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旅券 de 了見/連載エッセイ vol.85

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.87(2015年・第2号)」掲載(原文ママ)。

突然ではあるが、読者の皆様は何冊パスポートを所有しておられるだろうか? 

いや勿論、件のブツは、『1人1冊』の発行が原則であるから、正確に言えば『お手持ちのモノは何冊目か?』というのが正しい質問になるのであろう。

ちなみにワタクシは現在、『3冊目』を使用中。

まぁ、普通の方は、使用中のモノが何冊目であるかなんて、普段は気にする必要もなく、古いモノは机の引き出しにでも保管して、改めて取り出す機会は多くないのかと思う。

しかしながらワタクシは『ある事情』により、国外へ出かける際は、その3冊全てを所持するようにしている事から、何気に過去のパスポートを見返す機会も多い。
そしてその行為は、何気に過去を振り返る行為として面白くもあるのだ。

最初のパスポートを発行したのは、大学生2年の二十歳の時。

1ページ目には、現在のワタクシを知る方であれば例外なく爆笑してしまうという『メガネ&一重マブタ』時代のトボケタ顔写真が鎮座する。

(その後、コンタクトレンズへ切り替えた際、もともと『一重半』だった瞼が、完全に二重瞼へ定着。
故に『お直し』ではない。
ちなみに現在は、極度の疲労時、『三重』や『四重』になる事も珍しくない…。)

この1冊目の『5年パスポート』を使用する機会は、2度ほどしかなかったものの、それが以後のワタクシの海外渡航事情へ大きな影響を及ぼす事となる。

この2回の使用時の行き先は、どちらもアメリカ領のグアム&サイパン。
そう、某地方TV局が長年に渡り主催していた、豪華客船で10日間ほどかけて、子ども達が彼の地へ向かうという企画に、学生ボランティアとして参加した時のものだ。

そして、その2回目の渡航時、あくまで現地の出入国管理局の事務的ミスにより、ワタクシ、その後、現地に滞在し続けていた扱いとなっていたらしく、所謂『オーバーステイ(滞在期限超過)』の『烙印』を合衆国のデータベースに刻まれてしまったのだ。

そして、その『誤った事実』が牙をむくのは、その5年後のLA国際空港であった…。

2冊目にして、初めての『10年パスポート』を作成したのは、教職を退き、今の仕事に就いてから2年目の時。
海外大学でのカイロプラクティック学位を取得するプログラムに参加した事がきっかけである。

この時期の印象深い思い出としては、アメリカ同時多発テロ発生から、わずか3ヵ月後に渡米した際の飛行機&空港の見事な閑散っぷりと、それを契機とした出入国管理の厳格化の影響であろうか、その翌年の渡米時、上記の『オーバーステイ問題』により、危うく『合衆国到着→即強制帰国』の憂き目に遭いそうになった事が挙げられる。

(前者は当通信第9号掲載・『ある晩、タクシードライバーと』、後者は第15号掲載・『ブルーラインズクラブへようこそ』の両エッセイ参照。)

つまりワタクシが海外渡航時、全てのパスポートを所持するのは、自らの出入国の清廉性を証明する為であり、事実、以降の渡米時は、ほぼ100%の確率で入国審査に引っかかり、別スペースの第2入国審査(通称:VIPルーム)へ回される為、ある意味、自衛必須の行いなのである…。
(えぇ…第2審査ゾーンで漂う緊張感ったら…!!)

そして、他の国へ渡航する際も…『超大国アメリカ』の影響が各地に及んでいるかもしれないという、根拠のない虞から、なんとなく全パスポートを携帯してしまうビビリなワタクシ…。

そう、このパスポート使用期間の後半から、合衆国以外への渡航もチラホラ発生し始め、最終的にカイロプラクティック学士号を取得した大学のあるオーストラリアや、世界カイロプラクティック連合(WFC)の世界大会へ初めて参加する為に訪れたカナダの出入国スタンプが見受けられる。

(ちなみに…カナダでも第2入国審査に回され、危うく乗継便へ乗り遅れそうになったエピソードは…初披露な『6年目の真実』である!!)

3冊目にして、初めての『IC内蔵パスポート』を作成したのは、今から5年前で、前パスポートの使用期限が切れる2ヶ月前の事。
ビザなし渡航をする場合、一定以上の『残り使用可能期間(数ヶ月単位)』が必要になるからである。

この、現在使用しているパスポートになってからも、毎年1回以上は渡米する為、相変わらず合衆国のスタンプは目立っているが(しかもヤツラは…ページの捲り順ではなく…とりあえず脈絡なく開いたページに『バスッ』とスタンプしやがるので…そういう意味でも…悪目立ちしやがる!!)、それを上回るペースでスタンプが増え続けているのが…お隣の韓国。

そう、カイロプラクティック修士号を取得するプログラムへ参加した事をきっかけに、現在でも年2~3回のペースで訪れている為である。

またそれ以外にも、2回目のWFC世界大会参加の際に訪れたブラジルやアルゼンチン…3回目のWFC世界大会で訪れた南アフリカ、ジンバブエ、ボツワナ…環太平洋地域のカイロプラクティック大学関係者が集まった会議へ参加し、英語でスピーチをする為に出掛けたマレーシア…等々、その多種多様なスタンプを眺めるだけでも、1つ1つの思い出が脳裏をよぎり、退屈する事がない。

(しかしながら…そのバラエティーに富んだスタンプのおかげで、帰国時の税関審査にて『お仕事は…ナニしてらっしゃいます??』などと訝しがられる事も…間々生じるのではあるが…!!)

我が国の平均寿命から換算すると、丁度『折り返し地点』を通過した頃合の今のワタクシが、丁度『スタンプページの半分』を使い切った今の『3代目パスポート』を改めて見返してみる…。

1回1回の渡航は、スケジュール的にも、時には経済的にも追い立てられるようにして、バタバタと消化してしまって…いつしか海外へ出掛ける事が『一大事』ではなくなってしまっているのだけれど…。

もしかすると…この世から旅立つ間際に…それまで手にしたパスポートを同じように見返して…『あの10年が1番、海外へ出掛けていた時期だったんだなぁ…』と思い返すかもしれない日々の、まさに『中間地点』にいる事実に今更ながら気づき、少々センチメンタルな気分になったりもする今日この頃である…。

さて今回、エッセイが何故にパスポートネタになったのかというと、つい先刻、海外航空券の予約を2つ程インターネットで手配したせいに他ならない。

この通信が発行される月から始まる新年度5ヶ月間で、都合5回の海外渡航を予定している。
とりあえず感傷に浸っている時間はなさそうである。

今はまず…前を向き…進め、進め、進め!!
(そして、その費用捻出の為に…稼げ、稼げ、稼げ!? ←えぇ…モチロン自腹ですが…ナニか??苦笑)


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