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ジェーン・スー著「へこたれてなんかいられない」
以前この記事でも書いた通り、海外生活で今のところ心の支えになっているのは(もちろん夫と)ポッドキャストと電子書籍である。
今回は電子書籍で購入した、ジェーン・スー著「へこたれてなんかいられない」を読んだ感想などについて記しておこうと思う。
私は彼女のラジオやポッドキャストのリスナーである。これまでに彼女の著書も一通り読んでいる。だからきっとファンなのだろうが、もはやそこにあるのが当たり前で生活の一部となってしまっているゆえに自分が彼女のファンだというのは少し気恥ずかしいような気さえする。
本著は雑誌「婦人公論」で2019年12月から2025年1月までに連載されていたエッセイをまとめて加筆・修正されたものだ。
ポッドキャスト「over the sun」のなかでもこの5年間について言及される回は必聴なのだが、改めてこの5年間というのは世の中にとってもそれまでの価値観が覆されるような、そして私にとっても自分の中のなにかが内側で渦巻くような5年間だった。
フリーランスでコロナ禍をなんとか乗り越えた先に待っていたのは縮小した業界で優秀な若手と仕事を取り合わなければならなかったこと。20代後半から30代前半にかけての悩み、恋愛、結婚、仕事との両立、親のこと、そして文字通り沖へ出て海外移住。不安は尽きないが、なんとか毎日生きている。
政治やジェンダーギャップへの憤りに共感し、親子関係やあの頃の恋愛についての記事は親しい友人のそれを聞いているように胸がきゅんとする。
そしてなんといっても私のお気に入りは一大サーガとなった「インプラント治療の話」である。今一番聞きたい話「インプラント治療」!!!!!
本人には申し訳ないが、相当面白かった。
同じく歯を失った身としては、歯のトラブルを抱えている時の気分の落ち込みに共感し、体験談は鮮明に浮かび夢中になって読んでしまった。
立川談志が「落語は業の肯定」と言ったそうだが、ジェーン・スーは私たちの何かポンコツな部分や負けそうになる部分を何か肯定して、励ましてくれているような気がする。
本著の中でジェニファー・ロペスのドキュメンタリー映画にについて言及している回があるのだが、読みながら
(私もこの映画見たなぁ〜誰が教えてくれたんだっけ?、、、あ、スーさんがラジオで言ってたんだ。)
という「この話きいた?」「私がその話あんたにしたのよ。」現象のようなものが一人で起きた。
そんなこともスーさんなら笑ってくれるだろう。
ファンと名乗るのが気恥ずかしいのは、どこかで彼女のことを心の友のように思っているからだろう。そしてそんな仲間がきっと沢山いる。
そのことも私を勇気づけ、励ましてくれるのだ。