ゆっくりと息を吸って、吐いた。浮上する意識。眩い光がどうッと押し寄せてくる。朝だ。 カーテンの隙間から漏れ出すそよ風と、元気に囀る小鳥の声。晴れ。少し水の匂…
「よく来たね」 花園。明日また切り刻まれる。その日も男の子は相変わらずふわふわとして、真っ直ぐで、優しかった。 「なにか悲しいことでもあった?」 すっかり散…
閉じた貝を無理やりこじ開けたら、そこには真珠があるらしい。 滴る海水を指で払うと、中にいる宿主が煩わしそうに潮を吹いた。ああ、ごめんなさい。ここはあなたの領…
キスをする。手の中天を仰ぎ、そそり立つ硬直。 ぴくんと震えて、そのかなた上の方ではため息混じりの産声があがった。 劣情を押し込めるみたいな、呱々の声。 まだす…
そこは花畑。 部屋をこっそりと抜け出し逃げ込んだ街のはずれ、またさらにその先。薄暗い袋のような森を抜けたころ、あたり一面真っ白な花が咲いている。手が届いてし…
湿度が高い島の上だった。 つうと流れる頰の縁を追いかけようとして、その奥で射抜かんばかりの目と目があった。 私の心を釘刺しにして、虫の標本みたいに固定する…
男の太ももが射精に震えるのが好きだ。 どこか普通にしていても力の強い、骨張った体躯。どう足掻いたって自分の体と心とは違うそれが、ふるふると赤子のように崩れる…
umitosomeone
2021年5月30日 19:11
ゆっくりと息を吸って、吐いた。浮上する意識。眩い光がどうッと押し寄せてくる。朝だ。 カーテンの隙間から漏れ出すそよ風と、元気に囀る小鳥の声。晴れ。少し水の匂いがした。昨晩降ってたのかもしれない。 ぐうっとのびて、ぼわ、とあくび。 どれだけ長い間眠っていたのだろう。眠りすぎたのかどうにも体が重い。しかし、生きていると実感できる心地の良い重さだった。 ぺたぺた、口を濯いで、ずんずん、
2021年5月26日 16:40
「よく来たね」 花園。明日また切り刻まれる。その日も男の子は相変わらずふわふわとして、真っ直ぐで、優しかった。「なにか悲しいことでもあった?」 すっかり散ってしまった桜の木の下、膝を抱えて二人で座った。私は何も言わない。機嫌の悪そうな空。雨でも降るかもしれない。 憂鬱だった。私は死なない。だからどれだけ切り刻まれようと、そのうち傷は塞がり痛みも忘れる。他の子がそうじゃないと気がつい
2021年5月25日 14:15
閉じた貝を無理やりこじ開けたら、そこには真珠があるらしい。 滴る海水を指で払うと、中にいる宿主が煩わしそうに潮を吹いた。ああ、ごめんなさい。ここはあなたの領地だったのね。 しかし私は手を止めずにこじ開ける。なるべく優しく、そっと、その館の主をおびえさせないように、ゆっくりと。出ておいで、そんな狭いところでひとりきりなんて、きっと寂しいに決まってる。いいんだ、私は、一人でだって生き
2021年5月25日 12:39
キスをする。手の中天を仰ぎ、そそり立つ硬直。ぴくんと震えて、そのかなた上の方ではため息混じりの産声があがった。劣情を押し込めるみたいな、呱々の声。 まだすこし柔らかいから握り込んだ。きっとまだ、物足りない。上げて落とす、上げて落とす。繰り返していくうちにあなたの意志は固くなる。 擦り上げて、ほおに寄せて、たまに唇でたるみをひっぱって悪戯する。猫がおもちゃで遊ぶみたいに、けれどそれよ
2021年5月24日 09:20
そこは花畑。 部屋をこっそりと抜け出し逃げ込んだ街のはずれ、またさらにその先。薄暗い袋のような森を抜けたころ、あたり一面真っ白な花が咲いている。手が届いてしまいそうなほど空に近づける場所がある。 そこまでの細い獣道をうきうきとした気持ちで走り抜けて、ワンピースの裾をはためかした。そこには大好きな男の子がいる。「おかえり、また来たの」 会いたかったのだ。 私はいつも日が暮れたら
2021年5月22日 08:17
湿度が高い島の上だった。 つうと流れる頰の縁を追いかけようとして、その奥で射抜かんばかりの目と目があった。 私の心を釘刺しにして、虫の標本みたいに固定する。 なにも言わないのになぜか、逸らしてはいけない気持ちになって。 言葉にするのは野暮に思えて黙った。 そうも強く見つめられてしまったら逃げたくなる。私の粗が見透かされてるのではなんて、怖くなってしまうのに。 そお、と膝を擦り
2021年5月21日 19:29
男の太ももが射精に震えるのが好きだ。 どこか普通にしていても力の強い、骨張った体躯。どう足掻いたって自分の体と心とは違うそれが、ふるふると赤子のように崩れるさまが好きだった。 かっこよくあろうとする人が好き。自分の信念を持っている凛とした人だって、喜ばせることが大好きな人も、みんな。 しかしどんな大人ですら性の前にはこうべを垂れる。 お行儀のいいデートコース、お姫様扱いのエスコー