CDの人/連載エッセイ vol.8
※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.10(2002年4月)」掲載(原文ママ)。
「桜前線異常あり」ということで、今年は例年より「ソメイヨシノ」の開花が早まっており、各地の「桜まつり」がその対応に追われている様子を連日TVが伝えている。
しかし、そもそも桜を愛でること自体が目的であれば、その開花が多少早くとも何ら支障はないはず。
やはりみんなの心中は「花より団子の花見会」というところなのだろうか。
斯く言うわたしもご多分に漏れず「団子派」の人間であり、今回はそんな食い意地がもたらした素敵な体験を書かせて頂こうと思う。
このコーナーで何度も触れている通り、わたしたち矯正師は「研修会」などで全国を飛び回る。
患者さんにはよく「色々な所へ行けていいね」などと言われるが、日中はスケジュールが詰まっていて観光どころではなく、結果として楽しみは夜の食事のみとなる。
従ってよく足を運ぶ街には、それなりにお気に入りの「馴染みの店」ができてくる。
今回の話の発端となったお店は、中国地方の観光都市にある沖縄料理屋さんで、早い話、そこのお店のご家族と一緒に沖縄へ行き、患者さんをみることになったのである。
(このお店との出会いとここに至る経緯については、それこそエッセイが1本書けてしまう程のエピソードなので、ここでは割愛させて頂く。
本当に料理が美味しく、本州では珍しい泡盛が沢山置いてある、いいお店なのである。)
さて彼の地での出来事は、沖縄フリークのわたしにとって全てがウハウハであり、全てを語りたいところだが、紙面の都合上、ここで疲労するエピソードは1つに抑えよう。
(沖縄をよく知る料理人との旅行なので、全てが美味しく楽しかった。
特に「沖縄第一ホテル」での……ああ、イカンイカン!)
沖縄は音楽の島でもある。
その為、地元のミュージシャンが自分で経営するライブハウスが数多くある。
ところがその時はお正月の時期で、ほとんどの有名どころはTV出演や休暇の為にライブハウスを閉めていた。
「ああ、一度でいいから生で沖縄ミュージシャンのライブを観たかった……」と肩を落とすわたしを見かねて、駄目元で向かった某大物ミュージシャンのライブハウス……。
しかしそこで奇跡は起こったのである。
そのライブハウスに到着し車を横付ける。
どうやらライブは行われているようだ。
と、その時、建物の玄関から出てくる見覚えのある顔……。
そして沖縄料理屋のママさんが叫んだ。
「林賢さぁ~ん!お久しぶりで~す!」
ご存知の方も多いと思うが、その人こそ沖縄音楽界の重鎮、「りんけんバンド」のリーダー「照屋林賢さん」だったのである。
かねてからのファンであったわたしの記憶はその後、定かではない。
林賢さんやその奥さんでボーカルの知子さんを施術し、非常に喜ばれたことはうっすらと覚えている。
その場に居合わせた方から聞くところ、それから暫くわたしはこう呟いていたそうだ。
「CDの人だ……。CDの人だ……。」
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