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風穴を塞ぐ貴方は

あと、3週間。

空気の抜けた私の心を塞げるのは世界で君だけ。

新しい町にも学校にも慣れてきて、一丁前に近道
なんかも覚えたけれど。

毎日STUTSのビートを聞いて登校するくらいに、
イケイケでルンルンな毎日なのだけれど。

最近、変なの。
夜になるとプスプスと空気が抜ける音がする。

どこに穴が空いているのか、分からないし、
もう、傷を塞いでくれる君もいないから。

※ ※ ※

「私と暮らしてから、毎日楽しいでしょ?」
去年、長い旅から帰ってきた彼女に、ふざけて
言ってみたことがある。

照れ笑いをしながらゆっくり頷いてくれたっけ。
だけど、本当は逆なのだと思う。

一人旅が好きで、夜中に手の込んだスイーツや、
角煮なんかを踊るように作る。

夜中に、カメラ片手にフラフラ散歩に行く。

奔放で、不器用で、脆くて、強くて、愛おしい。

そんな自由すぎる彼女の日常を横目で見ていると
自分の人生も案外悪くないかもって思えるんだ。

ねぇ、君のいない町は、酷くつまらないよ。

ノオ・スモキングとかいう変な張り紙の前を通る
度に、腹が捩れる程にケラケラ笑うこともない。

夜中にカルボナーラを食べても「共犯だね」って
一緒に罪を重ねて、微笑んでくれることもない。

狭く苦しいシングルベッドで寝ていても、朝に
私の恥ずかしい寝言報告会もない。

早く夏休みにならないかな。
待ちに待った2人暮らし、やっと再開できるね。

この一夏だけは、全部忘れて、互いの絆創膏を
貼り直し合おうね。

君だけが、私の風穴を知っているのだから。

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