「軸がないからこそ、成長できた」スマホアクセサリーブランドiFaceを展開するモバイルライフ事業部の現在地とこれから
前回から始まった代表水島によるインタビュー企画。
第二弾は、世界累計販売数2,500万個(2022年3月末時点)の「iFace(アイフェイス)」をはじめとするスマホアクセサリーの販売を手掛ける『モバイルライフ事業』を取り上げます。
指揮を執る事業部長は、入社12年目の西澤。Hameeの祖業であり、コマースの中心である同事業の現状、そして今後の展望について語っています。ぜひ、ご覧ください。
iFaceを成長させてきた経験が大きな力に
―インタビュアー水島です。今日はよろしくお願いします!西澤くんとは付き合いが長くて、採用面接も僕が担当しましたよね。
西澤:そうですね。新卒入社なのでもう12年前ですか。面接の時、全部終わったと勘違いして、まだ帰っちゃいけないタイミングで電車に乗ってしまったことを思い出します(笑)急いで降りて戻りましたけど。
ーそれが、今や事業部長ですね。モバイルライフ事業を率いてくれる人を考えた時、西澤くんしかいないと思いました。
新卒からスマホアクセサリーの法人営業を担当して、組織をリードする立場まで成長し、その中でも大きな成果を挙げてきた。さまざまな部署との連携が必要なポジションだと思いますが、そういった他部署との連携や付き合い方もとても上手いし、もうこれは西澤くん以外ないなと。
そんな西澤くんから今のスマホアクセサリー市場はどう見えていますか?
西澤:総務省の調査によると、現在国内のスマートフォン保有率は79.7%で、特に10代~50代の一番コアな層では既に9割を超えています。なので、スマホ保有率の増加に伴いスマホアクセサリーの市場全体が引き上げられるという流れはもう頭打ちに近いかなと思います。※1
一方で、スマホの年間総出荷台数を見てみると、2021年度通期は国内で3385.1万台出荷されており、前年から増加傾向にあります。
2022年度は、コロナや材料高騰などの影響により、出荷台数の減少が心配されていますが、2025年頃までは一定程度の成長を続けるのではないかと言われています。※2
また、iPhoneの旧端末をはじめとする中古スマホ市場も年平均10%越えのペースで拡大しているので、こういった部分にはまだ成長余地があるのかなと。ですので、新機種に合わせた新商品開発を進めるのはもちろんですが、今後は同時に旧端末に対しても、どれだけ新商品を提案できるかが重要になってくると思っています。
―競合の動きやトレンドはどんな感じですか?
西澤:目新しい動きは見られないですが、最近は購入場所が多様化していますよね。
スマホケースが普及し始めた頃は、Hameeのようなスマホアクセサリーメーカーが大多数を占めていたと思うのですが、徐々にアパレルなどの異業種でもスマホアクセサリーの展開が広がり、今ではEC専門のメーカーや100円均一などでスマホアクセサリーが購入できるようになりました。
価格帯も低価格から高価格、購入手段もキャリアショップ、家電量販店、ECモール、個人サイトなど、いろいろな選択肢がある中で、お客様自身が各々の趣味嗜好にあった商品を選ぶ時代になってきたのかなと思っています。
また端末に関しては、同じものを長期間利用する傾向が強くなっていますが、スマホケースなどの装飾品は若い世代を中心に、トレンドや嗜好に合わせて買い換える機会が増えているように感じています。
―10年以上モバイルライフ事業に携わってきた中で、西澤くんが感じるHameeの強みって何ですか?
西澤:いい意味で軸がないところですかね。僕が入社した頃のHameeって、具体的にこのブランドの商品を攻めるぞとか、そういう戦略的なものはなかったんです。
当時卸の営業担当だった自分は何を考えていたかというと、担当する取引先のお客さんに求められている商品ってどんなものだろう?ってことばかりでした。
自社製品の中で考えたり、場合によっては仕入れ商品からネタになるものを探してみたり、どちらにもないものであれば企画して実際につくったり。
店舗の方とコミュニケーションをとりながら、「こういう商品があったら面白いよね」ってよく話していました。「売れる」というワードよりは「面白い」という感覚で社内に持ち込んで企画することが多かったですね。実際に自分の企画で何個か商品化につながったものもあるんですよ(笑)
営業担当、EC店舗担当者が、今お客さまに求められているものを本気で考えながら、きちんと商品を提案できる環境があり、市場やトレンドの変化に合わせて実際に商品を企画して世の中に送り出していく。
そういった経験は、今のHameeの土台になっている部分かなと思います。逆に何かしらの戦略軸があったら、出来なかった動きかなと。
あとは、やっぱり「iFace」ブランドを成長させてきたことですね。
iFaceはもともと営業担当が韓国で仕入れてきた商品の中の一つで、それをヨドバシカメラさん、東急ハンズさん、ロフトさんなどに置いてもらったのが始まりです。無名ブランド商品を、有名店舗にいきなり展開できたのは、営業で培ってきた取引先さんとの関係値があったからこそですけどね。
現在は10~30代の女性を中心に幅広い世代に認知されているiFaceですが、当時はブランド自体が日本で認知されておらず、耐衝撃性を求める30~40代の男性サラリーマンがメインユーザーでした。
当初は、韓国で「First class」をはじめ「Revolution」「Sensation」などさまざまなiFaceシリーズを展開しており、日本でも一通り販売したのですが、途中から国内では最も売れ行きの良かった「First class」に商品を絞り、人気のライセンスキャラクターデザインなどの展開を広げることで、国内認知を徐々に広げていきました。
近年では、背面に強化ガラスを採用した「Reflection」やiFace初の全面クリアケース「Look in Clear」など、国内トレンドを捉えた上でヒットシリーズを企画して、さらに売れ行きを伸ばしています。
最初こそ韓国から仕入れたイチ商品でしたが、それを日本のトレンドを踏まえながらアレンジして市場にしっかりフィットさせてきた実績は今のHameeの強みだと思っています。
もちろん爆発的に売上が伸びた背景には、さまざまな外的要因があるのですが、各取引先との関係やEC展開など、iFaceの急成長に合わせながら自社のリソースできちんと対応できた経験は大きいですね。
そういう意味で言うと、iFaceもいい意味で軸がなかったからこそ、トレンドの動きやユーザーの要望などをスピード感を持って取り込みながら、成長できたのかなと。
最初から軸を設けて戦略的に仕掛けることで、起爆剤が作れたかというと、まだまだそこは力不足な部分がありますが、無名ブランドをここまでの規模に成長できたのは純粋にすごいなと思います。
ー今でこそマーケティング部門なども設立され、きちんと戦略を立てながら商品展開していますが、振り返ると、確かに軸がないことがある意味強みだったのかもしれませんね。卸先の担当者と商品をつくっていく動きはとてもいいなと思いました。
周辺カテゴリーを強化し、ライフスタイルブランドへ
ーiFaceの今後の展開についてはどう考えていますか?
西澤:現在iFaceの売上のうち、約9割がiPhone用ケースで、周辺アクセサリーはわずか1割程度にとどまっています。
最近ではAirPodsケースやタブレットケースなど新たな商品も展開していますが、まだまだスマホアクセサリー市場全体にブランドの魅力を発信出来ているとは言えません。
例えば、モバイルバッテリー一つとっても、スマホ保有者の約6割が使っていると言われています。単価も通常のスマホケースの倍近くある。購入頻度はケースよりも劣るものの、2年に一度くらいの買い替え周期で計算すると、ざっと500~800億くらいの規模が見込めます。
そういった部分に対して現在iFaceとして展開できる商品がなにもない状況です。これはiFaceブランドとしても、モバイルライフ事業全体で考えても、もったいない。なので、まだまだ展開の余地は十分あるのかなと。
ブランドの認知度を活かしながら、スマホケースにとどまらず、周辺アクセサリーを拡大することで、ライフスタイルブランドとして成長させていきたいと思っています。
あと、重視しているのはお客様との接点づくりですね。
今月もiFaceのファンミーティングを予定していますが、お客様1人1人に寄り添いながら、どのようにファンを増やしていくのか。そして寄せられた声を参考にしながらどう商品展開につなげていくのか。こういった部分をもっと考えていきたいです。
―iFaceはスマホケースとして一定のシェアはとれているけれど、それ以外の周辺カテゴリー領域ではまだまだチャンスがありそうってことですね。スマホケース市場にもまだチャンスはありそうですか?
西澤:スマホケース市場については、国内人口に世帯別のスマホ保有率、スマホケース利用率、そしてスマホケースの平均単価をかけ合わせて試算すると、約1,000億円くらいの市場規模があると考えられます。
それに対してiFaceの売上は約80億円程度なので、現在の売上の1.5倍~2倍くらいは十分あり得る数字だと思っています。
スマホケース市場全体で見た時に、一番売れているのはクリアケースで、次に多いのが手帳型ケース。手帳型ケースはスマホケースカテゴリーの中で期待値がありつつも、Hameeとしてはまだシェアが取れていない領域です。
既存の商品ではスマホケースユーザーのニーズに応えられていない要素も多くあり、様々なライフスタイルに合わせた提案のチャンスを感じています。
事業部全体で連携しながら、戦略的な商品展開を
―新しいことをどんどんやっていこうという感じだと思いますが、3年後のモバイルライフ事業について、どんなイメージを持っていますか?
西澤:これまで以上に商品の企画開発から販売までを戦略的に展開できるようにしていきたいですね。
新しいジャンルの商品にチャレンジするときに、「市場的に盛り上がっているからやりたいよね」じゃなくて、具体的にどんな商品をどうやって売りたいのかを最初から描きながら、事業部全体で連携して動いていく。
そういった成功事例をまずはつくって、再現性を担保していくことが今後の課題かなと思っています。
具体的に言うと、「韓国側(Hamee Global)からこういった商品の提案があったから売りましょう」「日本で今こういうものが売れているから、これをつくりましょう」ということではなくて、当たり前ですが、ちゃんと価値のあるものを生み出して販売する。
それを日本の今の需要に対してどうフィットさせて、どうやって売っていくのか。そして最終的にどういうアップデートをしていくのかという部分をきちんと描ける体制を目指したいですね。
―中期経営計画におけるモバイルライフ事業部の数値目標について教えてください。これは西澤くんにとってどういう数字なのか。すごいチャレンジか、それとも保守的なのか。
西澤:決して保守的ではないですが、確実にとっていかなければならない数字だと思っています。今まででいうと年間で前年比108%、110%くらいの成長率は描けていたので。
現況は正直やや厳しいです。各部署のマネージャーとも、何が機能してないから数字が伸びないのか、逆になぜ今まで伸びてきたのかといったことをよく話し合っています。
市場全体でのEC化率やスマホ普及率の鈍化という外的要因はあるものの、Hameeとしてもう一皮剥けるためには、何をしなければいけないのか。日々考えています。
なので数値目標の達成は決して簡単な話ではないですね。ただ、これまでの成長率から考えても、事業を一層成長させていくためには、ここは最低限とっていきたいです。
―組織について教えてください。モバイルライフ事業部ってどんな組織ですか?
西澤:Hameeの事業の中では最も歴史が長く、現在は販売、商品開発、マーケティング、物流・CSなど機能別に5部署に分かれており、約80名が所属しています。
モバイルライフ事業部の中に機能部門として各部署が配置されていて、部署ごとにマネジメント体制が構築されています。自分がマネジメントしていく上でも、各専門領域において経験豊富なマネージャー、リーダー、メンバーがいるので、領域ごとに基本は自走してもらうというのが今の体制ですね。
また部署を横断する形で、ブランドチームとしての連携にも取り組んでおり、ある意味、横の連携も強く求められるような組織かなと思っています。
―優秀なマネージャーやメンバーが数多くいる事業部だと思いますが、マネジメントで意識していることはありますか?
西澤:正解かどうかは自信ないんですが、何か相談された際に、一緒にまずは考えてみるということを大事にしています。
例えば、売上を伸ばすための施策について相談されたら、目的に対してそのやり方が正解なのか、検証は現在の情報で十分なのか。「従来のやり方がこうだったから」という話じゃなくて、自分の視点として、気付いたことがあったらコメントしています。そういった関わり方が多いですね。
あとは、自分に足りていないところは素直に認めることですかね。各部門の専門知識について、各マネージャーより詳しく説明できるかといったら、それはやはり難しいので。
ー最後に、意気込みを聞かせてください。
西澤:今後はiFaceブランドの認知度を活かしながら、スマホケースだけではなく、周辺スマホアクセサリーの展開を強化することで、ライフスタイルブランドとしてしっかりと足元の売上を伸ばしていきたいと考えています。
同時にプロダクトやサービスを通じて、お客様に体験価値をご提供し、いかにファンになっていただくかが長期的な目線での重要課題だと考えています。
モバイルライフそのものを楽しんでいただくために、企画の多様化、コアファンとのコミュニティ強化を通じて、さらなる成長を狙っていきたいです。
―本日はありがとうございました!
おわりに
約25年前、小さなケータイストラップ屋としてスタートしたHamee。ガラケーからスマートフォンという時代の変化とともに、扱う商材もストラップからスマホアクセサリーへ、仕入れ商品から自社ブランド商品へと形を変えてきましたが、ものづくりのマインドは現在も変わっていません。
どうやったらお客様がもっと喜んでくれるか、驚いてくれるか、楽しんでくれるか。
今日もモバイルライフ事業部のメンバー1人1人が、「よりよいプロダクト・サービスを届けたい」という思いで、クリエイティブ魂を滾らせながら、商品を開発しています。
ぜひ今後もHameeモバイルライフ事業の展開、そしてiFaceをはじめとする各種ブランドの成長を楽しみにしていてください。
◆記事を書いた人
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