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〖エッセイ〗「娘、ピアノを辞めた日。」
娘は今年、中3。受験生だ。
ちょっと前から塾へ行くか悩んでいたが、先日ある塾へ面談へ行ってきた。
体験で入塾をしてみて、夏期講習からスタートするか決めてくださいとの事。
夏期講習まで時間が無いため、体験するなら、すぐにでも来て欲しいという話になった。
そこで、前からも決めていたのだが、塾へ入ると決めたら、習っているピアノは辞めるという事。
娘は吹奏楽部に所属している為、秋までは部活が続く。部活、生徒会役員活動、塾、ピアノは時間的にもこなせない。
そこで、本当に急遽ではあったが、ピアノ教室を辞める事になった。
そもそも、娘がピアノを始めたのは、小3の時からだった。当時、私はシングルマザーで娘を育てており、積極的に習い事をやらせてあげられる程の暮らしではなかった。
だから、娘には「本当に、自分がやりたい!続けたい!と思うものが出来たら習いなさい。」と少し厳しく言ってしまっていた。
ある時、誕生日プレゼントに、キーボードを買って欲しいと言われたので買ってあげた。
それから数週間して、「ママ、ちょっと聴いてて!」と言われ部屋へ呼ばれた。
すると、テレビでやっていたりするJ-POPを弾き始めた。
私は驚いた。
「どうして、弾けたの!?」
すると、娘は、
「弾きたかったから、音を探して覚えた。」と言って、笑った。
続けて娘はこう言った。
「ママ、ピアノが習いたい!」と。
私はすぐにでも、
「いいよ!いいよ!好きなだけやりな。」
と言ってあげたかった。
しかし、冷静に真剣にこう伝えた。
「何かを本気でしたいと思ったら、続けようという覚悟を持ってやるんだよ?それから、お金も掛かるという事を決して忘れてはないけない。ママも頑張ってお仕事するから、○○も頑張って続けられる?」
すると、娘は、「うん!」と言った。
「じゃあ、急いで近くのピアノ教室探そうか(^-^*)」となり、数日後には、習い始める事になった。
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それから約6年間、彼女はピアノに通い続けた。病気や忌引き以外で休んだ事は1度もない。
「行きたくないな。」と言った事すらなかった。むしろ、熱があるのにも気がつかずに通ってしまった事があるくらいだ。(コロナ前)
音符も楽譜も読めなかった彼女は、いつしかスラスラと楽譜も読めるようになった。
音楽が好きで、中学に入ったら迷わず吹奏楽部に入部した。
ピアノの先生が言っていたが、意外とピアノを習っている子は逆に部活ではスポーツをやる子が多いそう。
ピアノもやりながら、吹奏楽部に入った子はその教室では珍しかったらしい。
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最後のピアノ教室は、いつもどうり通い、最後に挨拶をして、いつもどうりに終わった。
次の日、先生から「昨日、今、練習中の曲の動画を撮りました。長い間、お父様、お母様も送り迎えありがとうございました。勉強の合間にたまにはピアノを弾いてくれたら、嬉しいです🎵」とメールを頂いた。
動画を見ると、そこには繊細な曲を一生懸命弾く娘の姿があった。
私はこれまでの事を思い出し、思わず泣いてしまった。
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私が娘が保育園に入る時に慣れないミシンで作った手提げ袋。結局、保育園ではすぐリュックにしてしまった為使わなかった袋。
それを、ピアノのレッスンバックにして、こんな子供っぽい柄なのに、ずっと使ってくれた。
「ピアノ、忙しい毎日の中で、よく最後まで頑張りました!」
まだまだ小さい子なら、そう言って抱き締めてあげたい。
しかし、もう。娘は自分の進路を自分で選択し、受験に向けて頑張ろうとしている。
抱き締めるには、大きくなりすぎたね。
だから、私は送られてきた動画を見ながら、
1人静かに「お疲れ様」と心の中で呟いた。
音楽は素敵だ。
人を笑顔にも、するし。
感動の涙も、流させてくれる。
「ピアノに打ち込めて良かったね。やりたい!と言った事、続けられて立派です。
また、たまには貴女の素敵なピアノの音を母に聴かせてくださいね。」
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