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散文

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記事一覧

雑踏と帰路

 帰宅時間の駅を行き過ぎるひとびとが、みなことなる顔のつくりや衣服、歩き方をそなえている…

花里
2週間前
103

夢の篝火

 朝起きるとはじまる労働は  情けない数字に変換される  くたびれたからだをひきずる夜  …

花里
2週間前
72

路地裏の闇市

 ・・・・・・複雑に交差する迷路のような道を歩いていれば、蝟集する家々の屋根の向こうから夜空へ…

花里
10か月前
12

煙草工場

 ・・・・・・町のはずれに大きな煙草工場があって、住人たちが眠りについた夜明けの通りは、帰路へ…

花里
10か月前
13

ある町の素描

   ・・・・・・夕陽の沈んだ空から色が失せていき、街路に落ちた墨色の影が濃くなるころ、おまえ…

花里
10か月前
24

忌明け

 明くれば夜の様をかたり 暮るれば明くるを慕ひて 此月日頃千歳をすぐるよりも久し    …

花里
10か月前
15

橋の女

 人通りの絶えた真夜中の橋を、女が歩いている。  歩道に沿って点々と降る街灯に、ヒールサンダルの白い光沢があらわれては消える。両腕を下げたまま足だけを淡々と前に出す細身のその女は切羽詰まるというふうではなく、むしろほんのりと安らいで、眠れずに寝床から起き出して夜風にあたりにきたようなくつろぎさえある。やがて緩いアーチを描く橋の中心までくると、女は胸ほどの高さの手すりに軽く指を乗せ、長い間うつむいたままでいる。暗闇の底に流れているはずの川面からほのかに淀んだ水のにおいが立ちのぼ

半透明の浴室

 人への期待を欠片ほどももてなくなったとき、おまえは最後に半透明の浴室をおとずれるだろう…

花里
10か月前
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子供

 もう何年も、枕の下から子供が笑っている。  男のものとも女のものともしれない、いかにも…

花里
10か月前
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地下喫茶店

 きりなく膨張しつづける乾いた街の、かえりみられない路地裏の一角、くたびれた労働者たちが…

花里
10か月前
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聖堂

 数世紀前に打ち棄てられたままだという石造りの聖堂にいつからか住みついた老人は毎夜祈ると…

花里
10か月前
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