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【感想&考察】アニメ葬送のフリーレン2周目、第27話~第28話

前回に引き続き、原作未読のアニメ『葬送のフリーレン』の視聴2周目の個人的にエモいと思ったところを綴るやつの6本目です。ネタバレがあるので未視聴の方はブラウザバックを推奨します。それでは、行きましょう。


3.2周目で抽出したエモいところ

3-20.第27話(1)=違った2人のケンカの形

一級魔法使い試験第2次試験でフェルンの杖は粉々になってしまったので、フリーレンは「古い杖は捨てて新しい杖を買った方がいい」と助言しました。その方が使い勝手や魔法の精度が良くなったりするように、フリーレンは師匠の立場から意見したのでしょう。しかしながら、命の恩人であるハイターとの思い出が詰まったこの杖を大事にしているフェルンは、それを蔑ろにされたと感じてブチ切れてしまいます。

以下は自分の推測を長々と綴りましょう。フェルンはこの杖が自分とハイターを強く結びつける証であることをフリーレンが当然分かっていると思っていたので、ケンカしている最中はそこに関しては一切触れなかったはずです。人間をやっていれば(なんでこんなに怒ってるかなんて、いちいち言わんでも分かるやろが!と)相手を罵倒するだけのケンカになるって誰しも経験があるじゃないですか。でも、フリーレンからしてみたら第12話のように「思いってのは言葉にしないと伝わらないのに」っていう感覚なので、どうしてフェルンがそこまでブチ切れてるのかが分からないんですよ。

訳が分からないまま粉々になった杖を持ってオイサーストの街をさまようフリーレンは、たまたまカンネとラヴィーネに会います。そこで2人に事情を話したうえで 「わたしはこれからどうしたらいいんだろう?」と頼ったようです。この第18話~第21話のカンネとラヴィーネの "信頼から生まれる連携とケンカ" をフリーレンとフェルンに置き換えて描写する作劇法もさることながら、第1次試験のパーティメンバーがまた違う形で助け合う関係になっているのがいいですよね。

カンネとラヴィーネの手助けが本当にあったのかは分かりませんが、フリーレンはリヒターに修理を依頼しにいきます。この時、修理するリヒターが「手入れが行き届いた良い杖だ」と分かるほどフェルンがとても大切にしていたことを知ります。きっとこれはフリーレンが思っていた以上のものだったでしょう。リヒターは後にフェルンに声がけするほど杖の持ち主がどんな人物なのか気にしていたくらいですから、この杖にまつわる経緯いきさつもついでにフリーレンに尋ねたはずです。そのことについて喋っているうちに、図らずもフリーレンは求めていた答えにたどり着いてしまったと予想されます。

<フリーレンとリヒターの杖修理時の会話の脳内補完>
リ:フリーレン、ついでに聞いていいか?
フ:なに?
リ:これより良い杖ならうちで扱っている、新調はしないのか?
フ:捨てて新しいのを買ったら?って言ったらひどく怒られたんだよね
リ:これってお前が贈ったものなのか?
フ:いや、わたしの古い友人だよ
リ:持ち主とは、どういった関係なんだ?
フ:幼い頃に両親を亡くした戦災孤児でね、そいつに命を救われた
リ:なるほど…… で、今はお前が預かって師匠をやっているのか
フ:まぁね
リ:なら、怒られて当然だな
フ:なんで?
リ:命の恩人から貰った替えのきかない杖だぞ?俺がそいつの立場だったら、いくら師匠でもお前を殴ったかもしれん
フ:それほどのものなの?
リ:さぞかしショックだったろうな、お前にもそういうものの一つや二つ、あるんじゃないか?
フ:わたしは…… どうしたらいいんだろう?
リ:別に何も、元通りにしたこいつを返してやればいい
フ:それだけでいいの?
リ:一応口で謝っておいた方がいいぞ、こういうのは根に持たれるからな
フ:……

フリーレンとリヒターの杖修理時の会話の脳内補完

修理された杖をベッドの上から取りあげたフェルンは、ハイターとの回想に耽りながらフリーレンが1日中思い悩んでくれていたことを察して、自分を省みます。第3話の誕生日イベントのように、フリーレンはまた「私はフェルンのこと何も分からない」と思いながら、フェルンのために自分の時間を使って悩んでくれたんです。「ごめんなさい」と「ありがとう」を言うタイミングを計るフェルンが第3次試験会場で気まずそうに話しかけますが、フリーレンは全く気にしていない様子でした。もしかすると、フリーレンはリヒターからいつも通りの感じでフェルンに接していればいいと "人間の講義" を受けていたのかもしれませんね。

( 'ω' ).。oO( リヒターさん、いいキャラしてるよなぁ

てかさぁ3=『葬送のフリーレン』は難しい感動の宝庫

結局、フリーレンはフェルンがブチ切れた理由にたどり着けたのか明確に分かる描写って一切無かったですよね。でも、今まで20何話も見てきた流れからすれば、こういう遠回りな表現をするのが『葬送のフリーレン』らしさだと、いい加減分かります。

見ている人をストレートに感動にさせようとしたら、次のような演出方法をとったはずです。フリーレンが、かつて杖を持てばよろけるような幼少フェルンとハイターと一緒に暮らしていた第1話のシーンを入れます。この回想から戻ってきて、フリーレンの口元をアップにします。一瞬はっとさせてから「そっか……」と微笑ませて、それなりに壮大な音楽でもかけてやれば(なるほど、フリーレンはようやくその理由に気づいたのか)って誘導できます。なんなら、追い打ちに修理された杖を見たフェルンにすすり泣きなり号泣なり、泣きの演技をさせてもいいじゃないですか。

こういう誰が見ても分かりやすい感動を自分は "易しい感動" って呼んでいて、これなら倍速視聴勢や流し見勢、アクション目的勢、アニメ初心者の方でも十分に伝わるでしょう。でも、この作品って自分みたいな素人がすぐに思いつく感動演出を絶対にやらないんですよ。何と言いますか、露骨に感動を誘うセリフとか悲しい表情、泣き声のような安直な方法で見ている人を泣かせようとするのを何よりも嫌っている作風というか、作家性を感じるんですよね。

( 'ω' ).。oO( 第1話とか最初の方はツカミやからキャラが泣く描写は結構入ってたけど、それ以降は全くと言っていいほど無かったよなぁ

第27話のフリーレンのように、キャラがどんな気持ちでいるのか表情からは読み取れませんし、セリフで説明もしてくれません。悪く言えば不親切極まりないんですけれど、その代わり行動では示すんです。だから見ている側としては「なんでそんなことしてんのさ?」と、自分からキャラ心理の根っこにアプローチしていく必要があるんですね。それから、画面上に映った部分だけで画面外で起こったであろうことを想像で補完して、ようやっと3-20.みたいな自分なりの感動解釈が出来上がります。

正直なところ、自分で考えないといけない面倒くささがあるせいで、頭がめちゃくちゃ疲れます。でもその分だけ、易しい感動よりも味わい深さは確実に増すんですね。このように、見ている側も参加して心の中で創り上げていく感動を自分は "難しい感動" って呼んでいます。

ただ、難しい感動には主に3つの欠点があるんです。1つ目は頭を空っぽにして見るとシーン同士のつながりが分からなくて最悪つまらなく感じてしまうこと、2つ目は仮に考えながら見たとして自分の解釈が正しいのか分からないこと、3つ目はエモいシーンが易しい感動よりも絵面が地味で分かりづらくなることです。こういう理由があるので、自分は(もしかしたら解釈が間違っているのかもしれないな)と、また見返す周回の沼にザインのようにハマっているわけです。はっきり言って、『葬送のフリーレン』は難しい感動の宝庫ですよ。

( 'ω' ).。oO( まぁ泣くだけが感動の仕方なわけじゃないってことよ

3-21.第27話(2)=花畑を出す魔法がつなぐ人間関係

アニメのフリーレンのざっくり年表

魔法研究が禁忌とされていた時代、フランメは両親から花畑を出す魔法を教わります。ざっくり年表にもある通り、やがてそれは弟子のフリーレンへと受け継がれ、約千年後にヒンメルとの出会いにつながっていきます。夜の森で迷子になっていたヒンメル少年は、初めて出会ったフリーレンお姉さんから人里への帰り道を教えてもらったうえに綺麗な花畑を出す魔法まで見せてもらいました。その結果、ずっと忘れないほどに性癖を歪まされてしまったのでしょう。この花畑を出す魔法が様々な人間関係を介在して、最終的に魔王討伐を成す間接的な要因になっていったのが面白いですね。

てかさぁ4=ゼーリエから漂う異世界チート作品のかおり

作中、絶対的な強キャラとして登場するゼーリエですが、異世界チート作品の主人公のようなキャラ設定を感じます。個人的に異世界チート作品を作る上での最大の難点は、チートスキルを主人公に付与することによって魅力ある強敵を陳腐な小悪党に変えてしまうことだと思うんです。主人公を立てるなら、最低限それに見合った敵の背景や持っている美学などをしっかり作り込んでくれないと感情移入も何もありませんからね。でも、せっかく考えた設定をチートスキルが何もかもキャンセルして敵キャラを使い捨てるように扱ってしまうわけですから、物語を盛り上げるのは相当大変だと思います。

さて、ゼーリエに与えられた属性と言えば最強、孤独、尊大、身勝手、幼稚でしょうか。最強であるがゆえに対等に話ができる者がいない孤独、弱者には尊大に振舞うものの気に入った者には面倒見がいい身勝手さ、そして自分の気持ちを素直に伝えられない幼稚さを兼ね備えています。これらを一つのキャラに盛ると、口を開けば自分がどれだけすごいだのどれほど偉いだのといった自分自己顕示の話に終始するナルシストか「どうせ自分なんか誰も好きになってくんねぇし」っていう投げやりなダウナー系になるくらいでしょう。客観的に見てこのような性格は主人公には向かないですし、むしろ本作のようにフリーレンに立ちはだかる存在として描いた方がキャラが活き活きして見えますよ。

3-22.第28話=価値観と性格が違うゼーリエとフリーレン

ゼーリエとフリーレンに共通しているのは、人間の魔法使いの育ての親であることです。経験量はゼーリエの方が圧倒的に上であるのに対して、フリーレンはフェルンが初めてで、しかもまだ始まったばかりです。ゼーリエは第3次試験で面接したフェルンの魔力の揺らぎを見抜くポテンシャルを目の当たりにして(なんであのフリーレンなんかがいきなりこんな将来有望な弟子を育てられるんだ?)と疑問に思ったはずです。

試験終了後、フリーレンを大陸魔法協会を千年出禁にした理由は色々と考えられます。一級魔法使い試験の選考を乱したことや面接で改めて感じた自身との魔法に対する価値観の違い、磨けばフランメを超える魔法使いになるかもしれない人材フェルンに先に手を付けられたフリーレンへの嫉妬心も少なからずあったでしょう。もう一つは、ゼーリエとフランメの関係による説があります。

<ゼーリエとフランメの関係を切り口にした協会千年出禁の解釈>
面接会場にはフランメが好きだった花畑を出す魔法が使われていたことや第10話のフランメが考案したらしき魔族を欺くための魔力制御をテストとして使っていたこと、話し口調がフランメ寄りになっていたことから、この面接ではゼーリエがまるでフランメのように振舞っていたのが印象的でした。この背景には、魔王討伐と大陸魔法協会創設が密接に絡んでいると考えられます。仮に、レルネンが一級魔法使い合格者第1号となって50~60年が経過したとすると、時系列は次の通りになります。

①10年――――――魔王討伐
②10?~40年――ゼーリエ、大陸魔法協会創設
③30~40年―――レルネン、一級魔法使い合格者第1号
④90年頃―――――現在時間

②が10?~40年である根拠は、第20話でのリヒターの発言「半世紀以上前に突如として歴史の表舞台に現れ、人類の魔法の頂点に君臨した大陸魔法協会の創始者、大魔法使いゼーリエ」からです。これらを総合すると、魔王討伐をきっかけとして、ゼーリエが大陸魔法協会を創設したと考えるのが自然です(もちろん、魔王討伐前に創設した可能性もあります)。おそらくこれは、フリーレンが魔王を討伐すると言い当てたフランメの先見性に対するゼーリエの敬意、あるいは面倒見の良さなんだと思います。

もし、ゼーリエが「魔法は特別であるべきだ、才ある者以外教えるつもりはない」っていう自身の価値観に固執していたら、文字通り何もしなかったはずです。大陸各地に協会の支部を作るのは「世界中の人々が魔法を使えるようになってほしい」フランメの価値観を尊重している証ですし、半世紀余り(50〜80年)で人類の魔法の頂点に君臨したのもフランメが同じくらいの期間で人類の魔法の開祖にのぼりつめたことの踏襲を感じます。面接会場でフランメの好きな魔法や魔力制御、話し口調を使うフランメの真似事も含めれば、ゼーリエがどれほどフランメのことを大切に思っているかが分かります。

つまるところ、ゼーリエにとってこの協会の建物はフランメを象徴する存在です。ゼーリエが、もしフランメが今のフリーレンを見たとしたら(高々100年程度の寿命しかない人間のレルネンに魔力の揺らぎを見抜かれている程度では絶対に納得しないだろう)と、フランメの立場に立って最初から不合格にすると決めていたはずです。そのおまけとして、魔王を討伐するフランメの予言を実現させるまでにフリーレンが待たせた千年を出禁にしたと考えられます。フリーレンはこの裁定を子供っぽいと呆れていましたが、これはゼーリエがフランメを好きすぎるからこその成り行きだと思いますよ。

ゼーリエとフランメの関係を切り口にした協会千年出禁の解釈

さて、ゼーリエとフリーレンにはちょっとした性格の違いがあります。ゼーリエは自分の気持ちを弟子にすら素直に伝えられない不器用さがあるのに対して、フリーレンは自身の不器用さを自覚しながらも、人間を知ろうと努めたことで自分の気持ちを直接伝えることができるようになってきています。

例えば、第2話のハイターへの叱りつけ第3話のフェルンのことを知ろうとする誕生日イベント第12話のシュタルクのことを知ろうとする誕生日イベント第17話のフェルンの病床の寄り添い第18話~第21話のカンネとラヴィーネのケンカの裏側にある信頼などがありますね。フリーレンにこのような心の変化をもたらしたそもそものきっかけはヒンメルなので、早く魂の眠る地に行って自分で選んで買った鏡蓮華の指輪をプレゼントし返すとともに、後悔のないように自分の気持ちを直に届けてやってほしいなぁと願う今日この頃です。

( 'ω' ).。oO( 弟子入りをフェルンに断られたうえに服の汚れをきれい
さっぱり落とす魔法を望む価値観の嫌がらせを受けたゼーリエさん哀れ……

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こうして2周目を振り返ってみると『葬送のフリーレン』ってほぼ毎話エモいシーンが仕込まれていますよね。個人的に、大変だったのは「エモい」の一言で簡単に片づけずに、エモいと思ったところの理由を詳細に文章化することでした。正直なところ、ずっと雲を掴んでいるような感じでした。でも苦しんだ分だけ、この世界観にクッタクタになるまで浸ることができて楽しかったです。

(~'ω' )~.。oO( これでようやくね、サンデーうぇぶりでアニメの
あとの話を読むことができるようになりましたわ

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