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行政書士開業に向けての準備について その1
行政書士会業に向けての準備
行政書士を始めようという方へ
いまこの文章を読んで下さっているあなたは、受験生でしょうか。合格後準備中でしょうか。既に開業している方でしょうか。
今回の文章は、正直既に開業済みの方にはあまり役には立たないと思います。どんなに経営状況が悪くても、ご自身で何とかしていただきたいです。
合格したからすぐ登録、は絶対にやめておけ
行政書士事務所開業は、広い意味で起業です。会社をひとつ興すのと同じです。何をどう売るのかその計画を立てない人はいないでしょう。行政書士事務所開業の場合は「何を売るか」は大枠決まっていると言えます。あとはそれをどう売るのかの問題だけです。
だからどうやって資金を用意して、事業計画をきっちり立ててからの登録開業、という手続きを踏まないと、必ず失敗します。
合格開業前にしておくこと
あなたはジョブチェンジを狙って行政書士合格を果たした社会人でしょうか。あるいは、学生時代に合格した優秀な方で、卒業したら開業しようと決めている大学生さんでしょうか。もしかしたら中卒や高卒、あるいは現役中学生や高校生だったりするでしょうか。行政書士試験の史上最年少合格者は中学生だそうですから、あり得ないことではないかと思います。
いずれにせよ、もしあなたに社会人経験がないのなら、3年程度はサラリーマンの経験を積んでおいた方がいいと思います。正社員ではなくても、契約でも派遣でもなんでもいいので。
例えば名刺交換ひとつ取っても、社会人として正しいやり方というのがあります。その辺は、やっぱり実際に社会人を経験しないとしっかりとは身につかないと思います。
以前、某所で話題になった行政書士さんなのですが、地方の底辺高校を卒業、底辺大学に入学後2年時で中退、以降行政書士として開業する29歳(当時)まで、働いたのは大学在学時に数ヶ月間カーナビのデータ作りをしたことがあるだけ、というすごい方でした。
当然ながら「仕事をいただく人間」としての社会人らしい立ち居振る舞いなど全くできず、むしろ「行政書士という資格を持っている自分の方が偉い」とでも言いたげな様子で、社会を知らないってのは怖いねえ、とその界隈で話題になったものです。
開業前の具体的な動き
まず、借金があったらすべて返して下さい。家のローンと車のローンがある方はこれはすぐに完済とはいかないと思いますので仕方ありません。それ以外の借金は全部返して下さい。クレジットカードの残高も借金です。
次に、自分の営業能力を把握しましょう。弁護士や公認会計士といった難しい資格から、士業では比較的合格しやすいとされる行政書士まで、試験で営業能力を測っている士業はひとつもありません。ですが、士業として生きていけるかどうかの分岐点は、この営業能力の有無なのです。
サラリーマンとして営業部署にいた経験のある方ならもう要領はご理解なさっているでしょうが、学生だとか営業部以外にいたとかいう理由で営業経験のない方は、非正規なら営業要員は常に募集がありますから、開業費用を貯めるための準備の一環としてという意味でもそういうところで働いてみるといいでしょう。自分の営業能力の有無がわかります。
自分には営業能力がないとわかったとしても、別に落ち込むことはありません。それならそれでやり方があります。ただ、その分費用を投じることになると思いますので、まとまったお金を作る計画は必要になります。それは今後述べていきましょう。
開業を間近に控えて
さて、そういう下準備も終えて、そろそろ「いつ頃開業しようかなあ」などという具体的な日付まで考えに上るところまで来たとします。
まずは、事務所開業の場所ですね。これに関しましては、私は絶対に自分の根っこがある地元を選ぶべきであると考えています。「大都市の方が需要があるだろう」などと考えて都会に行って自宅開業、なんていうのが一番やってはいけないことです。
考えてみて下さい。昨日今日お隣さんになった人が、ある日突然ドアに「マグロ卸専門」なんていう看板を掲げたとして「マグロ下さい」なんていう人が現れるなんてあり得ないじゃないですか。遠隔地で開業というのはそういうとんでもないリスクがあるわけです。
ただし、入国管理の話だけは別です。行政書士として登録後、入国管理の仕事に関する研修を受けて考査に通れば外国人の入国管理に関する仕事ができます。外国人はまず間違いなく大都市を目的地にして日本に来ていますので、この仕事だけはいきなり大都市に行って開業してもそこそこ仕事にはありつけると思います。
ですがこの仕事には当然外国語の能力が必要とされます。それも英語なんてメジャーな言語じゃ全然ダメ。中国語や韓国語も飽和状態。西日本ならタガログ語かインドネシア語、タイ語あたり、北海道なら何と言ってもロシア語、比較的全国で需要があるのが南米のスペイン語あたりが扱えるといいですね。南米のスペイン語はスペインのスペイン語とは結構違いますよ。
チャイナタウンに行ってフリーペーパーを見ると「黒転白」という言葉が並んでいることがあります。「違法なものを合法に変えますよ」という意味で、要は不法入国でも合法にします、と言って広告を打っているわけです。
そういう外国人が入国管理の資格を持つ行政書士から名前を借りて日本への入国ブローカーをやっている例なんかもいくつか知っていますので、私ならこの仕事はやりたくありませんね。仮に法に触れるようなことをしないでこういう仕事をしていても、あなたが世話した外国人にとって唯一頼れる日本人はあなたですから、夜中に「トイレが詰まった」なんていう用件で電話が入ったりしますよ。
事務所選びはどうするべきか
そして、事務所を選ぶ段階に来ます。自宅開業というのが禁止されているわけではないのですが、私は避けた方がいいと思っています。
事務所として認められる要件はおおよそ以下のようになります。
デスク・書架など必要な什器が備えられていること
専用の電話回線が引かれていること
事務所専用の応接スペースがあること
応接スペース・作業スペースが明確に隔てられていること
自宅開業の場合、行政書士事務所のスペースと個人の生活スペースが隔てられていること
と言ったようなところです。レンタルオフィスの場合には応接スペースは同じレンタルオフィス契約者の間で共用などということもありますが、そういうところではいま登録はできなくなっています。
この辺は東京都行政書士会の方針が全国に影響しているところだと思います。東京都行政書士会はちょっと前まで「事務所要件?何それ美味しいの?」の世界だったんですよ。
ですので酷い事務所がたくさんあったんです。一番問題とされたのがヴァーチャルオフィス問題です。ご存じでしょうか。ひとつの部屋に電話番と郵便受け取りを専門とする人がいるだけのもので「先生」に連絡があったらその電話番から連絡するというものです。調べてみたらひとつの小さな部屋に何十人という行政書士が登録していたり。
というわけで東京都行政書士会は事務所要件をきっちり守るようになりました。行政書士は都道府県別に行政書士会があり、いろいろ温度差があるんですが、今後事務所要件が緩くなっていくことは考えられないでしょう。
また、自宅開業は避けるべきだと思います。ルール上ダメなわけじゃないんですが、上記の事務所要件を守るのは容易ではないと思いますし、依頼者から見てその行政書士の執務スペースが個人としての生活スペースと同じ建物の中って、不安になりませんか?個人情報とかそういう関係で。
まあそういうことを考えて、事務所を借りて下さい。
資金の準備について
避けて通れないのが、開業資金の準備です。
まさかとは思いますが、皆様は登録に必要な登録費等々だけ払えればそれでなんとかなるとはお考えにはなっていませんよね?
いろんな方面に営業をかけて、経営が回るようになるまで短くて3年、5年でもまあまあ、それ以上無理なら辞めた方がいい、それが行政書士という仕事です。
上で「借金は返しておけ」というお話をしましたが、その話を振っておいたのがここで述べたかったからです。
そもそも自分でお金を稼いで3~5年程度は売上ゼロでも生活はできるようにしておくのがよいと思うんですが、それはあくまでも生活費です。事業資金の用意はまた別です。
日本政策金融公庫というのがあります。そこの新規開業融資を受けるのがよいと思います。公共の金融機関です。しかし公共とはいえカネ貸しです。ボランティアじゃないんですから儲かりそうにない事業にお金は貸しません。緻密な事業計画書を作って下さい。優秀な税理士さんだったら指導してくれます。そういう税理士さんは地元の信用金庫で事業融資に積極的、みたいなところも紹介してくれると思います。
やっと登録・開業…あなたは実務派or営業派?
ここまでできてやっと登録です。仕事を獲りに行く段階になるのです。
上であなたは営業向きなのかそうでないのか、という話をしました。それがどちらであれ、仕事を獲ってこないと経営が立ちゆかなくなることは変わりません。
あなたが営業向きの人間であるなら、地元の中小企業の社長さん方に営業をかけて仕事をもらってくるのは難しくないでしょう。そういう方はいきなり多くの仕事を獲ることは難しいですが、その代わりに自分ひとりで小さく始めて事務所を大きくしていくという夢は描けると思います。
営業向きの人間でないとしても諦めることはありません。いまは営業代行会社というのがたくさんあります。
いま現在、介護を必要とするお年寄りはだいたい80歳ぐらいだと思います。そのお年寄りの介護をする責任がまず一番にのしかかってくるのが60歳までぐらいの、会社員としては脂の載りきった時期にいる人たちなのです。親の介護のために泣く泣く仕事を辞めている営業部長さんなんていうのがいまたくさんいるんです。
そういう人たちは、リモートという働き方ができるようになったことによって「在宅・時間限定営業部長」的な働き方ができるようになっているのが現代です。こういう仕組みを利用しない手はないでしょう。
リモートという働き方が確立する前から、営業部隊を雇ってとにかく仕事を獲ってこさせて自分は書面書きに専念する人、逆に自分が専ら営業に回り、書面は雇った事務員に書かせて判だけ押している人、両方いました。
私は人間というのを「仕事」を基準に分けると3パターンに分かれると思っています。現場の作業に向いている人、営業して仕事を獲ってくるのに向いている人、バックオフィスで会社の内部的な仕事をするのに向いている人です。これはだいたい得意なのは1つに限られて、2つ以上で能力を発揮できる人は滅多にいません。
まだ立ち上がったばかりのあなたの事務所にはバックオフィスなんてないわけですから、必要なのは現場と営業になります。あなたの事務所ですから、あなたの得意なことをして、苦手なことは雇った人間にやらせればいいのです。開業時に資金を作る必要性はここにあります。
今回のまとめ
というわけで、今回は開業準備から実際に開業してスタートアップの仕方までお話しできました。ちょっと長くなりましたがご寛容下さい。
このあたりについてはまだまだ言い足りないことがあります。と言いますか、行政書士という資格で働きたいという人が陥る失敗の種はだいたいこの辺にあるんです。ですのでこの話はまだ続けようと思います。
今回はここで終わります。ありがとうございました。
最後にやはり宣伝です。
私はココナラで行政書士に関する相談を承っております。
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こちらもぜひよろしくお願いいたします。
それではまた次回に。