![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/136863559/rectangle_large_type_2_114f54d2ceff59d8534a6cc48d8275b4.jpeg?width=1200)
雨のベガスとオサレ侍/連載エッセイ vol.69
※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.71(2012年・第4号)」掲載(原文ママ)。
この通信表面にもあるように、もう半年程前の事になってしまうが、『ACC‐RAC』へ参加する為、3月の中旬、今年2回目となるラスベガスを訪れた。
何故ゆえ、この通信上でのご報告が、こんな遅いタイミングになったのかというと…折角の『海外ネタ』を被らせない為!!
他の組合員も参加した『海外研修ネタ』を、極力タイムラグなしで掲載しようとすると、どうしてもワタクシ個人レベルで海を渡った事柄は、後回しにせざるをえないのである。
そこんとこ…何分ご了承願いたい!!
さて、その『ACC‐RAC』とは、簡単に言えば、『アメリカのカイロプラクティック大学の教育や研究に関する会議』…といったトコロで、つまりは、『カイロ発祥の地であるアメリカのカイロ教育のトップ=世界のカイロ教育に影響を及ぼし得るトップ』が一堂に集まる会議である。
その内容は、現地へ到着してすぐ、開幕前夜の『レセプション』から、『真面目モード』全開!!
さ…さすがは『教育者』の集まり…。
翌朝8時から始まり、コチラも朝から『学者モード』全開な質問が飛び交う『オープニングセッション』が終わったら、あとは2日間、大中小のセミナールームに分かれて、『教育』や『臨床』、『スポーツ』など、様々なテーマに応じたセッション開始!!
現役の学生(おそらく成績優秀者)がプレゼンするモノもあれば、関係者の激論が飛び交い、とてもお邪魔できる雰囲気ではないモノもあり、賑々しい事この上なし!!
全体的な印象としては、パーカーセミナーやWFC世界大会より、『お祭り的要素』が少なく、『実務的な場』と言った感じ。
しかしながら、実は何より重要なのが、朝昼晩の『お食事ミーティング』。
『やった!! 食事だ!! 気を抜ける!!』…と安心したのも束の間、こういう時のご挨拶&交渉が実に重要なのである…。
いやはや、沢山の『大物』の方々との出会いは貴重でありつつ…正直やはり緊張の連続でもあった。
ただ中には、『キミは昨年、リオデジャネイロで歌っていた青年だね!!』…と、ワタクシの地球の裏側での『勇姿』をご記憶されていた方もチラホラ…やはり『芸は身を助く』である!!(通信64号掲載:『歌謡ヘビメタ☆ジャポネ~ゼ』参照)
上記のスケジュールに合わせて、連日深夜に及ぶ『個別ミーティング』をこなし、ホテルに缶詰めのまま、気がつけば、帰国前日。
えぇ…確かにラスベガスの『メガリゾートホテル』は、滞在しているだけで、楽しみは数多くあるもの…。
しかしながら…会議会場となったそのホテルは…僅か2ヶ月前にも利用したばかりの、ある種『定宿』!!
売店の位置は細かく把握しており、使い勝手は申し分ないものの、如何せん…自分が海外にいるんだという『新鮮味』が足りない…。
そして何より…好みのブランドのショップが、そこのショッピングモールには入っていない事が…『オサレ番長』的に…堪え難し!!
会議もほぼ終盤…。
大々的な『クロージングセッション』もないようで、自分の用事を済ませた主要な参加者は既に帰りの途に就き、会場は人もまばら…。
翌早朝には、日本へ向けて旅立たなければならない…。
しかもその足で、そのまま関西出張…。
部屋から窓の外を伺う…。
この街には珍しく雨模様…。
今から出掛けても、歩き回れる時間は、ギリギリ2~3時間…。
僅か2ヶ月前の滞在時には、十分過ぎるほどの『オサレアイテム』を既に購入済み…。
しかも今はセール時期ではない…。
そう…これまでの…そしてこれからのハードスケジュールを鑑みて、何も無理して外出する要素は1つもないのである…。
もし自分が…『オサレ番長』でないならば…!!!!
小雨交じりのストリップ(大通り)へ飛び出す。
それでも街は、『3月の狂乱(March Madness)』と呼ばれる『男子大学バスケットボールトーナメント』と、『聖パトリック祝日』の影響で、これでもかと言わんばかりに人で溢れている。
しかし、怯んではいられない。
なにせ自分には時間がないのだ!!
お気に入りのイタリ~な革底靴をカツカツいわせ、人混みをすり抜け、通りを闊歩する。
第1の盲点…。
この街は雨に慣れていない。
その為、通りは『耐水仕様』になっておらず、結果として、雨の際は、非常に滑りやすい。
私は、そのイタリ~な靴が災いし、何度も足を取られる事になる。
第2の盲点…。
私は非常に速足である。
考え事をしながら歩くと、同行者が駆け足をしなければついてこられない程の速足である。
しかもこの時は、制限時間が非常に短い。
結果として、その速度をいつもの1.25倍に高めて歩く事になる。
第3の盲点…。
通りはいつも以上の群衆で溢れている。
私はそこをすり抜ける為、バスケットで培ったステップを駆使して進む。
岩手を旅立ってから、ゆっくり休ませる機会のなかった、その足部にかかる負担を度外視して。
最初は『違和感』程度だった。
昔、バスケットマンだった頃に痛めた左足首、アキレス腱が十分に伸びていないような気がする…。
しかし、それが『激痛』に変わるまで、さほど時間は要さなかった…!!
歩速を『通常モード』に落としてみる。
それでも、スリッピーな歩道に足を取られる度に『ギャッ!!』
…大柄な西洋人一団をかわす度に『ギャッ!!』
…遂には、足をつくだけで激痛が走る様になった…。
しかしそれでも、『ホテルにUターン』という選択は頭に浮かばない。
いや、仮に浮かんだとしても、それを見ようとしない。
何故ならワタクシは『番長』ダカラ!!
オサレの為なら、脚の1本や2本、くれてやらぁ!!
…結果として、雨の中、左足を引き摺りながら店頭に現れ、フレンドリーな店員さえ声を掛けられない悲壮な雰囲気を醸し出しながら、業者宜しく品揃えを一瞥し、気に入った品があれば黙々と試着をし、そして不敵に微笑みながら…
『I’ll take it!!(これ貰うよ)』
…と現金の高額紙幣をレジに置き、品物を受け取るや否や、また足を引き摺りつつ立ち去っていく…そんな怪しげなアジア人がベガスの街に出没する事となった。
その後ろ姿を見送った、ある店員はこう呟いたという……。
『He is a LAST-OSARE-SAMURAI…!!』
帰国後も暫くその左アキレス腱痛には悩まされた。
しかし、気分は実に晴れやかであった。
何故ならば、傍らには、彼の地で探し当てたお気に入りのスエ~ドなイタリ~靴があったから。
もちろん…その靴底は、雨に強いラバー製である事は…言うまでもない…。
☆筆者のプロフィールは、コチラ!!
☆連載エッセイの
「まとめページ(マガジン)」は、コチラ!!
※「姿勢調整の技術や理論を学んでみたい」
もしくは
「姿勢の講演を依頼したい」という方は
コチラまで
お気軽にお問合せください。