なぜ「はいは一回」なのか
「はいは一回」
「返事は一回」
と言われて育った人は少なくないだろう。
私もそのひとりだ。
先日、「はい」を4回繰り返す人と話した。
「そんなに繰り返す?」耳の神経がひときわ過敏になった。
人は自分が我慢していること、気をつけていることを平気でやる人間に不満を抱く。
なぜ「はいは一回」なのか?
この機会に考えてみたい。
「あるある探検隊」を越えない故の違和感
社会人になってから、職場の上司が当たり前のように「はいはい」と返すのを耳にした。
(この人は「はいは一回」と言われてこなかったのだろうか?)
何せ「俺がルールだ」と背中に書いて印刷機の周りをせわしなく動き回っている人だ。
「○○さんならしょうがないよな、うん」
受け入れざるを得なかった。
疑問が再び湧いたのは、ある人との電話がきっかけだった。
彼女は相づちで「はい、はい、はい、はい」と繰り返したのだ。
返事で「はい」を4連発したのではない。
それでも相づちで4連発。
いっそ5回なら「あるある探検隊※なのかな?」と思えるのに。
※あるある探検隊…2000年代にブレークしたお笑い芸人「レギュラー」の持ちネタ。
「はい、はい、はいはいはい!」のかけ声から始まる。
松本君と西川君は置いておいて、相づちが「はい」4連発で、好感はまず覚えないだろう。
「そういう人だから仕方ない」と頭の中で処理する。
一方で、「面倒ならもう電話をかけてくるな」と腹の中に本音が渦巻いた。
本当の「二つ返事」をする人は誠実
「はい、はい」と返事を繰り返すことを「二つ返事」という。
「二つ返事で引き受ける」と聞いて、引き受けた側にどのような印象を抱くだろうか。
おおよそは「横柄な人」「一緒に仕事をしたくないタイプ」と、誰かの顔がよぎるのではないだろうか。
しかし、「二つ返事で引き受ける」の本来の意味はこうだ。
「はい、直ちに」。
たちまち誠実で仕事熱心な人格が浮かび上がった。
結論…言い方と立場の問題
私が辿り着いた結論はこうだった。
だからそういった言い方に聞こえない、一回だけの「はい」を強要する。
単に親なり、目上の人なりが自分の立場を守りたいが故の言い分なのかもしれない。
話を件の女性に戻す。
相づちの「はい」4回は、彼女なりの「分かるよ、分かるよ〜」という共感の表れだったのかもしれない。
自分なりに考え、彼女の言い方を別の角度で捉え直してみた。
「世の中には色んな人がいるんだよ」。
高校の担任の先生からかけられた言葉を、ふと思い出した。
※ヘッダー画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございます。