王手をかける鈍器
公安にマークされているかもしれない。着々と鈍器を集める危険人物として。7月に『姑獲鳥の夏』(288g)から始まったわたしの京極堂活動。当初は小刻みに中断しながら超スローペースで読み進めていたので、世論は「あ、この人、じきにリタイアするだろうね。」とする見方が大半であった。ところが、『姑獲鳥の夏』が後半に差し掛かった8月の終わり、突然、四半世紀に一度あるかないかという「強読書モード」が発動し、『姑獲鳥の夏』の後半を数時間であっという間に読み終えた。思い返せばこの時すでに、わたしは京極堂の世界から抜け出せなくなっていたのである。
『魍魎の匣』(476g)『狂骨の夢』(435g)『鉄鼠の檻』(612g)『絡新婦の理』(623g)『塗仏の宴』(支度編:441g、始末編:482g)『陰摩羅鬼の瑕』(539g)『邪魅の雫』(584g)と、「強読書モード」を制御するスイッチを見つけられぬまま、シリーズ最新作のひとつ前までノンストップで読み進めてしまった。用法・容量を守れなかった。休日は引きこもって(得意中の得意!)、平日は夜更かしをして(ほんとうは苦手)。完全に過剰摂取である。ビッグベイビーとして誕生したわたしの出生体重をも余裕で上回る総重量の肉、じゃなくて本を次々に貪るように読み荒らし、次の一冊を求める姿はまるで悲しきモンスター。
「オデ、キョウゴクドウ、モット、ヨミタイ。」
わたしは走るのがとても苦手というか、そもそもまず「走る」という概念から教えこまなくてはならないくらいに運動能力が壊滅的なのだけれど、もしも京極堂シリーズ速読み選手権というものがあるならば、県大会の準決勝くらいまでは進めるかもしれない。
シリーズの最新作『鵼の碑』は、新品をすでに入手済である。そしてもちろん、正和堂書店のかわいいブックカバーも装着済。すぐにでも読み始める準備はできているのだけれど、これを読むのは来月の3連休まで保留しようと思っている。『鵼の碑』はタイトルだけが予告されたまま17年間も読者を待たせたのち、満を持して昨年の9月に刊行された伝説の一冊というのだから、京極チルドレンとして待ちぼうけ期間も当然に体験すべきであろう(かなり短縮バージョンではあるけれど)。
この9月に文庫化されたばかりのほやほや。未計量である。入門から3ヶ月足らずでシリーズの最新作までたどりついてしまうのは、あまりにも身の程知らずというか、待たされなさすぎというか、恵まれすぎというか。つまり、京極堂に夢中になっている間に季節が進んでおり、お取込み中のところたいへん申し訳ないけれども、ちょっと京極堂を読む手を止めて衣替えなどをやってもらえないだろうかという話なのである。
正和堂書店のブックカバーの中でもとりわけテーラーリングシリーズが気に入っている。まち針のワンポイントと、ハサミの栞。センスのかたまり。
京極堂の沼にはまっていたことと関係があるかは不明なのだけれど、プロテインの在庫管理を誤ってしまい、残量がどう見積もっても11月のゾロ目セールまで持ちそうにない。あと10日間分くらいだろうか。となると、1ヵ月以上もプロテインのない生活を強いられることとなるので、プロテインなしで過ごすか、マイプロテイン以外のプロテインを試してみるか、ぼんやりと考えてみたりしているのだけれど、考えた先に出てくる答えが「『鵼の碑』早く読みたい。」なので、もう手に負えない。
いったいわたしはなんのためにプロテインを飲んでいるのでしょうか(質問ではありません)。