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水墨画家・雪舟の凄さを東京国立博物館で探ってきました
数週間前に東京国立博物館で開催されている特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』を見に行きました。展示品の半分は国宝という贅沢な展示ラインナップなので、「もう、素晴らしいの一言でした!」と言いたいところなのですが……わたし……いまひとつ美術に疎いため、そんなに高揚しなかった……というのが正直なところです。
なかでも、雪舟等楊の作品については、前述の特別展で、閉館時間のギリギリに誰もいなくなった後に、作品の目の前に陣取って、ジ〜ッと見つめました。「君のどこが評価されて、国宝にまで上り詰めたのか?」と問いかけながらです。でも分かりませんでした。
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わたしが行った時には、こちらが展示されていました
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今は、こちらが展示されているかもしれません
その後も、「雪舟 すごいところ」「雪舟 国宝の理由」のようにGoogleで検索しては、その理由を探りました。それでも、いま一つピンッときませんでした。
何がすごいのか? が分からないと、どんどん知りたくなってきます。なんと言っても、雪舟等楊さんは、6点も、国宝に指定されているのです。「雪舟等楊筆だよん」と確証されれば、かなりの高確率で国宝に指定されるということです。そこまですごいのか? と気になってしまうじゃないですか。
そんな中、過去にトーハクで見てきた雪舟等楊の作品の中で、一つ「これは!」と思えるようなものがあったことを思い出しました。『四季花鳥図屏風』です。これも“伝”雪舟等楊筆なので、たしかに雪舟等楊さんが描いたものかは分かりません。でも、そうなんでしょう……きっと。
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こちらは素人のわたしでも、すごさが分かります。まずは屏風ということで、チマチマした感じはしません。右隻には竹林が、左隻にはガッシリとした松が、それぞれドンッドンッと描かれています。
もうこれだけで構図としては十分ではないかと思います。でも今作ではさらに、右隻には鶴が、左隻には鴨を描き、見る人の視線を釘付けにします。
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冒頭で貼付した国宝の『秋冬山水図』や『破墨山水図』とは、全く印象の異なる構図です。前者の“静”に対して、後者は“動”。前者には“生命感”がないように感じますが(あくまでわたしは…)、後者には“生命力”がみなぎっている気がします。
そのため『四季花鳥図屏風』については、「本当に同じ雪舟等楊が描いたの?」と、疑いたくなります。実際に雪舟等楊が描いたと伝えられているだけなので、もしかすると実際には後の狩野派や琳派の絵師が描いた……そう言われても、不思議ではありません。
トーハクにある『四季花鳥図屏風』について、どれだけ雪舟等楊の特徴を示しているのかは、わたしには分かりません。ただ、これは単純に、素晴らしい作品だな、と感じられるんですよね。
■もう一つの"伝"雪舟筆
現在、トーハクにはもう一つの“伝”雪舟等楊筆の作品が展示されています。
室町時代に生きた雪舟は、中国地方の大内氏に仕えていました。その彼が、48歳から50歳にかけて、当時、明だった中国への外交使節に随行し、寧波と北京の間を往復したそうです。
その際に雪舟が、北京からの帰路に見た風景を描いたとされるのが『中国真景図巻』です。京都国立博物館にも同様の図様の『唐土勝景図巻』があるそうなので、船旅(?)を思い出しては雪舟が何度も描いたのか、もしくは雪舟の絵を見て、誰かほかの人が描いたのかもしれません。
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この“伝”雪舟等楊筆の『中国真景図巻』は、複数回、見に行きました。雪舟のすごさとは「なんなんだ? なんなんだ?」と思いながら、じっくり見ました("伝"だからなのか、足を留める人が少ないので、じっくり見られます)。
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『中国真景図巻』についても、それほど感銘は受けませんでした。それが確実に「雪舟筆」と、雪舟の真筆だと断定されたとしても、わたしには、すごいなとは思えないと思います。
ただし、旅情を感じられる、わたし好みの絵ではあります。
このトーハクの『中国真景図巻』や京博の『唐土勝景図巻』が、どれだけオリジナリティに溢れたものなのか、わたしは知りません。同時代に、旅で見た様子を、同じように絵巻にして描いた人がいたのかどうか……もしくは、雪舟等楊がはじめてこのように描いたのか。
ただ最近見た葛飾北斎の『隅田川両岸景色図巻』(すみだ北斎美術館蔵)や、横山大観や下村観山、今村紫紅、下村観山などの名だたる明治大正期の絵師が共作した『東海道五十三次絵巻』(トーハク蔵)などは、もしかすると、伝雪舟筆の『中国真景図巻』にインスパイアされた作品なのかもなと思いました。
そうであれば、やはり雪舟が果たした役割は大きかったんだろうと思います。雪舟作品を高く評価したという狩野派とか長谷川等伯などの絵も、すごいですしね。
雪舟……すごいかも……。
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