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ふえる鈍器

求人を検索するのが趣味であるのと同時に、誰かの転職活動記を読むのもまた趣味である。「わかるーあるある」と共感したり、「え!そんなことがあるの?」と驚いたり、「内定を頂きました」の報告に自分のことのように喜んだり(お会いしたこともないのに)、「そんな話は聞いてない!」と入社後のギャップに戸惑う様子に勝手に心配になったりと、たいへん刺激的である。わたしにも転職活動での忘れられないエピソードがいくつかある。

1)お祈りメールが早すぎて
求人サイトで気になる求人を見つけたので、もうじき日付も変わろうかという時間に「応募する」ボタンをクリックした。応募完了メールを確認して、寝て起きて、翌朝の9時過ぎに不採用を通知するメールが届いた。8時半だか9時だかの始業後、直ちにレジュメを確認して不採用の決定をされたのだろうなと想像して、そのスピード感にくらくらした。後にも先にも、これより早いお祈りメールはなかった。わたしのような者が応募したりして申し訳ありませんでしたと思いながら心で泣いた。

2)熱帯魚の水槽が気になりすぎて
ありがたいことに面接の機会を頂いたので、いそいそと面接に伺った。案内された応接室で、担当者の方と和やかに面接は進む。気になるのは熱帯魚が泳ぐ大きな水槽である。おそらく定期的にメンテナンスをされているのであろう。万が一わたしが採用された場合、メンテナンスをするのはわたしなのではないかという不安が沸々と湧いてくる。最後に質問はありませんかと聞かれていくつか質問をしたけれども「この水槽のメンテナンスはどなたがどれくらいの頻度でされているのですか?」とは聞けなかった。結局、諸般の事情により選考は辞退させて頂くこととなったが、諸般の事情の8割以上は「熱帯魚の水槽の掃除は絶対にしたくない」という気持ちである。

3)ロッカーの幅が狭すぎて
無事に採用が決まって迎えた入社初日。こちらにお荷物はどうぞと案内されたロッカーにバッグを入れようとしたところ、バッグがつかえて入らない。ロッカーに向かっている途中でうすうす気がついてはいたけれども、それは今までに見たことがないくらいに幅の狭いロッカーだったのである。内寸12.2cm!バッグを迎え入れる姿勢が一切感じられない。包容力ゼロ。

内寸26.4cmタイプをスタンダードだと思っていたので、こんなに幅の狭いロッカーがあるなんて知らずに生きてきてしまった。荷物が多くて膨らみのあるわたしのバッグはここには絶対に入らない。机の引き出しの一番下をバッグ置き場として使うことでなんとかやり過ごしたけれども、わたし史上最短記録で離職することとなった思い出深い職場である。退職の理由はいろいろあったのだけれど、1割くらいはロッカーの異常な狭さにもあったような気がしなくもない。ロッカーはだいじ。

さて、京極堂シリーズの第6弾『塗仏ぬりぼとけうたげ』を読み終えた。

「宴の支度」と「宴の始末」二部構成になっているのは、ただ長すぎるからという理由ではなかったのだな。展開のバリエーションが豊富で、京極堂初心者のわたしを飽きさせない構成の工夫、さすがである。登場人物が多すぎて頭に「?」を灯しながらも先が気になりすぎて止まらなくなるこの現象、何度も体験しているのに全然慣れなくて、相変わらずわたしの読書モードは制御不能。今回は木場さんと関口くんのキャストを考えながら読む予定だったのに、木場さんも関口くんもそれどころではない展開になってしまったので、ふたりのキャストはまだ決まらずじまいである。これまでは京極堂のおしゃべりは京極堂の独壇場という感じだったのに、ここにきて初めて京極堂と対等に会話のできる人物が現れて鳥口くんと一緒に驚いた(関口くんが不在であったため)。そして京極堂の人間らしい一面もじわじわと出てきて、京極堂をかわいいなと思ってしまった。

おや、水を打ったように静まりかえって、いないか?気のせいかしら。

次は『陰摩羅鬼おんもらききず』、そして『邪魅じゃみしずく』。もちろんすでに入手済である。

正和堂書店のブックカバーも装着済である。
陰摩羅鬼が右、邪魅が左。
まち針がかわいい。
後ろ姿も抜かりなし!
寝てもかわいい。

今回も中古品を入手したのだけれど、これまでにないほどの美品が届いた。もちろん美品は価格もそれなりなので、だったらもう新品でいいじゃないかとの思いもよぎりつつ、少しでも安く手に入れたいという気持ちが勝って、電卓を叩いてみれば2冊合わせて定価の64%で入手できたので大変にありがたいことである。無事にこの2冊を読み終えたら、京極先生のデビュー30周年のお祝いに最後の『ぬえいしぶみ』は、新品を買おうと思っている。存分に楽しませて頂いておきながらお祝いの気持ちがあまりにもささやか過ぎる。

スピンオフの短編集や中編集も大変気になっており、『鵼の碑』に進む前にスピンオフを先に読んだ方がいいのかもしれない、だとしたら京極堂シリーズのコンプリートまではまだまだとんでもなく長い道のりであることよ~、とソファに倒れ込みながら本日は筆を置きたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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