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明治 近代文学 名著復刻版

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1868〜1912(明治元年〜明治45年)
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#日本近代文学

発展

岩野泡鳴 39歳。詩人から小説家へ。 厚めの大きい本。ソフトカバー。 口絵や挿絵がなく文字のみ。全体的に質素な感じです。 「はしがき」と「人物紹介」の文字は濃いめのブルーグリーン ・・・ ほぼ自伝小説である「発展」🙂 ・・・ 著者 岩野泡鳴 *著作者→著者へ。 発行所 実業之世界社 ・・・ 女性関係、訴訟、心中未遂、田山花袋との対立、「発展」の発禁(風俗扱い)、 北海道での事業の失敗など強い個性と行動力の持ち主。腸チフスのため47歳で亡くなります。波乱万丈だけ

長塚節 33歳。歌人、小説家。 茨城の中学校を病のために中退後、正岡子規の門下へ。 夏目漱石の推薦で朝日新聞に連載後、春陽堂から出版。農民文学として最もすぐれた小説といわれています。 大きめの本。大きな花の口絵が印象的でとてもステキな本です。 ◎表紙 鳳仙花 ・・・ ◎扉 おだまき ・・・ ◎漱石の序文 16ページ 貧しい農民の陰惨な生活の話。人間の本質が書かれている。 ・・・ 著作者 長塚節 出版所 春陽堂 32歳で結核を患い東京、福岡、京都で治療をし

思ひ出

北原白秋 26歳。歌人、詩人、作家。校歌や社歌などの作詞。 サイズは小さめで厚め。持ち運びには便利。 紙質がよく全体的に上品な雰囲気。一生手元に置いておきたくなるようなおしゃれな本です😊 O*MO*I*DE というのもステキ ダイヤのクイーン。旧約聖書に出てくるヤコブの妻、ラケル(レイチェル)。よく見るとお花を持っています。 ・・・ 白秋の故郷、福岡県柳川市の言葉だそうです 著者 北原白秋(本名は記名なし) 発行所 東雲堂書店 北原白秋は校歌や社歌も多く作ってい

お目出たき人

武者小路実篤 26歳。 ソフトカバーで持ちやすい。濃いめの赤の表紙が印象的❤️ 装丁は画家、有島生馬。有島武郎の弟です。 文庫本をちょっと大きくしたようなソフトカバーの本。文字が大きく読みやすい。 左ページ最後の行:「口絵はクリンゲルのエツチング集インテルメチーの序畵である」 20代半ばの主人公が近くに住む女学生に恋をし告白。でもあっけなくフラれて終了という話。じつは実篤自身の体験をもとにしているとか・・ この本をちょっと読んでみたんだけど、不思議なことに「note

一握の砂

石川啄木 24歳。 薮野椋十(=朝日新聞社会部長の渋川柳次郎) 友人の宮崎大四郎、同郷の金田一京助に歌集を捧ぐ 亡児眞一に手向く(夭折した長男) 著者 石川啄木 発行所 東雲堂書店 おだやかな風貌の啄木ですが、金欠と遊びで波乱の人生。早い年齢での結婚で所帯持ちになりながらも職や住む場所も点々と人生ハードモード。周辺も家族も大変・・ 繊細そうな歌からはイメージしづらいですが、でもそういった過酷な環境下だからこそ書けたのかなと思ったりもします。

遠野物語

柳田國男 35歳。日本の民俗学者。 岩手県遠野郷の民間伝承。佐々木喜善より聞く。 ページをめくることができないアンカット本。ペーパーナイフでページをカットしながら読み進めるタイプです。 学校の教科書のような本。口絵、挿絵がなく文字のみでいたって質素でシンプルです。 外国に住む日本人へ(内省してほしいという気持ちをこめて) ・・・ 文明開花で忘れ去られていった自然や神々への信仰 著者 兼 発行者 柳田國男 自費出版 ・・・ 若い頃には国木田独歩や田山花袋との交流

野菊の墓

伊藤左千夫 42歳。 15歳の政夫と2歳上の従姉民子との恋の物語。 丘の上から政夫と民子が語り合っている様子。 恋愛関係を周囲から反対されていた二人。いとこ同士だから?若すぎるから? ひょっとして親同士の関係がよくなかったとか・・・ ちなみに日本の法律ではいとこ同士でも結婚はできます。3親等以内はダメだけど、いとこは4親等になるので問題ありません。 口絵は中村不折。 島崎藤村の「若菜集」、夏目漱石の「吾輩ハ猫デアル」でも描いていますね。こちらで何回か紹介してきたのでだん

吾輩ハ猫デアル

夏目漱石 39歳。 この本を見て驚いたのがページが袋とじになっている「アンカット本」で、ペーパーナイフを使ってページをカットするのだとか。ちょっと面倒だけどなんとなく特別感がありますよね。 とはいえ、最初は「あ、ページがくっついている。製本ミスだ」って。でも思い直して調べてみたらこのままでいいのがわかりました… もうひとつ注目したいのが表紙よりページのサイズのほうが大きいこと。なのでページすべてが表紙からはみ出しています。カットしやすいようにこのようにしているのかな?

海潮音

上田敏 31歳。 ヨーロッパの詩を訳したもの。 厚めの和紙一枚で本を覆うという珍しいタイプのカバー。 日露戦争で満州に出征していた森鴎外へ献呈。 ・・・ ◎「落葉」 ヴェルレーヌ(フランスの詩人) ・・・ ◎「山のあなた」 カール・ブッセ(ドイツの詩人) 五七調。流れるような優しい言葉。声に出して読むとなぜか心が落ち着いてきます。まるでヒーリングの効果があるような不思議な感覚☺️ 学生の頃に「どこかで習った」かもしれない上田敏の訳詞です。 ・・・ 訳者 上

尾花集

幸田露伴 25歳。 嵩山堂出版。 十字折り。広げてみることができるようになっています。👆 今でいうと「分厚めの文庫本」という感じです。 「尾花集」と書かれた切手風。出版元の「嵩山堂」。 職人大工の努力物語。当時新興国だった日本がこれからますます力をつけていく。そんな時代背景もあり特に受け入れられたようです。 幸田露伴から見た「渋沢栄一」とはどんな人物だったのでしょうか。ちょっと読んでみたい気もする🤫

蓬莱曲

北村透谷 23歳。 幻想的な劇詩。ゲーテ「ファウスト」の影響を受けているようです。 北村門太郎(透谷)自費出版。*住所が同じ エネルギッシュにさまざまな体験をしてきた北村透谷ですが、25歳でこの世を去っています。 短い人生だったけれど一生分の経験を一気に駆け巡ったような気がする・・ 知り合いだった島崎藤村に大きな影響を与えたそうです。

風流仏

幸田露伴 22歳頃。 表紙に「新著百種」第五号。 イラストは百万塔と土偶。 露伴著 風流佛 よし岡板(版元) ・・・ 蝸牛(かたつむり)露伴 著 ・・・ 修行の旅にでている青年彫刻家、珠運と狛犬がにらみあっている場面 ・・・ 発行人、発行所:吉岡哲太郎、吉岡書籍店 ほかの本の紹介ページ ・・・ 「新著百種」シリーズ、第一号として尾崎紅葉の「二人比丘尼色懺悔」。 ちなみに、第一号とこちらの第五号が人気だったそうです。 ◎旅先で出会ったお花売りの女性との悲

二人比丘尼色懺悔

尾崎紅葉 21歳。 表紙に「新著百種」 表紙の黒い部分をよく見ると・・「二人比丘尼色懺悔」 さりげなく目次が書かれている。一番下には「第一号」。 ・・・ 新著百種 「いろ懺悔」 板元よし岡(吉岡書籍店) *板元=版元  ・・・ 「春のや生」は坪内逍遥。 ・・・ 会話は二重丸括弧。現在の鍵「」ではないんですね。 あと、会話での間合いに「・・・・・・」がよく使われています。

夏木立

山田美妙 20歳。尾崎紅葉と幼友達。 地味な表紙ですが、中を見ると繊細でやさしい感じで全体的にていねいな印象です。 表紙をめくると鮮やかなオレンジ色のページ。パラフィン紙が綴じられています。 明治二十一年、五月のはじめ 美妙齋主人 この頃になると浮世絵風から現在の漫画に近くなってきています。 終 をはり 山田武太郎(山田美妙の本名) ・・・ 明治21年。1888年。同じ数字が三桁並ぶ年ってめずらしい。 このあとは1999年、2000年、2111年。2222年はな