『今日のアナタは他人のフリ』
ある朝目が覚めたら、置き去りにされていた。
わたしの。わたしの専用の飲料水のボトルが、冷蔵庫から出され、シンクの上で汗をかいていたのだ。
考えるに、夜中に目覚めた夫が、冷蔵庫の奥に重ねられている小さめの清涼飲料水をとるため、手前にあったわたしのボトルを取り出してシンクに置いたのだろう。喉を潤し、渇きを満たした夫の脳はさぞ満足したことだろう。それゆえ、シンクの上に取り置いたわたしのボトルの存在など、脳裏からかき消され、ひょっとしたら急激に冷やされた食道以下腹部あたりに刺激が走