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【毎日短歌】羅城門に啼く/松下隆一【書評】
なむあみだぶつなむあみだぶつなむあみだぶつ唱えれば満つ羅城門
こんにちは。ハカイさんです。
前に読んだ「春を待つ」が面白かったので、松下隆一さんの代表作「羅生門に啼く」を読ませていただきました。
「あらすじ」
親を知らずに育ち、殺人や悪事をして日銭を稼ぐ主人公イチは、役人に捕まり斬首されるところを市の聖空也上人に助けられる。
上人と行動するうちに回心し、以前に自身の手で殺した女の娘の面倒を見ることになるが、娘は身籠っていた。
親と子という関係自体を憎んでいたイチが、他人の子を育てる覚悟を決める。
「親と子の関係が、子の人生を左右する」という大きなテーマの中で、「不遇な運命の子でも、回心することができる」というメッセージが込められた作品。
ただし、回心するには欲を捨てて、自身の持ち得るものを手放し与える必要がある。邪な思いが湧いてきたらとにかく、なむあみだぶつを唱えろ。そうしたら心がなむあみだぶつで満ちていく。
これが空也上人の教えでした。
疫病や飢饉が蔓延していた平安の世においてそれは生半可なことではなく、悪事で得た泡銭で生きていたイチにとってはこれ以上のない苦行でした。しかし、修行を積むにつれて段々と適応していき、念仏を唱えれば極楽浄土に往生できるという信仰も篤くなっていきました。
そんなときに拾ったのがキク。かつて自身が殺めた女の娘でした。回心したイチは自身の犯した罪と目の前の娘を助けようとしている自身の状況に思い悩みます。
しかし、最後にはすべてを打ち明け、キクが命をかけて産み残した子供を育て上げる決意をするというお話。
ぶっちゃけて言うと設定がてんこ盛りと言うか、コテコテ過ぎないか?という感じはあります。以前殺した女の娘を拾うとかあり得る?
しかし、一応それらの設定が重なり合って大きなスケールの物語を織りなしてはいます。
さすが劇作家、物語を作るのがうまいです。
文体はイチ視点の関西弁で簡潔にまとめられていて、ぽんぽんと読み進めることができました。
のですが、空也上人やコテコテのストーリーに説教をされているみたいで読後感はそんなに良くなかったかな。
個人的には同著の「春を待つ」のほうが好きです。
だいぶネタバレしてしまってすみませんでした!
最後までお読みくださりありがとうございます!⭐