ビバ!! 春の情景(シーン)/連載エッセイ vol.56
※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.58(2010年・第3号)」掲載(原文ママ)。
桜前線が、ここ数年よりかなり遅いペースで通り過ぎてから、はや数週間。やっと自信を持って『春到来』といえる季節がやってきた。
というのも、我が郷土・岩手では、桜が咲いたとしても、軽々しく『春が来た~!!』などと浮かれる訳にはいかないからだ。
そう、開花宣言後に霜がおりる事はざらで、下手をすると雪が舞う事もある。
思えば今から十数年前、期待に胸溢れる大学新入生だった私は、開花し始めの桜の樹の下で学科の先輩達が催してくれる『新入生歓迎コンパ』に自転車で喜び勇み駆けつけた所、ピンクの花弁を霞ませる勢いで降り始めた『春のドカ雪』にカウンターパンチを浴び、集合先の掲示板に張り出された『中止通告』の前で、まさに燃え尽きた『あしたのジョー』ばりに真っ白になって佇んだ事を昨日の事の様に思い出す…。
(結局
自分達が主役の『新歓コンパ』が流れた
我々の学年が
翌年新入生を向かい入れる側として
幹事になった際は
ハナから『屋外開催』を捨て
『学生食堂』を借り切って開催するという
少々味気ない仕切りとなった。
その内の若干名が
昨年の憂さを晴らそうと
主役そこのけで飲みまくり
終了間際には『あしたのジョー』ばりに
真っ白く燃え尽きていたのは
酒飲みの性である。)
とは言っても、『桜の開花』はその地域に住む人々にとって、ある程度の『春到来』の統一基準となり得るが、我々雪国に住まう人間にとって、気象台の宣言などに頼らず、各々の経験と直感をもって季節の変わり目を早急に察知し、行動を起こさなければならない場合がある。
それが年に2回の『タイヤ交換』である。
ただ、夏タイヤから冬タイヤに切り替えるタイミングは比較的簡単だ。
仮に少し積もる位の降雪があっても、余程の真夜中早朝でない限り、いきなり道路が凍結する事はないので、適当なタイミングを見計らって交換すればよい。
問題は逆のパターンである。
岩手が如何に雪国といえども、3月半ばを過ぎれば、そうそう道路に積雪する事はない。
ところが時に前述の『春のドカ雪』が突如襲来する場合があるので、おいそれと張り切ってタイヤ交換をすれば、特に大きな建物の影になっている路面に潜む雪面で、思わぬ『ハンドルジャック』を被る事もある。
(そんな時、おしりのある箇所が
これ以上ない位に窄まるのは言うまでもない…
キュ~~!!)
だからと言って、いつまでも乾いた路面を走らせれば、折角の冬タイヤの劣化は進む。
この交換のタイミングを図る心理戦に、毎年アンニュイな気分にさせられている雪国ドライバーは案外多いだろう。
しかし私はここで、敢えて提言したい…。
『夏タイヤへの交換はお早めに!!』と…!!
これは、ドライバー自身の精神安定の為でも、冬タイヤの無駄な磨耗防止の為でもない。
周りへの『気遣い』の為なのだ!!
そう、あなたは無意識の内に、周囲を傷つける『暴君』へと化しているかもしれない…。
(そして、いよいよ本題突入!!
相変わらずの前置きの長さは
私の傷心っぷりに免じて許して頂きたい…。
そう…今回も…アタクシ被害者デス!!!!)
『事件』はある爽やかな春の朝に起きた。
その日、私はいつものように自宅からクリニックへ向けて、主要国道を車で直走っていた。
数週間前に西日本で満開の花見を楽しんだものの、岩手ではまだまだ蕾が膨らむ気配すらない。
しかしながら空は抜ける様な快晴で、ガラス越しに臨む木々は、春の香りを湛えて軽く揺れていた。
と、その時…。
『ビバシーーン!!!!』
聞いた事もない鋭い炸裂音が車内に響いた!!
『何かが車体に衝突したのか!?』
私は急いで、フロントガラス、ボンネット、バックミラーに目を配る…。
どうやら異常はない様子。
愛車は特に変わった様子もなく、快調にエンジン音を轟かせている。
『気のせいか??』
そしてクリニックに到着し、患者さんと応対していく内に、私はその朝の出来事を忘れてしまうのだった…。
数日後。
その日は『姿勢セラピスト』募集の説明会を開催する為、後部座席にパネルや模型、助手席には我が院のアイドル、CA(カイロプラクティック・アシスタント)のM女史を乗せてクリニックを出発した。
車内は終始和やかな調子で、その日出会うかもしれない未来のスタッフの話で盛り上がっていた。
すると突然、M女史が口をつぐみ、怪訝そうな表情で空を見上げた後、フロントガラスの左端の際を指差し呟いた。
『コレなんでしょう??』
その方向へ視線を運ぶ私…。
照りつける太陽光がナニかに乱反射する…。
そして私はコトの全てを把握するのである…。
『のぉぉぉぉ~!!!!
ほ…ほじれてる…』
懸命な読者の皆様は、私の愛車に起こった悲劇がもうお分かりであろう。
冬場使用するスタッドレスタイヤは、雪を噛み水を弾く為に、夏タイヤに比べて細かな溝が多くそして柔らかい。
そのタイヤで春先の埃っぽい道路を走ると、小石が溝にはまり込む事が多々あり、しかも高速走行した弾みでその小石が勢いよく弾き出され、後続車のガラスやボディーに損傷を与えることが『稀に』起こる。
その『稀』が起こったのだ!!
たかが小石が付けた2cm四方の小さな傷と侮ることなかれ、昼夜の寒暖の差が激しい、ちょうど今時分の岩手の空の下で放置すると、その膨張収縮作用でフロントガラス全面がひび割れ破損してしまう。
私は動揺する心を必死で鎮め、震える指でカーディーラーに電話したのだった…。
数日後。若干傷跡が残ったものの、なんとか全取替えを免れたフロントガラスから眺める空は突き抜けるような快晴。
『今日もいい一日になりそうだ!!』
クリニックへ続く主要国道で、帰ってきたばかりの愛車のアクセルを強く踏み込んだ、その次の瞬間…。
『ビバシーーン!!!!』…。
敢えてもう1度提言しよう…。
『夏タイヤへの交換はお早めに!!』
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