永遠のメモリー/連載エッセイ vol.24
※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.26(2005年2月)」掲載(原文ママ)。
親愛なる読者の皆様、あけましておめでとうございます。
などと、ありきたりの文言を並べてみても実は現在、師走真只中。
東北人にとっては「爽やかさ」すら感じる早朝の東京でPCに向かっている訳で、新年の抱負なぞ思いつく筈もない。
まあ、今年(昨年!?)を振り返る真似事くらいはできそうなので、今回はそんな感じで。
今年は私にとってまさに「IT革命」の年であった。
信じられないかもしれないが、作業の場を完全にPCに移したのが今年に入ってからなのだ。
それまではどうしていたか?
そう、今では旧時代の遺物扱いされている「ワープロ」なる物を携帯していたのだ。
大学時代からの「愛機」を、エッチラオッチラ持ち歩き、打ち込み、印刷し、それを院のデスクトップで打ち直して送信する、という気の遠くなる様な作業を毎度毎度続けていた。
(10年働いたワープロにも拍手だが、私は基本的に「物持」が宜しい。
筆記用具入れには、中学時代より愛用の「折畳定規」なるものが未だに鎮
座している。
使われる事はめったにないのだが…。)
しかし週末の殆どを県外で過ごす事になった昨今、さすがにそれではまずいだろう、と仕事仲間が見るに見かねてノートパソコンを格安で宛がってくれた。
そうなると慣れというのは恐ろしいもので、何処に行くのもノートを持ち歩く様になってしまった。
挙句の果てには、こうしてファミレスで電源を入れ「デキる男」を気取ってしまう始末。
その姿、年を重ねてから遊びを覚えたチェリーボーイの如し、である。
そしてお約束の事件は突然起きた。
その日も中国地方のとあるホテルのロビーでノートを開いていた。
ここ数日かかりきりだった「事例研究論文」をやっとの事で纏め上げ、その出来栄えに我ながら悦に入る。
私は「モバイルかぶれ」に拍車を掛けた「ツール」の「フラッシュメモリー」にデータを保存し、論文発表会の打ち合わせをする為に会場へ急いだ。
「いい出来の論文が出来たよ。確認してくれ!!」
誇らしく仲間のPCにフラッシュメモリーを差し込み、データが呼び出されるのを待つ。
心の中では、こんな短い時間で書き上げた自分に対する「ビバ!オレ!!(昔こんなアイスありましたよね。30円の。)」の賛歌が激しく波打っていた。
しかし…。
いくら待っても、データが呼び出せない。
それどころか、メモリーを認識する事さえ出来ないのだ。
最初はそのPCとの相性が悪いのかと思い、他のもので試してみるも、その場にある5台全てで起動しないとなるとただ事ではない。
「原因不明のメモリークラッシュ」
パソコンに詳しい仲間にそう「診断」された私の心中には「バカ…オレ…」のレクイエムが鬱蒼と鳴り響いていた。
飛び去った数々のデータ達を羽ばたく天使に見立てて…。
アーメン。
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