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五里霧中のち暗中模索/連載エッセイ vol.119

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「姿勢ッコくらぶ通信 vol.121(2020年・第6号)」掲載(原文ママ)。

人類近現代史上の「転換点」として、間違いなく後世に語り継がれるであろう2020年が、間もなく終わろうとしている。
3年後、5年後、10年後……この年を振り返る時、人は「激動の」という枕詞を付けるかもしれない。

しかし、今を生きる我々にとって、現在の印象はどうであろう。

少なくとも私自身としては……「ぬるぬると」月日が経過している感覚がある。
それはつまり、人生の「定点観測カメラ」たる各種イベントが中止に追い込まれ、仕事の「メトロノーム」たる国内外への出張が叶わない状況ゆえ、自身の「現在位置」を客観的に把握できず、どこか地に足がついていないからなのかもしれない。

果たして自分は、前に進めているのだろうか。
右へ曲がっているのか、左へ折れているのか、後戻りしているのか、立ち止まっているのか……。

さて先日、達増拓也・岩手県知事と久々に面談する機会を得た。約7年ぶりとなる。

知事との面識は、ありがたいことに意外と古く、氏の衆議院議員時代に遡る。

仲介してくれたのは、当時、代議士秘書を務めていた木戸口英司・現参議院議員。

木戸口さん(敢えて「普段呼び」で失礼!!)は、当組合・浦田理事の20年来のお客様であり、良き相談相手。
我々の業界制度化の活動の一環として、東京の国会議員会館で「体験会」を開催した際、達増「議員」にお声かけいただいたのが始まりであった。

その後、事務所を訪問し、この業界の現状と、我々が目指す制度化の方向性を説明し、発足したばかりの「国際カイロプラクティック議員連盟」へ、当時の野党議員としては唯一ご参加いただくなど、当初から我々の活動に理解を示し、またお客様としても私の店舗へ何度も足を運んでくれたりもした。

知事就任後は、議員時代のように定期的にお会いすることが、なかなかできなくはなったが、それでも前回は知事室に招いてくださり、私の拙い報告に耳を傾け、適切なアドバイスをくださるなど、か細くはあるが関係は続いていた。

いつぞやは、盛岡城跡公園で初めて開催された音楽フェスで、祝辞を終えた知事が壇上から降りるなり、ロックな私服姿で潜入していた私のもとにスタスタと駆け寄り、「今日は……カッコイイ格好ですねぇ!!」とワザワザ声をかけてくださり、周囲をザワザワさせた出来事も、今では佳き思い出である。

(突然駆け出す知事……その先にはロックな野郎……慌てふためくお付きの方々の表情が今でも……!!笑)

今回の訪問も、きっかけは横沢高徳・参議院議員の秘書が、別件で浦田理事の店舗を訪問した際、定期開催している県姿勢調整師会主催の講演会の話題となり、前もって手続きすれば、知事からの祝電が貰えるかもしれないという話に(知事ご本人とその場で電話しつつ)なり、それであれば久々に訪問してお話ししようとの流れになり、木戸口さんとも相談したうえでのセッティングと相成った。

まっこと、人のご縁に感謝である。

しかしながら、お忙しい知事のスケジュールを縫って、頂戴できた時間が「20分」。

業界の制度化へ向けて、この7年間で起きたことと、今後の展望を、短時間で分かりやすくお伝えすべく、訪問の数日前から、連夜の睡眠2~3時間でプレゼン資料を作成。

当日は朝イチで床屋さんへ行き、ビシッと散髪。
まぁ……サイドとバックを刈り上げるバリカンの気合が入りすぎて、仕上がったヘアスタイルが、どこかの「将軍様」のようになってしまったのは……ご愛敬である。

県庁到着後、秘書の方に通されたのは、ソーシャルディスタンスが確保できる「応接室」。
TVニュースなどでよく観る、大きな楕円形の机のある「あの部屋」である。

そして約束の時間通りに、超人気アニメの主人公をオマージュしたであろう、緑色のネクタイを締めた知事が颯爽と入室。
全員と気さくに名刺交換してくださった後、いよいよ「本番」開始!!

私が知事にお伝えしたことは、大きく分けて3つ。

1つ目は、「国内の徒手療法業界の現状」について。

制度化されていないことによって、未だに手技事故が多発していることや、それを打破すべく、業界全体を包括する「徒手療法師」制度がスタートしたことを報告。

2つ目が、「姿勢科学/姿勢調整の確立」について。

姿勢科学の国内大学における教育カリキュラム化の達成や、それに基づく全国姿勢調整師会の設立について報告。
この時点で、残り時間10分。
いいペースである。

そして1番伝えたかったのが3つ目、「岩手での全国に先駆けた活動」について。

全国で唯一「一般読者を対象とした組合通信(当通信)」を定期発行、全国で初めて組合内に「姿勢調整師会」を設立、同じく全国で初めて「姿勢調整師会主催の一般対象大規模講演会」の立ち上げと定期開催などなど、田舎だからこそ、広く高いビジョンを持ち、でも一人一人と膝を突き合わせ地道に伝えていき、目指すは「みちのく郷土を姿勢医学の先進地域へ!!」という我々の活動ポリシーを、実績を交えて熱く語らせていただいた。

知事は時折、ご自身の理解を整理するための質問を交えつつ(頭のいい方は……質問の観点もやはり……頭がいいのである!!)、しっかりと話を聞いて下さり、我々の活動を理解激励し、案の定というと少々おかしいかもしれないが「岩手だからこそ」の活動を大いに笑顔で喜んでくださった。
我々にとっては、それが十分な「成果」であった。

面談終了後の記念撮影。

横に立つ知事が小声でボソリと呟いた。
「ハカセと記念撮影ですねぇ…。」

そういえば、確かに前回の訪問時は、博士号取得前だった。
見ていてくださるということは、それだけでありがたい……そしてまだまだ頑張れると実感した……。

このご時世、全世界的な「五里霧中」の状況に、足が竦んでしまいそうになる。
しかし進もうと思えば、その方角が何処を向いていようが「前」なのだ。

来たるべき年も、「暗中模索」でもがき続けよう……そう心に誓う私なのであった。


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