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かわいい根付から、コワかわいい根付まで揃った高円宮コレクション @東京国立博物館
東京国立博物館(トーハク)の本館2階にある、高円宮の根付コレクションが展示替えされされたので、チラッと見てきました。現在の展示は、来年……2024年1月21日まで見られます。ただし12月5日~12月24日までは、本館2階は、展示環境整備のため閉室されるので注意が必要です。
今回も、個人的に「これはいいな」と思ったものを写真に撮ってきたのですが、今見ると、どれもこれも「かわいいな」と思えるものばかりでした。ところどころ作品名とタイトルを記録しておらず、作者の方々には本当に申し訳ないなと思っているので、後日、調べて改めて追記していきたいと思います。なお、今回のラインナップは、下記公式サイトで見られます。
さっそく「なにこれかわいい!」って、中年男のわたしでもキュンッとしてしまった、阪井正美さんの《狸》さんです。1987年に製作されたもので、英名も《Tanuki》です。
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根付の高さは3〜4cmほどでしょうか……いずれにしても5cmはないと思います。そんな小さな小さな根付に、細かく細かく狸の質感が彫り込まれています。キョトンとした表情がなんとも言えませんが、何か酒壺のようなものを抱えていますね。この酒壺をかっぱらって、バレてしまった瞬間でしょうかw いま調べてみたら、NHKの『美の壺』で、過去に阪井正美さんを紹介していたようです。今度、読んでみようと思います。
小野里三昧さんによる《かっぱ》です。こちらも小さい作品ですが、かっぱが不気味かわいい感じで彫り出されています。その頭をよく見てみると、かっぱの皿の中で雀が水浴びしていますw 高円宮夫妻が集めたコレクションには、単に上手なだけでなくユーモアを加えた作品が多いような気がします。
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ちなみに小野里三昧さんも、前述したNHK『美の壺』で紹介されていました。また以前、《あっぷっぷ》という超絶かわいい男の子の根付をnoteしました……↓ こちらのサムネイルに表示されている作品です。
次は、一つ目オヤジではありませんが、一つ目の妖怪《夜行さん》です。以前も《子犬》という、かわいらしい作品をnoteに載せたことがありましたが、作者は根付彫刻師の山田洋治さんです。……なのですが、ネットで調べても、ほかの作品や経歴など、ほぼ何も分かりませんでした。ググると、どうしても映画監督の山田洋次監督が出てきてしまうんですよね……。しかも作品名が《夜行さん》ですから……夜行バスとか電車とかに邪魔されてしまいます。
唯一分かったのは、同氏が当初はサラリーマンだったらしいこと。そしてサラリーマンをしながら、おそらく趣味で根付を作り始めたら沼ってしまい、根付師になられた……そんな経緯だったようです。
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そういえば現在、トーハクの特別展『やまと絵』では、《百鬼夜行絵巻》が展示されていますね……後期はどうだろ? 少なくとも前期には展示されていました。そこで同絵巻の全体を確認してみたのですが、一つ目の妖怪は見つけられませんでした。
ただ、そもそも「百鬼夜行」の「夜行」って何? っていうところから調べていくと、まぁ「百の鬼が夜中に行列して歩き回る」ということなのですが、特に四国では、節分や大晦日などのほかに「夜行日」というのがあり、その夜には「夜行さん」が首のない馬に乗って道を徘徊するんだそうです。ネットで調べると、Wikipediaにも記されているのですが、一様に「夜行さんに出遭うと蹴ころされるといって、その日は家の中で慎んでいた。 昔は百鬼夜行日といった(『拾芥抄』)」とあります。
そして、辿っていくと……水木しげるさんに辿り着きました。
わたしも人並みには『ゲゲゲの鬼太郎』などを見てきましたが、その水木さんが「夜行さん」を描いていたとは知りませんでした。その水木さんの「夜行さん」が下の絵になります。
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もう少しキレイな絵が下のサイトに掲載されているので、ご興味があれば見てください。基本は上の写真と同じですけれど、背景などがあって、よりイメージしやすいです。
結局、色々と調べて見たものの妖怪の《夜行さん》についても、作者の山田洋治についても、いまひとつよく分からずに時間が過ぎてしまいました。また機会を作って調べ直したいと思います。
そして、次の根付に関しても、この強烈な造形にもビビりましたが、その作者の名前……号? の名前にもびっくりしました。「馬糞山馬六」と記されています。どう読むのでしょう……馬糞ヶ岳(ばふんがたけ)という山が山口県にあるそうなので、「ばふんやま うまろく」でしょうか? この馬糞山さん……奥田浩堂としての方が名が知られているようで、1940年のお生まれで、根付に限らず、彫刻、象牙、漆工芸などはもちろん、そもそものスタートは日本画家ということ。すごく多才な方なんですね。
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《大王の客 骸骨》馬糞山馬六(奥田浩堂)作・平成6年(1994)
はちまきをした骸骨が三味線をひいています。これも何か古典的な画題なんでしょうかね。
次は木村静さんの《子雀たち》。以前も《子雀》という木村さんの作品を紹介しましたが、先月までも《寒雀》という作品が展示されていたようですが、わたしは気が付きませんでした。そして今回は、複数の子雀です。こちらは何度か見たことがあるような気がするのですが、巣の中で子供の雀たちが、親鳥を待っている様子が……一羽ごとに異なる、幸せそうな表情が素晴らしいです。
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次は、今回唯一……あまりかわいさの感じられない……東声方(あずま せいほう)さんの《還城楽》です。ただ、ものすごい緻密な彫りで、そのまま動き出しそうな迫力です。
以前、東声方さんの《仙人と唐子》という作品をnoteしていますが、やはりこの方は間違いなく超絶技巧の持ち主ですね……すばらしいです。
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Wikipediaによれば、『還城楽(げんじょうがく)』とは、雅楽の唐楽の曲名の一つで、見蛇楽(げんじゃがく)・還京楽ともいう……のだそうです。また、ストーリーがあって「由来としては、唐の玄宗が韋皇后を誅して、夜半に城に帰還する姿を舞楽にしたものとも、蛇を好んで食べる胡国の人が蛇を見つけて喜んだ様を舞にしたものとも伝えられている」そうです。よく分かりませんが、下のX(旧ツイッター)の投稿を読むと、「蛇をとっつかまえて喜びの舞をしている」というのが一般的なもののようにも思われます。
桑名・六華苑・春の舞楽
— 下戸の酒呑み (@xuanwu_jp) May 14, 2015
還城楽・左方/裲襠装束
唐楽/走舞/頬と顎の動く恐ろしい顔の面に鉢を持った舞人が、蛇を見つけて飛び上がって喜び、蛇を左手で捕らえて舞う。 pic.twitter.com/hQrwQqAeqs
改めて東声方(あずま せいほう)さんの根付《還城楽》を見ると、蛇は……見られますか? 鏡が置いてあるので、もしかすると根付の背後の方に彫られているのでしょうか? 次に行った時には、背中の方にも注目したいと思います。
東声方さんは、日本象牙彫刻会の会長を務められていたそうですが、次の駒田柳之さんは、国際根付彫刻会の会長を務められた……というか同会の設立者のようですね。女性を彫らしたら右に出る者がいない……という感じの巨匠……今年89歳の現役だそうです。詳細は「根付の香柳園」
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すばらしいなと思って写真を撮ったのですが、白い部分が多いからか、カメラの露出がうまく設定できませんでした……残念……。
今回わかったのは、高円宮ご夫妻は、同じ作者の作品をいくつもコレクションしているということ。トーハクの高円宮コレクションは、同館の他の部屋と異なり、今ひとつ企画性に乏しいのですが……それが逆に面白い面もありますが……機会があれば、作者別に並べてみてほしいなとも思います。
<関連note>
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