経営理念を自分ゴト化する5つの施策~ブランディングが商業教育を変える!?~
こんにちは。Hameeの宮口拓也です。
Hameeは、アイデア・テクノロジー・知恵を集結し、社員・お客様の「クリエイティブ魂に火をつける」ことによって、世の中をより良くしていこうと考えている会社です。
「クリエイティブ魂に火をつける?!なにそれ?」と思われる方も多いと思います。これは、Hameeのミッション(経営理念)です。
今でこそ、プロダクトやサービスを開発・提供する上で、ミッションを大切にしているHameeですが、少し前までどこか遠い存在で、自分の業務には関係のないものと思っている人も少なくありませんでした。
なぜ、そうなってしまったのか。どうやってミッションを日々の業務に活かして、プロダクトやサービスに反映していったのか。そんな話を神奈川県の商業教育に携わる教員のみなさんにご紹介したときの話を中心にまとめています。
1つの目標に向かってチームの力を最大限に発揮したい方にぜひ読んでいただけると嬉しいです。
衰退する商業科
2020年の秋、神奈川県立総合教育センターの勝山さんから、熱い想いと共に、高校の商業科の先生方向けにHameeのマーケティング戦略についての研修講座の講師の依頼をいただきました。
勝山:いま、神奈川県の商業科は衰退しています。学校の再編統合が続き、神奈川県立の単独の商業高校は今後なくなります(併置校として存続)。2020年度の入試では、商業科全体の募集定員が満たない状況です。
そんな背景があり、教えている自分たちが実際の経営やマーケティングを知らないままでは、商業教育は悪くなるという危惧がありました。商業科の教員が「生きたマーケティング」を学び、授業だけではなく学校経営の中でも生かしたい。商業教育を盛り上げ、地域産業を元気にしていける子どもたちを育てていけるように、マーケティングをテーマとした商業の授業づくり研修講座を企画したいと考えました。
勝山:商業教育をより発展させていきたい。その講師を考えた際に、真っ先に思い浮かんだのが、2016年に東証一部上場し、海外進出もしている神奈川県小田原市の企業、Hameeさんでした。
グローバルを視野に入れたマーケティング戦略や、電子商取引を受講者が知ることができ、講座の目的を達成できると考えました。
講座のテーマは「企業から学ぶ実践的マーケティング戦略」。企業の経営戦略についての理解を深めることで、マーケティングについて実務に即して体系的に理解するとともに、実践的指導力を高めていきたいと考えました。
なぜ、経営理念が必要なのか?
宮口:「そもそも、なぜ経営理念は必要なのでしょうか?」。研修は、問いかけからスタートしました。
2020年春、Hameeは経営理念の見直しを行いました。より企業として、進化・成長し、イノベーティブな挑戦ができる柔軟な組織風土にしていくためです。
2019年頃のHameeは、東証一部に上場して3年が経ち、右肩上がりの成長に併せて社員数も増えていました。生産性を上げるために技術力の高い社員の採用に力を入れていましたが、経営理念や企業カルチャーへの共感は、それほど重要視してきませんでした。
次第に、会社の思想や個性がぼやけて、社員は向かう先がわからなくなり、気が付けば、失敗の許されない閉塞感が漂う組織風土になりつつありました。そんな状態では、イノベーティブな挑戦はおろか、事業をスピーディーに進めることなどできません。
どうすれば、組織を束ねられる理念を生み出し、社内カルチャーに浸透させることができるのだろう?当時、私たちが向き合っていたこの問いを、受講者のみなさんにも投げかけてみました。
みなさんは、経営者を校長先生に置き換えて、ポストイットに、下記のようなたくさんの解決策アイデアを書き出してくれました。
教員の皆さんも、私たち企業と同じような課題感を日々感じていたようです。
経営理念を自分ゴト化する5つの取り組み
1.社内の声を聞く
Hameeは、組織の課題を発見するために、まずは社内の声を聞くことからはじめました。取締役と一部の社員の約30名に、Hameeの良いところ、課題に感じるところ、企業カルチャーについて思うことをインタビューしました。
そこから見えてきたのが、次の6つの課題です。
Hameeには「クリエイティブ魂に火をつける」というミッション(経営理念)がありますが、商品やサービスづくりに直接携わらない部署のメンバーにとっては、「クリエイティブ」という言葉は、自分には関係ないもの、他人ゴトとして感じていた社員も少なくありませんでした。
これらの課題を解決するために、有志によるプロジェクトチームを結成しました。ユーザーを観察しながら、スピーディーに試作とユーザーテストを繰り返すという社長(現会長)の樋口が創業時から商品開発でやってきた手法を踏襲して、施策を生み出していきました。
2.クリ魂発掘
その施策の一つが、同じ部署で働く仲間のクリエイティブ魂を見つけ合う「クリ魂発掘」です。これによって、「クリエイティブ魂とは、決して難しいものではなく、誰もが生まれ持った身近なもの」という理解が深まりました。
3.デジタル年表
もう一つの施策は、Hameeが歩んできた歴史を蓄積するデジタル年表です。これは社員なら誰でも編集することができ、新しく入社した社員が創業当時まで遡って会社がどんなことをしながら成長してきたのかを知ることができます。デジタルなので、リモートワークでも自宅から見ることができます。
4.ミッションとミッションステートメント
プロジェクトの中で「クリ魂は手段なの?目的なの?」というメンバー同士の議論が生まれました。これをきっかけに、新たに経営理念をわかりやすく説明するためのミッションステートメントが誕生しました。
樋口が魂を込めて作った草案をもとに、自ら、役員や社員の意見をヒアリングして取り入れながら磨き上げました。
5.カルチャーの発信
ミッション・ステートメントができても、実際の行動と結びつかなければ意味がありません。そこで、ブログ(note)を立ち上げ、プロジェクトメンバーが他部署の社員に、どんな「クリエイティブ魂の火を燃やしているのか」をインタビューをして、記事として社内外に発信するという取り組みをしました。社員が企業カルチャーの理解を深めることを目的としています。
こちらで樋口と取締役の対談記事を発信しました。その他にもランチタイムに取締役を囲んだ座談会を開催して、普段、なかなか関わることのない取締役の人柄や仕事への想いを社員が知る機会を設けました。
このような地道な取り組みの結果、ミッションに前向きに向き合えている人の割合は、取り組みを始める前は17%でしたが、半年後には40%と倍以上に増えました。
今では「新規事業・既存事業に一貫性ができた」「それぞれの部署の役割を理解する手段となり、働きやすくなった」「ミッションが共通言語となり、話が早くなった」といった声が聞こえるようになりました。
この変化は、プロジェクトメンバーのクリ魂の火が、社内のメンバーに燃え広がったからこそ、実現することができたのだと思います。
存在意義が一人ひとりの強みを発揮する
勝山:意地悪な質問をさせてください。
経営理念を見直して社内に浸透させたのは、会社が東証一部に上場された「後」の取り組みでした。ここまで成長できるのであれば、今回の取組は必要ないようにも思うのですが、もしこの取り組みをしなかったら、どうなっていたと思いますか。
宮口:経営理念が社内に浸透していなくてもHameeはここまで成長することができました。ですが、もっと早い段階から、社員が同じ目標に向かって力を合わせることができていたら、今以上に成長できていたのかもしれません。
世の中には、たくさん素敵な会社があります。さらに自分の強みを発揮できる環境を求めて、離職する人が増えていたことも考えられますし、経営理念やカルチャーに共感して入社してくれた新入社員のみなさんにも選んでもらえなかったかもしれません。
VUCAと呼ばれる予測困難で変化の激しいこの時代を乗り越えるには、イノベーティブな挑戦を讃える柔軟な組織風土が必要でした。
経営戦略とマーケティング戦略のどちらにも、一貫する存在意義があることで、誰のために、何のために働くのかを理解しやすくなるため、チームの一人ひとりの強みが発揮されやすくなります。
後編では、「どうやって、経営理念を商品に落とし込むのか?」「どうすれば、ブランドアイデンティティは伝わるのか?」という切り口で、ブランドマネージャーとクリエイティブディレクターが、それぞれの専門領域からHameeのマーケティング戦略について詳しく紹介していきます。
ぜひ、下記からご覧ください!
◆この記事を書いた人