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旅日記|萌木の村:山梨県北杜市

 いつも読んでくださり、ありがとうございます。きのう、きょうと体調が思わしくありません。きのうは何とか書いたのですが、きょうは、過去に書いた未公開の旅日記に一部手を入れたものをお届けします。旅先に持ち込んだPCで、気持ちのままに書きつづったものです。つたない文章ですが、ご容赦ください。
 写真はデジカメでも撮影したのですが、画像がすぐに出てこないため(自分あるある)、スマホで撮影した画像のみを掲載しています。


 2023年7月4日。甲府発8時51分の中央本線下り松本行きで出発し、小淵沢発10時7分の小梅線(愛称・八ヶ岳高原線)に乗り継いだ。二両編成の車内は平日にもかかわらず、観光客らしい人々で座席の大半が埋まった。週末ともなればさらに込み合うのだろう。

 清里には10時33分に着いた。降りたのは自分を含めて16人。全国のJR線の中で標高が2番目に高いらしく、標高は1200mを越えている。ただ、日差しが強く、じりじりと暑い。

 長野県の小諸へと向かう列車を見送り、ホームの端にある小さな踏切を渡ると、白壁の瀟洒(しょうしゃ)な駅舎が見えてくる。こざっぱりとした外観が高原の駅にふさわしい。駅前には客待ちのタクシーが1台、ぽつんと止まっている。観光地にありがちな、喧噪(けんそう)さはない。

 レトロなオープンカーを生かした花壇が目の前に鎮座する観光案内所で「萌木の村(もえぎのむら)」までの道のりを尋ねる。窓口氏によると、目の前の道を道なりにまっすぐ歩いて10分程度という。

オープンカーが花壇になっている

 駅から見下ろす形で街並みは広がっていた。想像していたのと真逆だ。やはり、実際に足を運んでみないと分からないことはある。観光客相手と思われる店の大半は休みか開店前だった。

 表札代わりと思われる楽器を軒先に下げた民家、廃墟と化したホテルを尻目に下り坂を進むと、程なくして国道141号との交差点にぶつかる。その向かいが、もう目的地だった。

 公式のパンフレットによると、萌木の村は、清里開拓の父と呼ばれる米国の教育家で牧師のポール・ラッシュが愛した清里の原風景を再現しようと1977年に誕生した、とある。

 自然との共生をつづったヘンリー・D・ソローの名著「ウォールデン 森の生活」の影響を色濃く受けた施設は、2012年からランドスケープデザイナーとして活躍するポール・スミザー氏の監修で庭園づくりが進む。本来の植生は年を追うごとに再生し、「ナチュラルガーデンズ MOEGI」の名前で無料開放されている。

 ポール氏の著書「これからの庭」を読んで一度、訪ねてみたいと思っていた。

 園内に足を踏み入れると、頭を垂れたような花房が印象的なオカトラノオが出迎えてくれた。本で紹介されていた通りの庭が広がっている。当たり前だけど、その当たり前がうれしい。

大輪のアナベルと村のシンボル・観覧車

 思うがままに歩いてみる。高低差を生かした配置、葉色の組み合わせ。敷き詰められた堆肥。日陰の庭がすばらしい。斑(ふ)入りで葉色が明るいフウチソウを効果的に配している。

涼しげなフウチソウ

 地元の石を積み上げたという立体感のある庭の植栽は、清里で育つ自生種が中心という。観光庭園にありがちな華々しさはないが、手入れが行き届いているのに自然を感じるのはそのせいかもしれない。

大株に育つホスタはシェードガーデンの主役
株元にはシルバーリーフが美しいブルンネラの姿も

 絵画サークルと思わしき年配の男女数人が思い思いにスケッチを楽しんでいる。平日の昼前。訪れる人はわずか。園内に点在するカフェやショップは定休日だったり、客足がなく閑散としている。

 中央にある広場では、舞台の設営作業が進んでいる。萌木の村は国内唯一の野外バレエ公演「清里フィールドバレエ」が毎夏、上演されているという。その準備なのだろう。

 庭は思っていたよりも、こぢんまりとしていた。足を止めながらゆっくり散策しても、十数分もあれば反対側の端に着いてしまう。でも、歩き回ってみて、これが適度な広さだということが分かってくる。

 園内を二巡りした後、開拓の象徴という「開拓の鐘」下のベンチに座り、しばし物思いにふけってみる。園内にはあちこちにベンチが据え付けられている。気軽に休むことができて便利だ。

 ここを訪ねる前、ある決断をした。その判断が良かったのか、間違っていたのかは分からない。けれど前に進むしかないことだけは確かだった。結論はまだ出そうになかった。でも、いまは必要な時間と受け止めることにした。われに返ってみると、肌に受ける風が幾分、涼しげに感じた。

神々しいスモークツリー

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