八首抄 令和5年9月号
井手 彩朕子 選
歌一首なりたる朝の道々にドーナッ二つ買ってゆこう
山口 美加代
水の面は人の声にも揺れている秘密を抱える少女のように
高田 好
薄ごろもまとへる人の多くなり老の施設も夏は華やぐ
広瀬 美智子
わが胸の欠けたるピース無きままに花もて埋めん梅雨に咲く花
三上 眞知子
ぽつかりとぽかりと浮ける夕暮れの雲に置きゆく思ひの片
山北 悦子
祖父の家更地となれるを尋ね行き愛されたはずの記憶を拾う
山内 可奈子
降り止まぬ錆色の町帰りつつ主治医の話また反芻す
田中 昭子
駅近のタワーマンションに住む友は二十六階の雲の上なり
望月 久子
八十歳眼の前にして衰えるばかりの脳の部品替えたき ※
南條 和子
※八月号八首抄 追加
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