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ふるさと/連載エッセイ vol.4
※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.6(2001年8月)」掲載(原文ママ)。
「人には2種類ある。故郷をもつ人とそうでない人だ」とは誰の言葉だか忘れたが、もしそのような二元論が成り立つのなら、私は間違いなく前者だろう。
以前はそんなこと露にも思わなかった。
仕事柄、全国を飛び回ることが多いせいであろうか。
はたまた故郷を離れてだいぶたつからだろうか。不思議なものである。
私にとっての故郷の風景とは、市内を流れる北上川とその向こうにそびえ立つ岩手山だ。
余所から来た人間にたった1ヶ所だけ案内するとすれば、わたしは間違いなくその景色が見渡せる橋の上へと連れ出す。
きっとわたし以上に饒舌に故郷の魅力を語ってくれるだろう。
(余談であるが、わたしが関東以西の人前で話すときの「つかみネタ」は、「故郷の市役所の裏を流れる河には鮭が溯上します」というもので、これが案外うける。やはり持つべきものは故郷である。)
そんなわたしにとって幼い頃からあって当然の存在であった岩手山に初めて登ったのは案外遅く、大学生になってからであった。
きっかけは今となってはもう覚えていないが、とにかく急に思い立って、登山のガイドブックを買い込み、翌日のお盆の中日にたった1人で出発していた。
いま思えばまったく無謀な話である。
(またまた余談であるが、登山口に向かう途中で熊に遭遇した話も「つかみネタ」として使わせて頂いている。)
登山そのものはとてもハードで、息も絶え絶えに山頂に到着した。
そして天候の変化もあり、さっさと下山してしまった。
自分でも驚くほどあっさり終わってしまった初登頂後、わたしの足は自然といつもの橋の上に向かっていた。
そしていつもの風景を前にしたとたん、不意に目頭が熱くなった。
見慣れた風景にさっきまで自身が同化していたことに遅蒔きながら感動している自分がそこにいた。
わたしが故郷というものを意識したのはあの時が最初だったかもしれない。
その後、岩手山単独登山は、わたしの夏の恒例行事となった。
この夏、久々に岩手山の入山規制が解かれた。
今のわたしは山頂で何を思うのだろう。
橋の上で何を感じるのだろう。
楽しみである。
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