道
「今日はこっちから帰ろうよ」
幼馴染のリンは、生粋の冒険家だった。
変化を嫌う私と、積極的になんでも挑戦するリン。
はたから見ると、正反対の2人に見えただろう。
近所に住んでおり、部活も習い事も一緒だった私達は、毎日一緒に登下校をしていた。
いつも新しい道を開拓し、突き進むリンは、私にはない所ばかりで、憧れの存在だった。
リンの選ぶ道は、どんな道でも輝いて見えたし、
少し険しい道でも、リンと一緒なら前に進める気がした。
中学を卒業し、私達は別々の高校へ進学した。
最寄りの駅が同じだった私達は、たまに時間を合わせ、地下鉄から家まで一緒に登下校をしていた。
最寄りの駅から家までは、ただの一本道で、入学したての私は退屈に感じていた。
しかし、冒険家のリンは違う。
「こっちの方が面白いんだよ」と、地下鉄の出口を変え、くねくねとした道を意気揚々と進んでいく。
やっぱり、リンは新しい道を見つける天才だったのだ。
大学生になり、リンは関東へ、私は九州へと引っ越した。
なかなか帰省の時期が被らなかった私達だったが、この夏に数年ぶりの再会を果たした。
小学校からの遊び場である“なかよし公園の錆びたブランコ”に乗りながら、ふとリンはつぶやいた。
「今、休学して、こっちに戻ってきてるんだよね」
こんなに元気のないリンを見たのは、何年ぶりだろう。
てっきり、東京で、大学生活を楽しんでいるのだと思い込んでいた。
リンがなぜ休学したのか、詳しく聞くのは、今じゃないと直感で思った。
そんな休学の理由よりも、リンが苦悩や葛藤の渦中にいた時、側にいられなかったことが、すごく、すごく悔しかった。
別の高校・大学へ進学していても、心のどこかで私達は同じ道を歩んでいる気でいた。
いつから、別れ道を歩んでいたのだろう。
今度帰省したら、リンに伝えたい。
「リン、一緒にまわり道しよう。そっちの方が、面白いよ」と。
知らないうちに全く違う道を歩んでいた私達。
“幼馴染だから”という理由だけで、なぜか同じ道を進んでいる気でいたのだ。
来年、私も休学をする。
彼女の手を取り、共に歩もう。
たとえ、別々の道を歩んでいたとしても、私はもう彼女を1人にしない。
今までも、これからも、私達は2人でひとつなのだから。