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トーハクの東洋館で、緻密で色鮮やかな「インド細密画」をガン見してきました
東京国立博物館(トーハク)で、特別展『やまと絵』が始まってから、館内はどこもかしこも人だらけになっています。そんな時でも比較的にゆっくりと見られるのが、東アジアの展示物が多い東洋館です。
なかでも今回はインドの細密画を、じっくりと見てきました。
東洋館の地下1階、ミュージアムシアターの近くにある「13室」。「アジアの染織」のコーナーには、様々なじゅうたんみたいなのや生地が展示されています。その生地を展示するための、壁のような大きな大きな展示ケースの……その裏側に展示されているのが、インド細密画です。
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■東京・府中市美術館で『インド細密画』展が開催中
「そもそもインド細密画ってなんだ?」と思って、ネット検索したら……東京の府中市美術館で『インド細密画 はじめましてインド 宮廷絵画130点との対話』という展覧会が、11月26日まで開催されていることを、いま知りました。このチラシが欲しい!
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チラシ同様に、府中市美術館の『インド細密画』展の特別サイトも、ビジュアル的にも内容的にも素敵で、インド細密画のことを知るのにもってこいでした。トーハクで見る細密画がすばらしくて、東洋館へ行く時にはいつも欠かさずに見ているのですが……それが何なのか? は、今までよく知りませんでした。今回は府中市美術館の素敵なサイトがあったので、ちょっとだけ掘り下げていきたいと思います。
■インド細密画とは?
インド細密画は、一辺が20cmくらいの絵なのですが、その中に細かく細かく人物や動物、自然や建物などが描かれています。府中市美術館のサイトによれば、「16世紀後半から19世紀半ばに、ムガル帝国やラージプト諸国の宮廷で楽しまれもの」で、「あえて小さな画面に描かれたのは、『見る人と絵が一対一で対話をする』という考え方があったから」なのだそうです。
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本当かどうかは分かりませんが「あえて小さな画面に描いた」と言われると、たしかに絵が小さいうえに細部まで緻密に描かれているから、どうしたって絵に近づいてじっくりと見てしまいます……それで鑑賞者と絵が一対一になっている……インドの神話も文化も何も知らないわたしでも「これは何が描かれているんだろう?」って、絵と対話してしまいます。
描かれている内容や技法は全くことなりますが、そういう思わず前のめりに作品を覗き込んでしまう……覗き込まざるを得ないほどの完成度が……先日noteで記した、土佐光則が描いた《雑画帖》を見た時と似ているなぁと思いました。
その他にも、同展のチラシを見ていると、インド細密画の見どころが分かりやすいです。まずインド細密画には、『インドの神々と英雄たちの世界』が色鮮やかに描かれています。また「リアルに描写することを追求しませんでした」としていますが、これは「色彩や線描といった造形の美しさが、絵を見る人の心に働きかける力を重視」したからだそうです。
テーマとしては、神々や英雄が描かれることが多いのですが、それと合わせて「曲の旋律の型、音色そのものを絵画化した『音色を絵にする』」ものもあるとか。そのほか「神々の愛の物語、人間の世界の愛など、愛のテーマの数々が絵画を彩った『愛の絵画』」も多いといいます。
そうしたことを頭に入れながら……今回はトーハクに展示されていたインド細密画を改めて見ていきます。
■ヒンドゥー教の神「クリシュナ」
現在トーハクに展示されているインド細密画は、クリシュナというヒンドゥー教の神さまを追っています。このクリシュナは、聖典『バーガヴァタ・プラーナ』では無敵の神さまでありつつ、人間くさい一面が描かれています。この「人間くさい」というのがポイントですね。
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カンパニー派 インド 19世紀中頃
クリシュナという名前は、「黒い」「暗い」「濃い青の」「皆を引きつける」を意味する、サンスクリット語の「クルシュナ」に由来します。そのため、クリシュナの肌の色は、黒や青に塗られてきたのです……とトーハクのブログに記されていますが、展示されている絵を見る限りでは、ほとんどが紫に近い色で描かれています。
《バターを盗もうとするクリシュナ(バーガヴァタ・プラーナ)》は、クリシュナの幼い頃を描いたもの。「召使いを踏み台にして、天井に吊るした壺の中からバターを盗もうとしている場面」だとしています。こうした「人間くさい」ところに親しみを感じ、人気を得たのかもしれません。ちょっと日本の神話に出てくる神さまと似ているのかも。
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■色水や色粉を掛けあうインドのホーリー祭り
インドには、太陽暦では3月にあたる、インド暦第11月の満月の日から2日感に渡って行なわれる「ホーリー(Holi)」という祭りがあるそうです。その祭りの様子を描いたのが、《ホーリーを祝うクリシュナと ゴーピーたち》。
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クリシュナがゴーピー(牛飼い女)や楽女たちに囲まれています。なんというか……ひたすらクリシュナが羨ましいですねw
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二人の女性が水鉄砲で色水を放って、クリシュナにかけている様子も描かれています。とにかく描かれているクリシュナと女性たちが、華やかです。
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画面上部には、こんもりとした丘……と思ったら、これは湖でしょうか……カモや白鳥のような鳥が細かく描かれています。
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■蓮の上に座るクリシュナ
横笛と一輪の花を持ったクリシュナが、蓮の花の上に座り、その左右に各1本の木と各1頭の牛が描かれる……というのが、クリシュナ絵のフォーマットの一つ。トーハクにも、同じような型の絵がいくつかあるようです。
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かつてクリシュナの父・ヴァスデーヴァは、カンサの魔の手から幼いクリシュナを守るために、クリシュナを抱いてヤムナー川を渡りました。そのヤムナー川のほとりに咲いていたのが、この絵に描かれている蓮なのだそうです。
■蓮と牛に愛されるクリシュナ
クリシュナが、また蓮の上で踊っています。今度の蓮は少しぺしゃんこ……持っている花は花瓶に活けられています。
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前項で見た絵にも、左右に牛がいましたが、これはビーカーネール派という一派が、よく描いた構図なのだそうです。
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それにしても細かく描かれています。しかも宝石などの一つ一つが厚塗りされていて、絵を越えた質感を感じます。またクリシュナの足元にも、なんでしょうね……ケシのような花などが、これまた葉の形状まで変えて描きこまれています。
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■色使いが素敵なインド細密画
《アシュヴァメーダの馬の手綱を取るクリシュナ》は、配色が素晴らしいなと感じました。こういう絵に、ピカソやマティスは触れていたのかもなぁと思わずにはいられません。
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タイトルにある「アシュヴァメーダ」とは、馬の供犠祭のことなのだそうです。解説には「馬は頭や頸、背などが白く塗られ、傘蓋がつけられるなど、供犠祭の様子がうかがわれます」とあるので、実際に、馬をこうした色に塗っていたのでしょうか。
■ホッケーで遊ぶクリシュナ
クリシュナについて書かれた聖典が成立した古代に、既にホッケーがあったのでしょうか? 《ホッケーに興じるクリシュナとゴーパー》では、クリシュナがゴーパー(牛飼い)たちとホッケーをして楽しんでいる様子が描かれています。
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解説には「黄色いパンツをはく男性は兄のバララーマです」とサラッと書かれていますけど……左上の、よく見れば冠をかぶった男性がいますね。
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解説には「クリシュナが赤く四角い背景によって、ひときわ目立っています」と記されていますが……この赤い四角のエリアは、単にクリシュナを目立たせるためのものなんでしょうか……ホッケーのゴールなのかと思いました……。
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インド細密画の解説パネルを読むと、読みにくいカタカナの固有名詞が多くて……正直、読むのが苦手で、読んでも速攻で記憶から抜けていく感じだったのですが、今回は、ほんの少しだけですが、インドの神話の世界に触れられた気がしました。引き続き、ゆっくりとインド細密画を見ていきたいと思います。
なお、今回のトーハクでの、これらの細密画の展示は、2023年11月19日(日)までです。その翌週からは、また少し異なるインド細密画が展開されるはず……このエリアは必ずインド細密画なので。
■おまけ:織物
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