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「麻田君、アジアの缶ジュースを飲む」・・・珍しいラインナップ。
『麻田君、アジアの缶ジュースを飲む』
「昔の話で、今は決してそんなことは無いと思うんだけど」
と麻田君が少し困り顔で話し始めました。
「20年近く前、僕がアパートの近くに、週替わりで様々な企画を行う
イベントスペースがあって、
ある時、そこで輸入食品のフェアが行われていたんだ」
麻田君は、日本に居ても外国の気分を味わいたいと考えている旅行好き。
日頃から輸入食品や外国産の飲み物を見つけては買い込んできます。
その輸入食品のフェアでも、色々と買い込んだそうです。
珍しい野菜、果物、見覚えのない言語のレトルト食品やカップ麺。
最後に手に取ったのが、全くラベルが印刷されていない銀色の缶ジュース。
底の方に申し訳程度に中身を書いた紙が貼られています。
「珍しいフルーツばかりだな」
缶ジュースは5種類。
スイカ、パッションフルーツ、ライチ、マンゴスチンが一本350円。
ドリアンは、何と一本1000円でした。
麻田君は悩みましたが、
海外好きを自称している身としては飲まないわけにはいかないだろう、と考え、
5種類とも買って帰ったのでした。
それから麻田君は毎日一本、この変わったジュースを開けていきました。
まずは「スイカ」、×。
とろりとした感じですが、甘さが少なく決して美味しいとは言えません。
続いて「パッションフルーツ」、×。
奇妙な舌触りが残ます。
「ライチ」、×。
特に特徴のない味。飲みごたえはありません。
「マンゴスチン」、×。
こちらも特に特徴が無く、甘味はあるものの後味が良くない。
そして、いよいよ、最後の「ドリアン」を開ける日が来ました。
麻田君は、それまで生のドリアンを食べたことはありました。
一般に言われているほど、匂いも気にならず、
トロンとしていて、美味しかったという記憶があったので、
最後に残った「果物の王様」のジュース。しかも一本1000円のジュースです。
嫌がおうにも期待が高まります。
はやる気持ちを落ち着けて、
銀色の缶ジュースのプルトップを引き上げました。
飲み口から、白いとろみのある液体が見えています。
麻田君が、液の色を確かめようと、覗き込んでみると
プ~ンと臭い匂いが漂ってきます。
それはまさに、ゴミ箱の匂い。
それも溜め込んだ生ゴミが夏の暑さにやられたような匂いです。
しかし麻田君は、
「匂いが悪いからと言って、味も悪いとは限らない」
と再度口を缶に近づけますが、
何度嗅いでも、ゴミ箱の匂いです。
麻田君は、5回以上トライするのですが、
どうしても口にすることが出来ません。
結局、一本1000円の「ドリアンの缶ジュース」は、
そのまま流しに捨てられることになりました。
それまでどんなゲテモノ料理でも平気で食べて来た麻田君の
初めての敗北だったのです。
さて、麻田君はこの銀色の印刷の無い缶ジュース群に
二度と巡り合うことは無かったそうですが、
その後も全く懲りた様子はなく、
珍しい輸入食品を見つけては買っているそうです。
麻田君曰く、「挑戦こそが人生の醍醐味だよ」とのこと
ちなみに、現在では珍しいフルーツの缶ジュースでも、とても美味しくなったそうです。
おわり
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