詩 『黒の空との時間』
優しい黒の空
思わず疑ってしまうような薄曇り
またたきは見つからない
それでも優しい黒の空
まろやかな風を受ける
あたたかく
ささやくように
ベランダに置いた椅子
ガラスの隔たりに映る部屋の明かり
淡いオレンジ色
家々の向こう側を走るタクシー
街の生活感に一役買う
そうでもしないと街は呼吸を忘れてしまう
あまりに静かな日
遠くをまばらに知らせる街灯
よそよそしく夜を照らす
いつかの優しい黒の空を思う
立ち上がるタイミングは特にない
どんな区切りも寂しさを伴う
眠る少し前の特別ではない時間