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記事一覧
八首抄 令和6年5月号
橋本俊明選
雪解けの進む光の畦渡る乾ける土の足に和らぐ田口耕生
介護中ありがとう言う夫なれば私の中にそよ風が吹く山口みさ子
八十九の老女を手本と医師言へりそれはわたしか笑ふほかなし渡辺茂子
まるまりて行き場なくしし鳥のごとただ黙しいる如月の今日北岡礼子
願えども世界平和は手にできぬ水に映れる月の如くに高橋美香子
なさけ深ききみが面影抱きつつ博多男子は東へ下れり石谷流花
冬期なる土手の
八首抄 令和6年6月号
渡辺茂子選
何処へと散りゆくならむ宵の駅ひかりの中より人ながれ出づ山北悦子
日々と言ふこの薄紙の如きもの吹きちらされて又白くなる臼井良夫
独り居の早めに雨戸閉める日はつながる何かを拒むに似たり吉田和代
ヒヤシンス二株庭にむくむくと全てが動く春の兆しに伊関正太郎
約束の侮りがたし祈るごと君は綺麗に座りたりけり財前順士
畦道を歩けば吾を待ち伏せるヌスビトハギが手足を伸ばす上中幾代
風吹き
八首抄 令和6年1月号
高貝次郎選
淡淡と咲いてくれたね藤袴アサギマダラは来なくてもいい高田 香澄夕星が次第に離れゆくごとく遠くなりゆくいとこはとこら臼井 良夫西の方群青色に浮き立ちて秩父連山しづしづと秋佐田 公子入道雲・うろこ雲またひつじ雲空一面の空の欲ばり井手 彩朕子ひぐらしの涼しき声を聞きながら心の秘密かみしめている北岡 礼子放棄地に囲まれ揺るる蕎麦の花耕す人のいるは喜び髙橋 律子なんという巨大な魚のウロコ雲わたし
八首抄 令和5年12月号
宮本 照男 選
ただ独り昼の電車に揺れながら知らないひとの傍へに座る
臼井 良夫
ながながと止まらぬ愚痴の電話切るさよなら私は聖母ではない
高田 香澄
新しいシャツのタグを切り落とし淋しき朝の始まりとする
森崎 理加
秋風が夏の火傷にそっと触れ、宥めるように木の葉をゆらした
鎌田 国寿
ATMの暗証番号忘れたりのっぴきならざる峠越えなん
田口 耕生
我が事を祈った最後はいつの日か母にな