この手で掴めなかった幸せ、だけれども
「このカーブの線、どこが悪いか自分で分かる?」
「囲み製図なんてあり得ない。ドレーピングは?」
あぁ、もう、全部駄目だ。
一年半自分なりにしっかりと向き合ってきたものが一瞬でぶちのめされていく。
手の中にあった宝石達が、あれよあれよと滾れ落ち残ったのはカスカスの砂漠。
そうね、私は、ここでは、やっていけないのだ。
❄︎ ❄︎ ❄︎
戦争の夢を見た。
好きな人達の笑顔を想いながら、敵地へ爆弾を仕掛けていく。
満足のいく結果だった反面、少しだけ相手の家族の顔が霞む。
それでも、自分の心が無くならないように、これで良かったのだと、何度も何度も呟いた。
夢占いでは、戦争=心の消耗とダメージらしい。
あ、当たってるな。
この間、大阪の会社の実技試験を受けた。
パタンナーの専門職で、今年初めて新卒の募集を
したらしい。
5時間の中で、テーラードジャケットを製図して、
トワールでサンプルで組み立てる試験。
よくある形式で、事前に寸法も聞いていたので、
ちゃんと専用の原型と対策をして臨んだ。
つもりだった。
「今のは何が悪いと思う?」
「なんで先にアイロンしたの?」
学校で習った通りの順番でやっているはずなのに、
全く違うアプローチ方法をその場で言われる。
私の打った線とピンは、ことごとく消されて、その場で、ただ、怒られて、直されて、見ているだけ。
私にできることは、「すいません」と「はい」を、上手に使い分けて、泣かないように、笑顔と声を、一生懸命作ること。それだけ。
これって本当に試験ですよね??なんの時間??
試験官の人は、きっと口を挟まずにはいられなかったのだろう。良かれと思って、沢山教えてくれたのだろう。
けれど、これがこの先毎日8時間永遠に続くのだとしたら、もう私は生きている価値を見失ってしまう、いつか本当に壊れるのだろうなと思った。
大好きな製図や、服を作ることを、一瞬で大嫌いになってしまう未来が、容易に想像出来てしまった。
案の定、御祈りメールが来た。
来年から東京で働くことになる。
私は、私の夢をきちんと追いかけて、服を好きだと真っ直ぐに言い続けられる会社に入る。
私の実力不足で、恋人との遠距離ボタンを、結局、自分で押してしまうことになったけれど、私はもっと健やかに暮らせる居場所で胸を張って生きたい。
服と自分を嫌いになっていくよりも、ずっと良い。
私のことを、とても評価してくれた東京の会社で、
精一杯頑張って、私の幸せを、掴み取りたいんだ。
ごめんなさい。