「水割り」からどうぞ
ウイスキーの「水割り」を作るのが好きです。
店をやる前に勤めていた BAR が、この「水割り」をとても大切にするところだったので、それが残っているのかもしれない。
とくに、その BARのマスターの奥さん(奥さんも別のところで BARをやられていた)が、ご自分のところで出されている、ちょっとした突き出しのような和の惣菜を持ち寄ってくれたときは、これまたママさんの作ってくれる「水割り」にぴったりとはまって、どんなスタンダードウイスキーも、不思議と美味しく感じたものだった。
ところで、一口に「水割り」と言っても、なかなかこれが一筋縄ではいかない、作る人によって全然違うものになる、厄介な代物である。
もともとウイスキーの「水割り」なるものは、おそらく日本独特の文化ではないかと思われる。
昭和の中期、ようやく庶民にもウイスキーが認知されてきた頃に、大手メーカーがなんとか売上を伸ばそうと、元来アルコールにさほど強くない日本人に合った飲み方を編み出したのではないかと考えられる。
本場スコットランドなどで、樽から出した高濃度アルコールの原酒を、テイスティング用に飲みやすく加水して飲まれることはあったかと思うが、あの、日本の、氷を入れて、細かくステアされた、一種のカクテル(本来お酒に何か他のものを入れれば、それは全て「カクテル」となる)としての「水割り」は、当時の日本独特のものであった思う。
皆さんも一度は飲んだことありますよね。
ウイスキーの「水割り」。
・・・、
へ? ない?
・・・。
確かに、最近の方(笑)って、モルトウイスキーブームの影響もあって、ウイスキーをきちっとストレートで飲む文化をお持ちですよね(笑。
でも、
ある一定の年齢以上の方って、ウイスキーというと、「水割り」で飲むものだと思われている方も多いんです。
いわゆるクラブやスナックで、「ダルマ」を飲んだ世代です。
((注)「ダルマ」はサントリーウイスキーの「オールド」のこと。当時、単一銘柄での世界一の販売数を誇った。)
もちろん、メーカーの販売戦略もあると思いますが、やはりアルコールに強くない我々日本人に、「水割り」で飲むというスタイルが合っていたんだと思います。
それに、日本のウイスキーが手本としていたスコットランドのウイスキーは、多くが「軟水」で作られています。日本のウイスキーに使われている仕込み水はもちろんのこと、普段我々が飲む水も「軟水」です。当然、その水を使った「水割り」はウイスキーとの相性がいい、と考えられます。(それに、なんでも「冷やして」飲むのが好きな民族というのもあるかと思います。)
さて、ところで、この「水割り」。
前述したように、作る人によって全然違うものになります。
場合によっては、これのせいで、ウイスキーが嫌いになる方もいらっしゃいます。
(連れて行かれたお店で、製氷機の氷とぬるい水で作られた「水で割られたウイスキー」を飲まれた場合に多いです。)
グラスの冷え方、氷の配置、使う水、ステアの度合い等々。
細かいことは省きますが、目指すところは
「冷えた氷とグラスが一種のラジエーター(冷却装置)の役割を果たし、その隙間を適量のウイスキーと水が混ざり合って一体的に口の中に登ってくる液体。」
というのが、終着点かと思います。
決して、製氷機の氷の上から、ウイスキーとぬるい水をドボっと入れて、2〜3回かきまわしただけの、シャビシャビの生ぬるい茶色い液体、ではないのです。
ちゃんとした BARで作ってもらうと、「水割り」がれっきとした「カクテル」なんだとお分かりになるかと思います。
いかがでしょう。
ウイスキーの「水割り」。
昨今の「ハイボール」人気が苦手な、「炭酸」不得手の方にもオススメです。
新しく新社会人になられた方も、これから始めてみるのもいいかと思います。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
ちょっと「昭和」っぽい香りがするかもしれません(笑。
お待ちしております。
First Light / dryhope
Lofi Records
2020
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
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