あなたが落としたのは300円ですか、それとも300万円ですか
「はい、300万円」
英国紳士も顔負けのジェントルメンなポロシャツを着た後期高齢者(推定)の男性が、私にそう言いながら100円玉を3つ手渡した。
「はい、300円ちょうどいただきます」
キッパリと受け取る私。
この商品は税込300円である。
300万円を受け取ったならば、過大請求も甚だしい。コンプライアンス的に大問題である。
むろん、「300万円」は、この老人のオヤジギャグのようなものだ。
きっと女性店員を見かけると、昔からやっていた鉄板のネタなのだろう。
私は吉本新喜劇のようなコテコテのお笑いが好きだ。
自慢じゃないが(本当に自慢じゃない)、笑いの沸点は低い。
しかし、どうだろう。
私は思ったのだ。
恍惚とした表情で「おじさま、300万円」と囁いたのならば、もしかしてパパ活ならぬ、じじ活が成立するかもしれない。
パパ活する手段って実は身近なところに転がっているのだ。
…知らんけど。やらんけど。
誇大妄想もいいかげんにして業務に集中する。
エレベーターの前を通ったら、ふいにお客さんから「~って何階ですか?」って聞かれた。
思わず「300万円…ちがう…3階です」と言ってしまった。
300万円の呪縛。
逃した獲物は大きい。
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