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【企業担当者向け】スポーツスポンサーシップを120%活用するための「企画」の考え方
「スポーツクラブのスポンサーになる」
そう聞いて多くの人がイメージするのは、選手のユニフォームのロゴだったり、スタジアムの壁の看板だったりするかもしれない。
でも、考えてみてほしい。もしあなたが自分の会社で、施策のひとつとして、貴重な予算を使って「スポンサー」をやるとしたら、どうだろうか?
せっかくスポンサーについたけど、ロゴを掲載するだけで、明確な効果はわからないまま終わってしまった……って、すごくもったいないことだ。
スポンサーシップをうまく活用すれば、もっともっと事業へのインパクトを出せる。知名度アップはもちろんのこと、採用や営業、新規事業の創出など、明確な効果を生み出すことができるんだ。
ぼくはスポーツクラブを支援する会社をやっている。そのなかで、すばらしいアクティベーション事例もたくさん見てきた。
今回は事例を紹介しながら、効果的なスポンサーアクティベーションをやるための「企画の作り方」を徹底解説したいと思う。
いま自社でスポンサー施策をやっている人や、少しでも検討している人がいたら、ぜひぜひ参考にしてほしい!
キングス×ANAの「事業共創」
まず紹介したいのは、Bリーグの「琉球ゴールデンキングス」と、航空会社の「ANA」による取り組み。
実は昨年度から、キングスのホームである沖縄アリーナの「VIPルームの接遇」を、ANAのキャビンアテンダントさんと、OGの方々が担当しているんだ。
これによってANAは、これまで培ってきた「質の高い接遇」という強みを、アリーナやスタジアムという新しい事業領域で展開できることになる。
もちろんキングスとしても、会場の目玉のひとつであるVIPルームのサービスを向上させられるのは、とても大きなメリットだ。
つまりスポーツを通じて、両者win-winの「事業共創」ができたんだ。
もともとANAは、黎明期からキングスのスポンサーをしてきた会社。でもここにきて、より深く事業にコミットしたこのような取り組みを始めた。
企業としても、スポンサーにつくことを単なる「応援」や「支援」で終わらせるのではなく、いち事業としての「投資」として捉える。費用対効果というよりは「投資対効果」で、スポンサーの価値を測るようになってきているんだ。
ローカル経済圏を築きつつある付知FC
キングスとANAの取り組みはホントにすばらしい。
でも「そういうおもしろい取り組みって、メジャーなクラブと大手企業だからできるんでしょ?」と思う人も、もしかしたらいるかもしれない。
だから「クラブや企業の規模に関係なくできるんだよ!」って話もしたいと思う。
たとえば岐阜にある「付知(つけち)フットボールクラブ」は、ローカルなクラブの特性を活かしたすばらしいアクティベーションをしている。これが実は、
・スポーツをきっかけに、
・地域の人を巻き込んで、
・SDGsに貢献し、
・スポンサー企業の「大型成約」&「採用」という、具体的な効果が出た
まさに「三方よし」のすばらしい取り組みなんだ。
どんな内容かというと、、、
まず、付知FCのスポンサーに「ケイナンクリーン」という会社がある。家庭の廃食用油から、高純度の「バイオディーゼル燃料」をつくる事業をしているんだ。
彼らは地域での認知向上に加えて「廃棄用油が定期的に集まる仕組み」をつくりたいと考えた。
そこで、付知FCとコラボして、地域の子どもたちが参加できるスポーツイベントを開催することにした。そのイベントへの「参加条件」として、各家庭で出た廃食用油を、ペットボトルに入れて持ってきてもらったんだ。
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結論からいうと、イベントは大成功だった。
イベント後のアンケートで、ケイナンクリーン社への好感度は92%以上。参加者のSDGsに関する意識変化も82%以上だった。さらにイベントの内容を付知FCのSNSアカウントで発信したところ、採用にもつながった。
さらに、参加者から「ぜひ今後も廃食用油を提供したいから、油田スポットを付知町にも設置してほしい」という声があがった。 そして、同じく付知FCのスポンサーだった「スーパーさのや」にも、油田スポットを設置することになったんだ!
しかもこの取り組みは、1回のイベントで終わりじゃない。
その後、みんなで1年かけて集めた廃食用油を実際にバイオディーゼルにして、試合の遠征に使うマイクロバスに燃料として活用。子どもたちがバスに乗って、市内を走るイベントも開催してる。
![](https://assets.st-note.com/img/1718272224239-hvs8RwitrZ.jpg?width=1200)
これはもう本当にすごい。
イベント自体も大成功だし、地域にこの取り組みが根ざしていくことで、付知町が「日本一のエコタウン」になる可能性まで秘めてる。スポンサーにとっても、地域にとってもポジティブなサイクルが生まれてる。そのハブとして、スポーツクラブが機能してる……。
ほんとうに理想的な事業共創であり、地域活性化の取り組みだと思う。
付知の事例はこちらの記事にも詳しくまとまってるから、もっと知りたい人はぜひ読んでみて!
ポイント①スポンサーをやる「目的」を明確にする
じゃあ、キングスや付知FCのように、事業に直結する効果的なスポンサーアクティベーションをやるには、一体どうすればいいのか?
まず大切なのは、スポンサーをやる「目的」を明確にすることだと思う。
採用や営業、マーケティング、新しい市場の開拓……。自分たちがいちばん解決したい課題はなんなのか。
その課題感をクラブに共有して「どんなことができるか?」を考えていく。
これはスポンサーに限った話じゃなく、会社の予算を使ってどんな施策をやるにしても、とっても大切なことだ。でも、スポンサーとなるとなぜかあいまいになりがちなところでもある。
だからまずは、ここをクリアにするのが重要だ。
「鉄鋼会社の採用イベント」にスポーツを活用
課題を明確にしたことで、より効果的なアクティベーションができた事例を紹介したい。
清水エスパルス(サッカー)、ベルテックス静岡(バスケ)、静岡ブルーレヴズ(ラグビー)と、静岡県内で3つのチームのスポンサーをしている会社がある。株式会社アイ・テックという鉄鋼会社だ。
アイ・テックは2つのクラブを活用して、採用イベントを開催した。
内容はざっくりいうと「学生と一緒に自社のPRアイデアを考えて、スポーツ会場でそれを実施する」というものだ。
まずは「1day仕事体験」として、採用候補者の学生に集まってもらう。グループワークで、アイ・テックのPRアイデアを考えてもらうんだ。 そして、クラブの試合会場にブースを出して、学生と一緒に考えたPR施策を実施する。それが終わったら、学生とアイ・テックの社員さんたちで、一緒に試合を観戦する。
そういうアクティベーションをした。
ただの「採用説明会」だと、正直、学生側も受け身になってしまって、印象に残らないことも多い。 でも、こうやってスポーツと絡めた採用イベントをすることで、学生が「自分から」会社のことを知ろうとするきっかけができる。
PRを自分たちでするわけだから、会社について詳しくならなきゃいけない。だからみんなたくさん調べる。スポーツと絡めることでイベントも盛り上がるし、達成感もある。「この会社に入ったら成長できる気がする!」って思えるかもしれない。
そうなると、参加した学生にとってその会社は、同じ業種の他社とはもうまったく違って見えるわけだ。
他社との差別化が難しかったり、事業内容がなかなか伝わりにくいような会社こそ、こうやってスポーツを絡めた採用イベントをやるのはかなり効果的だと思う。
実はアイ・テックは、スポンサー自体はもともと長くやっていた。
でも、明確に「採用」を目的として打ち出したのは今回が初めて。これまでは地域での認知度を高めることを狙った、ユニフォームへのロゴ掲載がメインだったんだ。
具体的な課題を起点にアクティベーションを考えたことで、ここまで中身の濃い施策ができた。
いまはさらに、静岡ブルーレヴズでも採用企画をはじめたそうだ。しっかり目的をもって、事業戦略としてスポンサーに力を入れているのがすばらしいし、だからこそ効果も出やすいんだと思う。
ポイント②「社会課題」を起点に考える
企画を考えるうえでもうひとつ、スポーツならではのポイントがある。
それは「社会課題」を起点に考えてみることだ。
付知FCの話もそうだけど、社会課題はスポーツクラブとの相性がいい。それは、スポーツクラブが高い「公共性」を持っているから。
いち企業の課題って、正直、会社の外の人にはそんなに関係ない。だから宣伝してもなかなか広まらない。でも、社会課題は企業だけじゃなく、行政やその街の人、みんなに関係することだ。
そしてスポーツクラブは、街のみんなにとって身近な存在。
だからスポーツクラブと一緒に取り組みをやると、そこにいろんなステークホルダーを巻き込みやすい。
企画の切り口が「社会課題」であればなおさらだ。
クラブにはファンがいるし、スポンサー企業がいる。ホームタウンの行政も、地元のメディアもついている。そういった人たちを巻き込んでいける。企業だけで採用活動やSDGsの取り組みをやるよりも、ずっと多くの反響を得られるんだ。
スポーツがハブになって、2つの企業がつながった
取り組みをすすめながらステークホルダーを増やしていった、おもしろい事例をひとつ紹介したい。
Jリーグの「ザスパ群馬」でおこなわれたスポンサーアクティベーションだ。
内容としては、これも環境問題を起点とした企画。スタジアム内で販売する飲食物の容器のゴミをリサイクルして、堆肥に変える。それを芝生にまくことで、環境保全に役立てる、というプロジェクトだ。
ここに関わったスポンサーが、「ソーダニッカ」と「リスパック」という2つの会社。
ソーダニッカは、環境保全への意識が高い化学製品の総合商社。そしてリスパックは、再生可能な容器(PLA)の開発に取り組んでいる、食品容器の会社だ。
この取り組みの何がスゴイって、 企画を実現するにあたって、ソーダニッカが外からリスパックを連れてきて、一緒に取り組みをしたってことだ。
このプロジェクトは、もともとザスパ群馬とソーダニッカの間だけでやる予定だった。でも企画を進めるなかで、ソーダニッカは「自分たちの力だけだと、容器のリサイクルが難しい」って気づいたんだ。
そこで、以前からソーダニッカの取引先だったリスパックに声をかけて、再生可能な容器の生産をお願いすることになった。 スポーツスポンサーの取り組みを通して、スポンサー企業が、別の企業を連れてきた。
そうして「ゴミをスタジアムの堆肥に変える」プロジェクトが立ち上がった。
スポーツがハブになって2つの企業がつながり、事業共創のきっかけになったわけなんだ。 結果的にそれが2つの企業のブランディングにもなるし、環境保全という「社会課題の解決」にも繋がっている。
あらゆるステークホルダーにメリットのある、すばらしい取り組みだと思う!
このプロジェクトは実はまだ進行中で、いまは「堆肥化」ができる企業がいないか探してる。もし思い当たる人がいたら教えて欲しい!
想像もしていなかったところまで届くのが、スポーツのおもしろさ
目的を1つ置いて、そこを起点になにをするか考えていく。
それが結果的には、いろんなところに広く影響を及ぼしてくれる。
それがスポーツを絡めてビジネスをやるときの、大きな魅力だと思う。
スポーツチームの魅力のひとつは「お客さんの幅の広さ」だ。子どもから大人、おじいちゃんおばあちゃんまでがお客さんになり得る。それはどういうことかっていうと、何かやったときに幅広い人たちにリーチするってことだ。
そうすると「社会課題の解決」っていう目的で始めたものが、いろんな人のところに伝わって広がっていくことになる。想像もしてなかった、願ってもみなかったところまで影響する。イベント参加がきっかけで採用が決まったり、新しい事業パートナーが見つかったりする。
そういう「想像を超えた効果」が生まれることは、スポーツならではのおもしろさだ。
スポーツをGoogleのような「プラットフォーム」として考える
そう考えると、スポーツクラブってすごくいい「プラットフォーム」だ。
いろんな属性の人たちが、周りに集まっている場所なわけだから。
特に企業にとっては、スポーツクラブは単なるエンタメじゃなくて、GoogleやYahooと同じような、マーケティングのための「プラットフォーム」だと思う。
企業はふだんから、いろんなマーケティング活動をしている。どんな媒体に、どんな広告を出すか? 掲載するのはGoogleか、Yahooか。それともfacebookか、Instagramか?
そうやってマーケ戦略を考えるときも、必ず目的から逆算して考えているはずだ。
「新規のリードを何件とりたい」「20代から30代の、女性のファンを獲得したい」みたいに、いろんな目的がある。そこから「じゃあ、ユーザー層に女性が多いインスタグラムで、こういう広告を出したら刺さりそうだな」と考える。
広告の出向先の特性や傾向を、データを使いながらみるわけだ。
スポーツチームのスポンサーをするときだって、同じだと思う。
「そのスポーツクラブが持っているアセットって、なんだっけ?」というのを考えて、スポンサーをするクラブを選んだり、取り組みの内容を考えたりしなきゃいけない。そうしてこそ、きちんと投資対効果を得られるんだ。
クラブが企業の課題を解決するために
今はまだ、クラブ側も「スポンサーをしてください」って”お願い”してしまってることが多い。でも、本当にやるべきはそうじゃないんだ。
まずは「こういうことに困ってませんか?」って、企業さんの課題をヒアリングしなきゃいけない。
「採用を促進するため」「会社のブランドを上げるため」「パーパス経営を実現するため」「商品のテストマーケティングをするため」。まずはそうやって、目的をはっきりさせる。
そのうえで「うちのクラブにはこういう特徴があって、こういう部分で御社のお役に立てると思います!」って提案をしていくのが、とっても大切なんだ。
担当者の熱量も成功の秘訣
この記事で紹介したすべての事例にいえることだけど、
・担当者の方の熱量
・代表や上司の方の理解、柔軟性
この2つが揃っていたことも、いい取り組みになったすごく大きな要因だ。僕が直接それぞれの会社へインタビューもさせてもらったんだけど、みなさんスポーツや地元への想いがある担当者さんばかりだった。
そういう人が企画を立ち上げて、会社も取り組みの価値を理解してくれていると、当然だけど、すごくいいプロジェクトになる。
だからもし、いまスポンサーをやっていたり、検討している企業の担当者さんがいたら、ぜひクラブや会社にも「いまうちの会社はこういう課題を抱えてる。だからスポーツを活用して、こういう人にアピールしたいんです」と伝えてみてほしい。
そこからいいアクティベーションが生まれる可能性は、じゅうぶんにあると思う。
スポーツ活用に特化した「代理店」が必要
とはいえやっぱり、クラブの本業は試合の運営だ。ビジネスに精通している人材が多いとはいえない。だからスポンサーセールスでも「応援お願いします!」というスタンスになりがちなのが現状なんだ。
ぼくはそれが、すごくもったいないと思ってる。
スポーツクラブにはすごいポテンシャルがあるのに、それを企業に伝えたり、企画を考える人が足りていない。
つまり、広告やマーケでいうところの「代理店」の役割をする人がいないんだ。
企業にヒアリングして、課題を抽出して、それをスポーツクラブの特性を活かした企画にまで落とし込める人。「そういう課題だったら、このチームをこうやって使えば効果が出そうですね!」って話をする人。
もしその企業の課題と、クラブの特性が合わなければ「合わないと思います」「それはスポーツじゃないほうがいいっすよ」ってちゃんと言える人。そういう人が必要だ。
現状、そんな代理店ってぜんぜんいない。
だから、ぼくらがやろうとしている。
ぼくらには、これまで培ってきた全国150ものクラブとのネットワークがある。そして、2011年に起業してからずっと続けてきたウェブマーケティングの知見もある。
ビジネスとスポーツ、2つの世界をつなぐ「通訳」を、ぼくらはできるはずなんだ。
その第一歩として、いま「湘南ベルマーレフットサルクラブ」と「岡山リベッツ」の2つのクラブと、アクティベーション共創パートナー契約を結んでいる。
どういう内容かというと、彼らがおこなうスポンサーアクティベーションの企画や運営を、ぼくらがサポートさせてもらうというものだ。企業にとってより効果的で、企業もクラブもwin-winになるような施策を提案していく。
さらに、アクティベーションに留まらず、採用サイトの新規構築やリニューアルまで僕らがサポートさせてもらっている。
採用が課題で、知名度などを求めてスポーツのスポンサーをする企業さんは多い。そこでのスポンサー活用もすごく大事なんだけど、そもそもの採用のプロセス改善や採用サイトの充実化もやらないと相乗効果は出ない。
そこがベースで、スポンサーは差別化戦略だから。
そこを僕らのウェブの知見でサポートして、強いサイトをつくる。そして成果が出やすい環境を整えたうえで、アクティベーションのコンテンツを乗せていく。
そうすることで、よりクリティカルな課題解決ができるようになるんだ。
クラブとの共創はまだ始まったばかりの取り組みだけど、これからもっともっと広めていきたいと思ってる!
*
「スポーツってこんな使い方できるんだ!」って事例をたくさん増やしていくことが、企業にスポーツの魅力を知ってもらう、一番の近道だと思う。
だから、今回紹介した企画の考え方は、ぜひみんなにもマネしてもらいたい!
僕らが運営している「Japan Sports Activation Awards」では、魅力的なスポーツアクティベーションを毎年表彰してるから、こちらもぜひ参考にしてほしいな。
いいアクティベーションを増やして、一緒にスポーツ市場を盛り上げていきましょー!!🔥
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