とっておき私の10冊
私はそれほど多くの本を読んでいるわけではありません。
そして、最近は物を増やしたくなくて、電子書籍を買うことがほとんどです。
先日、不要な本を処分したのですが、もしも10冊だけ手元に紙の本を残すとしたらどれだろうと考えました。
実家に置いたままの本もあるのですが、それは除外して、今手元にある本の中から10冊、選んでみました。
これは紙の本で残しておきたいと思った本たちです。
そうなると、詩歌や絵本や、装丁が好きな本が多くなりました。
とっておき私の10冊です。
まず1冊目は
幼い時からの大好きな絵本。
絶版らしいです。ニューファンドランドという大型でやんちゃな犬のローラが、子どもたちの危機を救うお話です。
とにかく表紙の絵が好きです。
大型犬にもたれて読書!憧れます。
そして、2~10冊めは現在も販売されています。順位はありません。
小川洋子『博士の愛した数式』
文体がとにかく好き。
家政婦の「私」と、息子のルート、記憶が80分しかもたない博士。清廉で静謐な、三人の関係性が心地良いです。
小説の方を最初に読みましたが、映画も好きです。
谷川俊太郎『はるかな国からやってきた』
多くの詩集から代表的な詩を集めた、文庫本サイズの小さな宝石のような本。表紙の銀河?も美しい。
谷川俊太郎さんの詩と意識的に初めて出会ったのは、教科書に載っていた「かなしみ」という詩です。
まさに、がーん!という衝撃。この本にも収められています。いやあ、教科書は読んでみるものですね。
他に、収められている詩で特に好きなのは
「沈黙」
「くり返す」
「生きる」
「芝生」
「みみをすます」
「魂のいちばんおいしいところ」
です。
『小川未明童話集』
童話25編が収録されています。
戦争を扱った「野ばら」が特に好きです。敵国の兵士同士である青年と老人の、穏やかな交流、戦争の愚かさ、かなしみを静かな筆致で描いています。
江國香織『つめたいよるに』
短編集です。
「デューク」が特に好きです。犬のデュークが死んだのち、「私」の前に現れた少年との不思議なお話。何度読んでも泣いてしまいます。
他に
「夏の少し前」
「桃子」
「いつか、ずっと昔」
「晴れた空の下で」
も好き。どれも少し不思議なお話です。
ハンス・ウィルヘルム『ずーっとずっとだいすきだよ』
絵本です。
犬のエルフィーと、「ぼく」のお話。
最後の頁の文章がすごく好きです。
だいすき!て、ちゃんと口に出して伝えたいです。
長田弘『世界はうつくしいと』
詩集。
日常の、何でもないことの内にある美しさ、尊さに気づかせてくれる詩集です。
特に好きな詩は
「窓のある物語」
「机のまえの時間」
「なくてはならないもの」
「世界はうつくしいと」
「大いなる、小さなものについて」
です。
長田弘『最初の質問』
絵本です。
大判で、いせひでこさんの絵が淡い色調ながら瑞々しく、本を開くと心が安らぎます。
手触りの良い紙質も、ゆったりした心持ちにしてくれます。
シンプルで、考えさせられる質問が重ねられていて、今の自分ならどう答えるか、時折り立ち止まって考えたい本です。
宮沢賢治詩集『永訣の朝』
銀色の表紙、ところどころに散りばめられた挿し絵が美しい詩集です。
本文の文字は黒ではなく、渋い茶色です。
色名を探してみましたが、錆利休(さびりきゅう)色というのが合っているかな?と思います。
「春と修羅」、「冬と銀河ステーション」、「雨ニモマケズ」などの詩も収められています。
「永訣の朝」などの、最愛の妹トシの死に際して書かれた一連の詩は、音読すると、より言葉の響きが胸に迫ります。
河野裕子『葦舟』
河野裕子さんの、生前最後の歌集です。
最期の歌を収めた『蝉声』も大切な本ですが、こちらを。
私が短歌をはじめようと思ったきっかけは、河野裕子さんの訃報を知らせる新聞記事でした。
そこには、最期の日々に詠まれた歌が何首か載っており、見入ってしまいました。その歌は『蝉声』に収められています。
短歌ってこんなに心を込められるものなのだ、私もつくってみたいと思いました。
『葦舟』は、『蝉声』の前に出された歌集です。
表紙の若竹色の文字、水滴のような光のような箔押しの美しい歌集です。
日常の中で、病と向き合い、日記のようにぽつぽつと詠まれた短歌。会話を書き留めたような歌もあります。
詠うことは生きることだったのだろうなと思います。
そのなかから数首を。
あなたには何から話さうタカサブラウ月が出るにはまだ少しある
乗り継ぎの電車待つ間の時間ほどのこの世の時間にゆき会ひし君
さやうなら きれいな言葉だ雨の間のメヒシバの茎を風が梳きゆく
陽に透きて今年も咲ける立葵わたしはわたしを憶えておかむ