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「結願の前に」・・・旅にあって、その終わり方を考える時、その旅の意義が見えてくる。
さて、2024年も押し詰まってまいりましたね。
いわば、今年のゴールが目の前。
正月に決めた今年の抱負は、実現できましたか?
私の場合は・・・。
さて、年末は、お遍路さんなら結願目前、といったところでしょうか。
そういう訳で、今回はお遍路さんのお話です。
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『結願の前に』
この旅は、会社を退職後やることも無くふさぎ気味になっていた男を
妻が強引に誘い出した、渋々のお遍路旅であった。
それでも見知らぬ土地を歩くうちに、男は元気を取り戻し、
徐々に足も軽快になっていた。
ところが、夫婦で先へ進めることに喜びを感じていたはずなのに、
八十六番札所志度寺の門を出てから、妻の足取りが急に重くなり、
どうした訳か、中々先に進まなくなってしまった。
八十七番札所の長尾寺を出る頃には、
妻は、四つ辻のお地蔵様に手を合わせたり、
道端の花を摘んでみたり、何かとつまらない理由をつけて
足を止めるようになった。
男は、八十八番目、結願(けちがん)の寺を目前にして
まるで駄々をこねる子供のような妻の行動にいらだちを思えた。
「そんなものは放って置いて先を急ごう」
と声を掛けようとした時、妻の目から涙がこぼれるのを見た。
その瞬間、男は妻がこう呟いているように思えた。
「旅を終えるのがもったいない」
そうだ、そうに違いない。
妻は旅の終わりを惜しんでいたのだ。
男は、急に花を愛でている妻がいとおしく思えてきた。
結願の寺、大窪寺の門前にたどり着いた時、
男は妻と共に道端に腰を下ろし
じっくりと時間を掛けてから、門をくぐった。
その時、この上ない達成感が、二人を包んだ。
人生に必要なのは、「あと一歩」を共に楽しむ余裕なのかもしれない。
おわり
結願(けちがん)とは、四国の霊場八十八カ所を廻りきることです。
お遍路さんは、今では引退後の記念旅行として人気を集めています。
本格的なお遍路さんの衣装に身を包み、歩いて四国を一周するご夫婦なども
少なくないそうです。
年末です。
残り少ない2024年が幸福に過ごせますように。又、新しい年が平和に迎えられますように。
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