【R18小説】『ガチムチ系年下サラリーマンと大衆食堂で働くポチャ系アラサー女子の恋ものがたり~5』
*桃乃の告白~(5)
なので、わたしは、すぐちかくで真鍋さんがシャワーを浴びているとおもうとどきどきして、緊張してしまいましたが、それでもなんとか気をおちつかせるようじぶんにいいきかせながら、リビングにはいってすぐのところにあるキッチンをかりて、片手鍋でお湯を沸かして、レトルトのおかゆをあたためていると、廊下のほうから、ばたばたと、おおきな足音とともに
(ガチャッ)
と、ドアがあく音がして
「ふう、さっぱりした。桃乃さん、おまたせしました」
と、声がしたので、わたしは
(えっ! もうでたの?)
と、あわてながら、うしろをふりむくと、バスタオルをあたまからかぶり、上半身ハダカの真鍋さんが立っていたので、わたしは一瞬そのばにかたまってしまいましたが、真鍋さんがふしぎそうな顔で
「あれ、どうかしましたか」
と、いったので、わたしはあわてて視線をそらし、やんわりと、できることなら、なにかうえにはおってくれたらありがたいと彼に伝えると、真鍋さんは、あわてたようすで
「すいません」
といい、すぐさま飲みかけの缶ビールをテーブルに置くと、いそいでTシャツを着てくれたので、わたしは、じぶんのほうこそ、わがままをいってしまってもうしわけないといい、気まずさをかくすために、真鍋さんがコンビニで買ってきていた揚<あ>げ|物やお弁当を温めなおし、わたしもおかゆのほかに買ってきていたパックのお漬物やお惣菜などをローテーブルに運び、並べました。
⑩
わたしは、おかゆなんて真鍋さんみたいな若い男のひとは喜んでくれないだろうな、とおもっていましたが、真鍋さんは
「おかゆなんてガキのとき、以来だな」
といい
「桃乃さんがつくってくれるものならレトルトでもなんでもうまいです」
と、うれしそうに、いってくれたので、わたしはほっとし、おもいきってお見舞いにきてよかったとおもいました。
⑪
そして、真鍋さんが
「桃乃さんが、お見舞いにきてくれるなら、毎日風邪ひいてもいいな」
と、いってくれたので、わたしは
(えっ……)
と、うれしさとはずかしさで顔が燃えてしまうほど熱くなり、それをかくすために、もう、からかわないでといい、真鍋さんなら、お見舞いにきてくれる彼女なんてすぐにみつかるわ、というと、真鍋さんは
「俺なんて、ぜんぜんモテないですよ」
といい
「これでも、学生のときはけっこうモテたんですけど。社会人になってからは、ぜんぜん」
といい、つづけて
「それに、じっさいのところ、仕事が忙しくてそれどころじゃないですし」
と、いったので、わたしは、真鍋さんが彼女をほしがっていないことに内心ほっとしながら、でも、同時に、やっぱり、じぶんは彼にとって彼女の候補の枠にもはいっていないことをあらためてかんじて、胸が押しつぶされてしまうほど苦しくなりました。
⑫
そして、そんなじぶんがきゅうに惨めになり、涙で視界がぼんやりにじんでいくのをかんじたので、わたしは、涙をかくすために、食器をかたづけるふりをしてキッチンにむかうと、真鍋さんは
「そんなの、あとで俺がやるからいいですよ」
〈つづく〉
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