状態なのか」
「もし理想の人員数が揃ったらどうなるのか。何ができるのか」
現実を考える問いの例
「人員が不足していることで、いま何が起きているのか」
「近い将来、人員が不足することで、これから何が起きるか」
「問題=理想と現実のギャップ」の公式は、すべての問題に当てはめることができます。
問題解決のフレーム(型)として覚えておけば、問題設定のスピードと精度が各段にあがり、問題解決能力も向上します。
ぜひ覚えて、繰り返し使って身につけてください。
目の前の現実が少しでも理想に近づいていきますように。
めでたしめでたし
立崎直樹