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「大人は自己責任」という価値観は危険
「大人は自己責任」という価値観が時代とともに声高になってきていることに危機感を感じています。虐待の被害者だけでなく、困難を抱えた多くの大人に対して「もう大人なんだから」で片付けることは、「個人の損失」だけでは済まない「社会全体の損失」に繋がることを指摘したいです。
会社も親も地域社会も、ひとりの大人をサポートできない社会へと変化してきた現代において、大人という存在は、決して強い存在ではなくなっている気がします。
それでも、依然として社会の価値観は、「もう大人なんだから」という自己責任論が非常に強いわけです。行き過ぎた自己責任論を放置することは、今の子どもたちが大人になったとき、冷たい大人社会へ放り出されるという意味です。そして、今支援が必要な大人たちを自己責任の名のもとに放置していれば、将来的に生活保護者の増大などで、どの世代にもその負担はやってきます。つまり、誰も得をしない価値観だと思うのです。
大人は子どもたちの延長線上にいる存在です。その大人社会が酷いもので「子どもの未来」は幸せになるでしょうか?大人も子どもも、分け隔てなく支援される社会をわたしは望んでいます。
上記は、拙著「わたし、虐待サバイバー(ブックマン社 2019)」のp237頁~p238頁より抜粋したもの。児童期に虐待を受けた被害者が成人した後には、「虐待の後遺症(複雑性PTSD等)」になることが多く、以下の書籍は、虐待の後遺症が具体的にどういうものかについて典型的な症例を描いている。また、児童虐待が起きる背景や、虐待がない社会にするためにはどんな支援が必要かについても当事者の体験から提言している。精神科医の和田秀樹先生の監修・対談付き。
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