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乳酸発酵 -発酵の基本知識-⑱
乳酸発酵とは
乳酸菌が嫌気的条件下で糖類を分解し、乳酸を生成する発酵のことを「乳酸発酵」といいます。
乳酸菌が生成した乳酸は、食材のpH値を下げ、酸性に変えることでバリア機能を果たし、他の菌の侵入を防ぐことで乳酸菌だけが繁殖できる環境を作り上げます。
雑菌も含め、他の菌の繁殖を防ぐために、乳酸菌のエサがあり続ける限り、乳酸発酵した食物は腐敗しません。
ただし、乳酸菌の特徴として、自身の生成する酸でやがて死滅するため、乳酸菌が生き続けることができなくなるとその食物は腐敗するか、酵母菌が住みつくことでアルコール発酵へと移行します。
乳酸菌にはさまざまな種類があり、耐塩性の乳酸菌も存在します。
耐塩性の乳酸菌は主に漬物などに用いられ、塩の防腐効果も相まって、食品の長期保存が可能となります。
乳酸発酵は保存性が高い発酵形式であることから、古くから食品の保存性を高めるために利用されてきました。
また、多くの発酵食品のスターター的役割を担い、そこから様々な発酵食品へのバトンが受け継がれていきます。
自家製の甘酒などを長期間保存しておくと酸味が生じたり、糖化発酵の過程で低温で長時間発酵させた場合、腐敗臭はせずとも酸味が出ている場合などは、過発酵による乳酸発酵の可能性があります。
その場合は、捨てずにサワードリンクやスムージー、ドレッシングなどに利用するとよいでしょう。
ただし、腐敗かそうでないかの見極めには十分注意する必要があります。
乳酸発酵による主な発酵食品
乳酸菌を主とする発酵食品
ヨーグルト、発酵バター、魚糠漬け、熟鮓、キムチ、野沢菜漬、メンマ、久寿餅など他の微生物との共生発酵食品
日本酒、ウイスキー、味噌、醤油、チーズ、ぬか漬けなど
乳酸発酵と乳糖不耐症
牛乳には「乳糖」という成分が含まれています。
ヒトは体内に持つ「乳糖分解酵素」によって、ブドウ糖とガラクトースに分解し、消化吸収します。
しかしながら、一般的にアジア人を中心に、アフリカ人なども含め「乳糖不耐症」といい、小腸での「ラクターゼ」という乳糖を分解する酵素の働きに問題があるか、少ない人が多くみられ、消化できずに腸内に乳糖が残ってしまうことで下痢症状などの異変を起こしてしまう人が少なくありません。
よく「牛乳を飲むとお腹がごろごろする」という方はこれに該当します。
これらの症状はアレルギーとは全く異なる性質のため、分けて考える必要があります。
もともと、日本人などの民族は、食文化において牛乳を摂取することがありませんでした。
それが乳酸発酵したチーズなどでは、発酵により乳糖が分解されているため、乳糖不耐症の人でも消化吸収しやすい、という利点があります。
同じようにヨーグルトでも同様の事がいえます。
ヨーグルトやチーズなどには乳酸菌自体がもつ、乳糖分解酵素が含まれるために、腸内の補助的な役割として、腸管に補給するのは効果的だと乳糖不耐症への対処として存在しています。
ただし、先天的なものや、遅発性のもの、後天性のもの、年齢的なことが原因のものなどではそれぞれに対処方が異なることに注意が必要です。
そのほか、アレルギー同様にガラクトース血症などでも、対処法が異なるため、深刻な場合を含め、かかりつけの医師への相談は不可欠です。