自分との約束を守る
辞書の旅10周年
ついに10年間、ほぼ毎日辞書を読んでしまいました。というのも私は、三浦しをんさんの辞書を一から作っていく小説『舟を編む』に感動し、2013年5月から辞書を毎日読むことに決めたからです。なぜか決めました。これが『辞書の旅』の始まりです。
私は、基本的には約束を守りたい人です。良いことも悪いことも含めて、約束したことは守ろうと思って生きています。プロのリングでは80戦やりましたが、すべての計量をクリアしました。
できない約束は絶対にしません。私の場合「行けたら行く」は社交辞令ではなく、本当に行けたら行きます。行きたい気持ちはあるんです。
ただ、忘れてしまった約束は、どうにもならないので仕方ありません。そのときはごめんなさい。パンチを打たれ過ぎたせいです、と都合のいいときだけパンチドランカーになります。
閑話休題(かんわきゅうだい)、毎日辞書を読み進めて5年かけて新明解国語辞典第七版を読破しました。そうしたら、新明解国語辞典八版が新たに出たとき、出版元の三省堂から「また読んでください」と、プレゼントしていただきました。信じられます?
豈図(あにはか)らんや、二冊目の読破は明鏡国語辞典第二版。新明解国語辞典も終盤に差しかかった晩秋、名古屋のキックジムJKFに岩手からパーソナルトレーニングの申し込み。その方、話せばなんと、明鏡国語辞典の編集者。「佐藤さん、新明解の次は明鏡を……」
どんなけ読ませるつもりだ!
と少し困りましたが、考え方を変えたら滅茶苦茶面白い。私は新明解を読破後、間、髪を入れずに翌日も辞書の旅を続けました。そしていただいた明鏡も2021年に読破。そしてこの号が出ている頃には、自身初の辞書併読の同時読破も達成しているのです!
途中、新聞社の目に留まり、中日新聞の夕刊一面に掲載されたこともあります。コロナ禍の自粛で特に何もない一日だったのでしょうが、大変な幸運といっていいでしょう。なんといっても、辞書の旅は、ただの趣味なのですから。
一日だけなら誰でもやれることを10年続けてみたら、面白いことになってきました。
ということで今月もブルート通信、始まります。なにとぞ君と一年間あたためた企画、うなぎ特集は必見です。現代テクノロジーと読書で、こんなど素人一人でもそれなりのクオリティになるのだから、この世は面白いですね。
PS 最近、なにとぞ君コレクターの小学生も出てきました。専用ノートを持ち歩いてシールをペタペタと貼っています。
と書いたら、返答の手紙が来ました(笑)
明るく生こまい
佐藤嘉洋
ブルート通信 vol.186 / 明生人嘉 〜 MyojoJinka 〜 114話