NO.2の育て方 vol.64 なぜ策士は策に溺れるのか
ナンバー2は参謀役として組織運営への貢献を求められる立場です。戦略を練り、社長の意思決定をサポートすることも日常的なことでしょう。経営戦略を練ることができるナンバー2がいたら、社長としても心強いのではないかと思います。
ただし、「策士、策に溺れる」という言葉もあるくらいですから、注意しないといけないこともあります。策に溺れないためにナンバー2に身につけさせたいマインドについて今回はお話したいと思います。
■策士が策に溺れてしまう理由
自信過剰
策士は通常、知恵や洞察力に優れているため、自分の策略に自信を持ちます。しかし、その自信が過剰になり、他の視点や意見を無視してしまうことがあります。このような場合、策士は自身の策に固執し、周囲の情報や変化に対応する能力が低下してしまいます。
虚栄心と優越感
策士は自身の知恵や計画が成功することを望んでいます。この願望が強くなり、自己の優越感や虚栄心が勝ってしまうと、客観的な現実や他の意見を見落とす傾向があります。策士は自分のアイデアに執着し、冷静な判断を欠いてしまう可能性があります。
情報不足
策士が正確な情報に基づいていない場合、策略は誤った方向に導かれる可能性があります。情報収集の不足や情報の選択的な解釈によって、策士は本来の目的を見失い、自身の策に溺れてしまうことがあります。
制約条件の無視
現実の世界には常に制約や制限が存在します。しかし、策士は自身の策を追求する過程で、これらの制約を無視する傾向があります。結果として、現実の制約に対処せずに計画を実行しようとするため、策士は失敗する可能性が高まります。
時間とプレッシャー
策士はしばしば時間とプレッシャーの中で戦略を練ります。時間の制約や外部のプレッシャーによって、冷静な思考や全体像を見る能力が低下し、策士は自身の策に埋没してしまうことがあります。
これらの要因が組み合わさることで、策士は自身の策に溺れ、失敗してしまう可能性があります。
■策に溺れないために身につけたいマインド
理由を一読してお気づきかと思いますが、策士が策に溺れてしまうのは単なる能力不足だけではなく、慢心を例に心の持ち方が誤っていることに起因していることがわかります。
その慢心がどこから来るのかといえば、過去の成功体験である場合もあるでしょうし、根拠のない自信による場合もあるでしょう。慎重さを欠くと、視野が狭くなり、策に溺れて失敗しまう可能性が高くなってしまいます。
策士であるならば、常に客観的な視点を保ち、柔軟性を持ちながら状況を判断し、他の意見や情報も活用することが重要です。
自分の策を信じて実行に移すことは、他人を巻き込むことであり、これが命を懸けた戦であるなら部下の生命を左右することになりますし、事業運営なら場合によっては取り返しのつかない大失策に繋がり、会社の運命を左右させてしまうこともあるでしょう。
失敗をするなら小さく、上手くいかないと感じたら臨機応変に修正をかけていくしかありません。違う表現なら、PDCAをしっかり回すということです。
では、策に溺れないために必要なマインドは具体的に何でしょうか。
冷静さ
先ほど見たとおり、時間やプレッシャーの中で判断しないといけない場合もあるでしょう。そのためには集中する時間を確保することが必要です。それまでの経験や知識の範囲で判断できないことに対応するのであればなおさらです。
必要に応じて、社外の相談できる相手に意見を聞いてみることも大事ですから、そのためにも日頃から人脈を広げておく必要があります。
そして、社長が決めたことであってもヌケモレがないかを疑い、安請け合いしないことです。甘い計画には必ず落とし穴があります。無理を通せば綻びも出ます。良い意味での批判的視点で課題を洗い出しましょう。
客観性
冷静さと同様の意味合いが強いですが、自分が考えたこと、社長が命じたことにヌケモレがないか、幽体離脱するように客観的に考え直すことが必要です。できれば言葉で詳細を説明してみるのがいいです。
パワポのように概念図だけ書いていると、上手くいくような錯覚に陥る場合も少なくありません。一つひとつを言葉で説明してみると矛盾や齟齬が現れ、期待は淡い妄想であることに気づくこともあります。
他人を納得させられるだけの根拠を持ち、第2、第3のプランが練られており、想定が甘くないか考え直してみることが重要です。
謙虚さ
自信を持っていることは大事ですが、根拠のない自信ほどあてにならないことはありません。成功体験があったとしても、必ず変数というものがありますから、全く同じ条件とは限りません。過去上手くいったことは成功の保証にはなりませんし、自分の策に詰めの甘さがないか自分を疑うくらいがちょうどいいです。
慎重さ
冷静、客観の根本にあるのはこの慎重さだと思います。冷静、客観的に考えることができるかどうかは慎重さの有無です。
大胆な考え方は当たればいいですが、外れた時のリスクが大きい場合もありますから諸刃の剣です。
悲観的に準備し、楽観的に対処せよとよく言われますが、失敗の少ない人の特徴はこの慎重さにあります。仕事は博打ではありませんから、必ず身につけたいことです。
社長がナンバー2を評価する時に、「頭はいいのだが慎重さに欠ける」と感じることもあるのではないでしょうか。
マインドというのは知識やテクニックではなく、考え方や性質で、長年、その人自身が育った環境に影響を受ける部分です。考え方を考えたり、考え方を学ぶ訓練が少ないと知識や経験を頼りにして自分の危うさに気づくことがありません。
特に自分と異なる考え方に遭遇した時に、否定をしたり、理解ができないとコミュニケーションに支障が生じてしまうこともあります。
当マガジンでもナンバー2にとって重要な考え方についてよく記事を書いていますが、自分や他人、状況を冷静に見ることができないとどれだけ知識や経験を積み重ねても成長が頭打ちになってしまいます。
優秀だけれど、危うさを感じるナンバー2を部下に持っていたら、ナンバー2に必要な心構えを説いてあげて頂きたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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